
セイコーエプソン株式会社では長野県諏訪市にある本社に「PaperLab A-8000」の専用室を設置し、2017年10月に正式稼働を開始し社内での紙資源循環サイクル実現を目指しています。また、特例子会社のエプソンミズベ株式会社と協力することによって、障がい者の業務拡大も実現し、環境配慮やダイバーシティマネジメントの実践に大いに貢献しています。
セイコーエプソン人事本部原正英氏、エプソンミズベ松塩事業部遠藤眞市氏のお二人に、PaperLabの活用や障がい者の方々の業務についてお話をうかがいました。
障がい者雇用の拡大につながるPaperLab
個々の特性に合わせた業務で充実
セイコーエプソンではPaperLabを、紙資源の社内循環サイクル実現、障がい者雇用の拡充、そして会社見学者への環境配慮への意識啓発などに活用している。PaperLab導入により、こうした要素が一つずつさらに価値のあるものへと進化しています。
原氏:もともと私達には、環境を大切にする風土が根付いています。ですから自分達が排出した古紙を、私達が新たな紙として生み出すことができる。これが、PaperLab導入の最大の理由です。
また、自分達が排出した古紙には、機微情報が含まれています。これらを原料として使用することで、資源の保全だけでなく情報漏えいリスク対応にも寄与できると考えています。

遠藤氏:PaperLabに関するさまざまな業務を請け負う当社としては、障がい者の雇用拡大につながる業務が増えるメリットを強く感じています。再生用紙の原料となる古紙を選別する作業から再生した紙を利用した名刺やノートの作成に至るまで、障がい者の仕事になっています。また、それぞれの工程に適した特性をもった人材を配置できるので、社員一人ひとりの業務の充実にもつながっています。
原氏:実際のPaperLabの稼働を見ていただきたく、設置している部屋をガラス張りに致しました。従業員はもとより、来社されたお客様(行政及び各種団体やお取引先、学生など)が、関心をもって見学してくださっています。見学いただくことで、用紙のリサイクル意識の啓発や当社の技術力アピールにも活用できています。


事前に保管期限の切れた文書を分類
作成用紙の利用目的に合わせて分類を活用
PaperLabに投入する用紙について、エプソンミズベでは保管期限の切れた文書用紙を単純に機械的に投入するということは行っていないという。投入前にさまざまな基準に基づいて五段階に分類して、使用しているのだ。そうすることによって、利用目的に合わせた用紙を作成することができている。
原氏:PaperLabに投入する原料は、国内のセイコーエプソングループ各職場からお預かりしている「機密文書」を利用します。この機密文書の保管期限が切れ、職場より廃棄依頼を受けたものを原料としています。
原料の事前準備としてエプソンミズベに、パンチ穴があれば用紙向きを揃える/ステープラー針はついていれば除去する/クリップや付箋がついていれば取り除く/用紙にしわがあれば伸ばす等の原料品質確認をしていただきます。さらに利用目的に合わせ、両面/片面印刷、モノクロ/カラー印刷の用紙ごとに分類した原料を作ります。利用目的に合わせてその分類された原料を利用し、名刺用紙であったり、ノート表紙であったりと使い分けをして用紙(以下DFP)を製紙しています。
遠藤氏:保管期限切れ文書は、工場で仕分け作業を行います。PaperLabの原料として利用する場合は、それらの機密文書をこちらの施設でさらに精度を上げた分類をしています。それによりDFPの質がより良くなりますことから、「こんなにきれいに作れたよ」と結果をメンバーへフィードバックすることで本人達のモチベーションも上がり、環境配慮への貢献を実感しながら仕事に励んで頂いています。
先ほどお話ししたように、PaperLabを設置したことによって業務が拡大しました。業務の幅が広がることによって個々の特性に合わせた作業を任せることができます。
名刺用にはより白色度の高い紙を
綿密な準備によって順調な稼働
セイコーエプソンとエプソンミズベではPaperLabの設置から正式稼働までの2カ月で運用業務のフローを確立。その段階で、業務担当者にどのような業務を任せられて、どんな品質のものが作成できるのか、いろいろな試行錯誤を行ったと原氏は話す。そうした綿密な準備によって、現在は順調に稼働し、多くの成果も生み出されている。
遠藤氏:もともとPaperLabには、DFPの使用目的や嗜好に応じて、厚みや色合いなどを変える機能がついていますが、古紙そのものの状態によっても出来上がりの色味や風合いの変化も楽しめることから、現在、障がいを持っているメンバーは、古紙を状態毎に選別分類をして、用途に合わせた作業をしています。たとえば名刺に使うDFPはどのようなものがよいのか?お客様と最初に交わすコミュニケーションツールですから、エプソンロゴの色が正しく表現できるものが相応しいと考えました。企業ロゴの発色がより正しく表現できるために白色度の高い再生紙を使用しています。
原氏:当社では2017年の8月にPaperLabを設置し、10月から正式稼働を開始しました。その2カ月のあいだに、どんな業務フローを構築すれば障がい者の方が作業しやすいのか、使用目的に合わせたDFPを製紙するためには事前にどのように原料を分類しておくと良いのかなど、業務内容とDFP品質のバランスを調整するために、さまざまな試行錯誤を行いました。
遠藤氏:現在、PaperLabで製紙したDFPは、抜き取りで白色度や厚さを計測してから保管しています。名刺に用いる用紙は、この計測で一定水準を満たしたものだけを使っています。
現在は名刺やノート、さらには社内教育研修用のテキストなどにPaperLabで作った紙を用いています。10枚の名刺が取れるA4の名刺用紙は月におよそ3,000枚作成し、研修資料などに用いる用紙は多い時期で一日に4,000枚ほど作成しています。
今後は印刷物の社内制作など
さらなる紙資源循環の用途拡大へ
名刺、ノート、テキストなど、PaperLabで作成された用紙は順調に用途が拡大し、セイコーエプソン社内での認知も高まりつつあるという。今後、さらなる活用を見据えた場合、どのような用途が考えられるのだろうか。両氏は、高速インクジェットプリンターとの相乗効果なども踏まえながら、さらなる活用方法を検討している。
原氏:DFPで作られたさまざまなアウトプットを手にすると、さらに色々なアイデアが広がってきます。実際、すでに「輸出用のパッキングリスト用紙に使えない?」「物品受領書、現品票として使えないか?」など、他の部署からもアイデアが寄せられています。これからはそうしたアイデアを一つずつ具現化していきたいと考えています。PaperLabの活用範囲をさらに拡大して、社内の紙資源循環をさらに活性化していきたいと思っています。
遠藤氏:この施設で作ったDFPは別の工場に運ばれて、製本業務を行います。現在、その工場には100枚/分(注1)の高速印刷を実現する当社の高速ラインインクジェット複合機/プリンター「LX-10000Fシリーズ」を設置しています。これをもっと活用していくことで、今後、冊子の作成などを、積極的に社内で取り組んでいきたいと思います。
(注1)A4横片面。 印刷スピード算出方法についてはエプソンのホームページでご確認ください。特定環境下でご使用時ならびに両面印刷時および両面複写時、画質維持のため印刷速度が一時的に低下する場合があります。
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