車載ディスプレイシステムにおけるディスプレイインタフェース「OpenLDI」とは?

車載ディスプレイの主な種類

インストルメントクラスター(メーターディスプレイ)

速度、燃料、エンジン温度などを表示します。従来のアナログ表示から、TNやSTN液晶によるデジタル表示を経て、TFT液晶によるグラフィック化が進行中です。

センターインフォメーションディスプレイ(CID)

ナビゲーション、メディア、空調などを操作します。タッチスクリーンや音声操作に対応し、ユーザーインタフェースの中心的存在です。

ヘッドアップディスプレイ(HUD)

フロントガラスに情報を投影します。視線移動を最小限に抑え、安全性を向上。近年ではAR(拡張現実)HUDやPHUDも登場しました。

ヘッドアップディスプレイ(HUD)1

ヘッドアップディスプレイ(HUD)2

ディスプレイインタフェースとは?

車載ディスプレイシステムにおけるディスプレイインタフェースとは、SoC(System on Chip)とディスプレイ間、SoCまたはディスプレイとSerDes(シリアライザ/デシリアライザ)間で映像信号を伝送するための通信規格です。

代表的なディスプレイインタフェース

  • OpenLDI(Open LVDS Display Interface)
    特徴:LVDS(Low Voltage Differential Signaling)ベースのインタフェース。ノイズ耐性が高く、長距離伝送に適しています。シリアル伝送により配線が少なく済みます。
    用途:車載ディスプレイ(特にメータークラスターやセンターコンソール)で広く採用されています。産業機器や医療機器など、信頼性が重視される分野にも使用されています。
  • eDP(Embedded DisplayPort)
    特徴:DisplayPortの組み込み版です。高帯域・高解像度に対応しています。AUXチャネルによる双方向通信、省電力機能(Panel Self Refreshなど)を搭載しています。
    用途:ノートPCやタブレット、EVや高級車の大型ディスプレイなど。SoCの映像出力インタフェースにも採用されています。
  • HDMI(High-Definition Multimedia Interface)
    特徴:映像と音声を一本のケーブルで伝送可能です。ホットプラグ対応、著作権保護(HDCP)機能があります。
    用途:車載エンターテインメントシステム(後部座席モニターなど)、外部機器との接続。
  • MIPI-DSI(Mobile Industry Processor Interface - Display Serial Interface)
    特徴:モバイル機器向けに設計された高速・低消費電力インタフェースです。D-PHY/C-PHYを使用し、柔軟な構成が可能です。
    用途:車載ディスプレイの一部。スマートフォン。

OpenLDIとは?

正式名称:Open LVDS Display Interface
物理層技術:LVDS(Low Voltage Differential Signaling)
主な用途:当初はPCモニター向けに設計されましたが、現在は産業用ディスプレイ(医療機器、建設機器など)や車載機器で広く使用されています。

技術的特徴

  • アナログI/Fに比べて高帯域幅のデジタル映像伝送が可能。
  • FPD-Linkをベースにしており、互換性が高い。
  • 36ピンのMDR36コネクタなどを使用。
  • ノイズ耐性が高く、低消費電力で高速な映像伝送が可能。

イメージ図

OpenLDIとLVDSの差異

LVDS:物理層の通信方式。差動信号による高速・低ノイズ通信が可能です。
OpenLDI:LVDSをベースにしたディスプレイ用インタフェース規格です。

混同される理由

LVDSとOpenLDIはしばしば混同されることがあります。混同される理由として以下が挙げられます。


  • アナログI/Fに比べて高帯域幅のデジタル映像伝送が可能。
  • コネクタやケーブルが似ている:ピン配置や信号構成が類似。
  • 製品仕様書の表記が曖昧:一部メーカーが「LVDS対応」とだけ記載し、OpenLDI準拠かどうかを明記していない。

実務上の注意点

「LVDS対応」と記載されていても、OpenLDI準拠かどうかを確認することが重要です。信号のタイミングやピン配置が異なる場合、互換性がない可能性があります。

車載ディスプレイでOpenLDIが使われる理由

<技術的な利点>

高帯域・高速伝送:高解像度・高リフレッシュレートに対応。
低EMI(電磁干渉):車内の他機器への影響を抑制。
長距離伝送に強い:制御ユニットからディスプレイまで安定した通信が可能。

<車載用途に適した理由>

信頼性と耐久性:温度変化や振動に強く、-40℃〜105℃の環境で動作可能。
既存インフラとの互換性:多くの車載SoCやディスプレイコントローラがOpenLDIをサポート。
コスト効率:高性能を維持しつつ、比較的安価な技術。

OpenLDI仕様概要

  • 物理層:LVDS(低電圧差動信号)
  • 互換性:FPD-Linkと高い互換性
  • コネクタ:36ピン(例:MDR36)
  • 信号伝送:デジタルビデオストリーム
  • 対応解像度:SVGA〜QXGA(最大1920×1200@60fps)

統合コックピットとOpenLDIの役割

統合コックピットとは、運転席周辺の情報表示・操作機能を一つのプラットフォームで制御・表示するシステムです。SoCとディスプレイが別体の場合、SerDesインターフェースで接続されます。
SoC~シリアライザ間:OpenLDI、MIPI-DSI、eDPなど
デシリアライザ~ディスプレイ間:OpenLDIが最も多く採用されています。

OpenLDIインタフェースの液晶ディスプレイ

OpenLDIは、1チャネルあたり最大7倍のピクセルクロックでデータをシリアライズして送信します。そのため、解像度が高くなると、必要な帯域幅も増えるため、2ch構成が必要になります。


  • 1ch(シングルチャネル)構成

    最大対応解像度の目安:一般的に 最大で1280×1024(SXGA) や 1366×768(WXGA) 程度まで対応可能。
    カラー深度:18bitまたは24bit RGB(1ピクセルあたり)
    ピクセルクロック:最大約85MHz程度(製品による)

  • 2ch(デュアルチャネル)構成

    最大対応解像度の目安:1920×1080(Full HD) や 1920×1200(WUXGA)、場合によっては 2048×1536(QXGA) まで対応可能。
    カラー深度:18bitまたは24bit RGB(1ピクセルあたり)
    ピクセルクロック:最大約85MHz程度(製品による)


イメージ図

エプソンのOpenLDI対応車載表示コントローラ

エプソンでは、OpenLDIに対応した以下の車載向け表示コントローラを提供しています。


製品名 用途 最大解像度 主な機能
S2D13V43
(開発中)
高解像度HUD 2K Local Dimming、歪み補正、OSD、安全機能
S2D13V42 HUD 1280×720 歪み補正、安全機能、ピッチ補正
S2D13V40 HUD 800×600 歪み補正
S2D13V02 警告灯モニタリング 1920×720 表示異常検知機能
S2D13V52 スケーラIC 2880×1080 高品質スケーリング
S2D13V70 ブリッジIC(eDP→OpenLDI) 1920×1200 インタフェース変換

詳細は製品ページをご参照ください。