ニュースリリース
2021年5月26日
セイコーエプソン株式会社

高耐圧・大電流に対応するDMOS-ASIC外販ビジネスに参入

- 第一弾としてDMOS-ASIC『S1X8H000/S1K8H000シリーズ』の国内受注開始 -


『S1X8H000』

製品ページ

セイコーエプソン株式会社(以下 エプソン)は、高耐圧・大電流に対応するDMOS(Double-Diffused MOSFET)※1に特定用途向けIPコア※2と論理回路を混載し、1チップ化したDMOS-ASIC※3製品の外販ビジネスに参入します。その第一弾として、DMOS-ASIC製品『S1X8H000/S1K8H000シリーズ』を開発、このたび国内での受注を開始しました。

エプソンの半導体事業は、1969年の世界初のクオーツウオッチ開発に向けたCMOS※4 ICの内製化によってスタートしました。ウオッチ用CMOS ICは、消費電力が低く、製品を小型化・低コスト化できる利点があり、その後のクオーツウオッチの進化に大きく貢献しました。以来エプソンは40年以上にわたり「省・小・精の技術」をベースとしたCMOS ICを核として、LCDドライバ、ASIC、マイクロコントローラなどで半導体事業を発展させてきました。

また、近年では、長期ビジョンにおけるプリンターを中心とする完成品の価値創造に貢献するべく、内需向け半導体の開発にも注力してきました。エプソン製品ではウオッチのようなCMOS ICのみならず、プリンター向けなどにおいては高耐圧・大電流に対応したDMOSプロセスによるICも数多く開発・提供し、そのノウハウと多くのIPコアを蓄積してきました。

一方、持続可能な社会の実現のため、環境問題、特に地球温暖化問題への取り組みが注目される中、半導体市場においても、発生する電力の損失低減が大きな課題であり、たとえ高耐圧・大電流時でも電力を効率よく使用できる半導体部品の需要が高まってきています。さらに、新興国においては家電や電子機器市場が拡大し続けていること、電気自動車やハイブリッド自動車など次世代自動車の普及などにより、電力の損失課題を解決できる低消費電力の半導体部品への需要は、今後さらに高まると見込まれています。

エプソンは、こうした需要および環境問題に対応すべく、低消費電力のCMOSプロセスと内需向けで蓄積したDMOSプロセス技術ノウハウを活用し、高耐圧・大電流に対応するDMOS-ASIC製品の外販ビジネスに参入することとしました。

また、これまでエプソン内の完成品向けに開発・蓄積されたIPをベースとしたIPコアをラインアップします。加えて長期安定供給、柔軟な設計対応で産業分野を中心に約40年にわたって支援してきた実績と経験によるASIC開発手法で製品化します。

その第一弾となる『S1X8H000/S1K8H000シリーズ』は、0.15μmのCMOSとDMOSの混載プロセスで高耐圧・大電流に対応しつつ、低消費電力を実現するための制御回路を搭載可能なASIC(エンベデットアレイ/スタンダードセル)です。

また、エプソン独自の回路化技術により、従来難しかったアナログ系制御素子の集積を可能にし、基板の面積を占有する電力用半導体素子や専用IC、高耐圧・電流部をあらかじめIPコアとして準備、お客様によって設計された論理回路までを混載しDMOS-ASICとして1チップ化します。これにより、部品の複数調達の軽減や部品点数の削減、消費電流を最適制御することで省電力化を実現、お客様製品の小型化および低消費電力化、開発費の削減に貢献します。

本製品は、IO-Linkなどの通信送受信回路、高電圧スイッチ、スイッチング電源、制御機能を内蔵したモータードライバ、モーター駆動用Hブリッジなど、幅広い分野に最適です。

エプソンの長期ビジョン「Epson 25 Renewed」におけるマイクロデバイス事業領域では、『「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献する』ことを方針として、省電力・小型なデバイスの価値を提供することにより、お客様製品の環境性能の向上など、バリューチェーンを通じた環境負荷低減を進めていきます。また、半導体・水晶デバイス製品を通じて、従来とは異なる新たな業務プロセスをお客様に提案し、環境と経済を両立する高いお客様価値の提供を目指します。

■本製品の特長

  • DMOSトランジスタにより、高い耐圧を維持しながら、従来の高耐圧MOSプロセスに対し50%以上オン抵抗を低減、電力損失低減、高効率化を実現
  • 0.15μm CMOS論理回路、DMOSプロセス、不揮発性メモリなどが1チップに混載可能
  • 豊富な機能をIPコアとして提供可能

    IPコアの一例:過電流検知機能付きDMOSトランジスタ、Hブリッジ回路、LDO、EEPROM、SRAM、安全機能―低電圧検知、過電圧検知、加熱検知など。

    *IPコアは順次開発していく予定です。

【関連リンク】

製品の詳細情報は下記ウェブページをご参照ください。
ウェブサイト URL:www.epson.jp/prod/semicon/products/asic/dmos_asic.htm

【お客様のお問い合わせ窓口】

セイコーエプソン株式会社 デバイス営業部 デバイス国内営業グループ
ウェブサイト URL:www.epson.jp/prod/semicon/information/support.htm

■本製品の概仕様

型番 S1X8H000 / S1K8H000
電源電圧 I/O 2.7~5.5V
DMOS耐圧 PMOS 40V
NMOS 60V
DMOS電流 2A(参考値)
I/O駆動能力 2,4,8,12mA/3.3V
ロジック回路 配線層5層による高集積化
パッケージ QFP48~256ピン、QFN、PBGA、PFBGA
温度範囲 Ta=-40~105℃(Tjmax=150℃)

■DMOS+ASICのシステム構成例

※1 DMOS(Double-Diffused MOSFET):大きな電力を扱うためウエハの表面から底面までを使用し、ウエハの縦方向に大電流を流すことで高耐圧化を実現する構造を持つトランジスタ。一般的に10数V~数百Vの耐圧領域で使われることが多い。

※2 IPコア(Intellectual Property Core):LSIを構成するための部分的な回路情報で、特に機能単位でまとめられているものを指す。

※3 ASIC(Application Specific Integrated Circuit):特定用途向け集積回路。電子部品の種別の1つで特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称。
エプソンのASICは、カスタマイズの範囲によって、ゲートアレイ、エンベデットアレイ、スタンダードセルをシリーズとしてラインアップしている。

※4 CMOS(Complementary MOS):半導体に加える不純物を変えることでできるn型MOSトランジスタ、p型MOSトランジスタを相補的に組み合わせた論理回路。n型あるいはp型のMOSトランジスタだけで設計した場合と比べ消費電力を極めて少なくできることが特長。

以上

記載されている情報は発表日現在のものです。予告なしに変更になる場合がありますので、あらかじめご了承ください。