田沼武能

北海道ならではといえる、迫力のある氷の写真。日の光の入れ方や調子の整え方、構図の作り込みなどに作者の技術の高さが感じられる作品です。氷のオブジェを通して見える背景の景色も魅力的で、計算された美しさを感じます。撮影にはハーフNDフィルターを使用して輝度差を緩和しているようですが、夕日や朝日が画面に直接入る撮影では、フィルターだけでは緩和しきれないと思います。それらの表現はプリント時の仕上げなどで調整しているのだと思いますが、その仕上げもとても丁寧です。

三好和義

冬の湖で鳥の足のような面白い形状の“しぶき氷”を見つけ出し、逆光で美しくとらえた点が、この作品の重要なポイントです。さらに広角レンズを使い、被写体に近寄って大きく撮るというアングルの面白さもあります。その上で、透明感のある氷と静かな水面の質感が上手く画面構成され、全体の色調も整っています。プリントも染料インクのプリンターと写真用紙クリスピアの組み合わせで、水の質感やオレンジ色の光などが、クリアに仕上げられている点も素晴らしいと思います。

田沼武能

どんな生き物でも「死」から逃れられないのは宿命ですが、死してなお生命を感じさせるという奥の深い作品です。手前に大きく魚を入れつつ背景も広く入れるなど広角レンズを使い、カメラアングルを水面近くに構え、ドラマチックな撮影手法でとられていて、その画面構成は作者の考えが十分に反映されているのが伝わってきます。しかも、全体としては青っぽい画面にオレンジ色の魚の色合いが映え、その生命の存在が際立って見える点も素晴らしいと感じます。染料インクによる鮮やかな仕上がりも、この写真に適しています。

三好和義

アラスカで撮影されたカリブーの写真。広大な風景のなかに、日の光を受けてポツンとたたずむカリブーを小さめに構成したのがポイントです。それにより、雄大な景色のなかに写真を見る人が引き込まれて行くような感覚を覚える、スケールの大きな作品になっています。カリブーの配置や視線が、撮影者との気持ちのつながりを表しているように感じられる点もユニークです。フチなしの大きなプリントにより、風景の雄大さや広がり感、緻密さなども際立っています。