田沼武能

旅をテーマにした作品ですが、作者は“写真にして見せること”を十分に熟知し、その都度丁寧に心に残る画面に撮影しているのが伝わってくる質の高い作品です。作者が感じた旅の記憶や思い出、感動、旅の楽しさなどが1枚1枚の写真に写し出されていて、撮影シーンが臨場感を持って写真を見る人にも伝わってくる内容となっているのが、この作品の魅力です。ブック形式での応募ですが、写真の構成やプリント、用紙の選択なども的確であり、プリント技術の面でも優れていると思います。

三好和義

アジアのさりげない日常を、自然に切り取っている点が楽しく感じられる作品です。旅先での写真を自然に撮るのは、いくら頑張っても難しいものですが、作者は上手にさりげないシーンを切り取っていると思います。また、ブック形式とすることで見開き単位での写真の組み合わせが生まれ、その組み合わせの上手さから、上質な写真集を見ているような、あるいは一緒に旅をしているような感覚が伝わってきます。プリントも上手く、調子も現代的で飽きずに見ていられる作品です。

田沼武能

運動会でバトンを持って走って、転んでもバトンを握りしめているという微笑ましい心を打つ瞬間をとらえた作品。まさにシャッターチャンスの上手さを感じさせてくれる写真です。ともすれば、痛々しい瞬間になり兼ねないのですが、子どもが必死にバトンを握りしめていたり、土が跳ねていたりするなど動きが感じられる瞬間をとらえたことで、その真剣な姿に引き付けられる写真です。プリントも自然な色で見たままに再現しており、嫌味のない素直な質感描写が作品に合っています。

三好和義

花火がビルのガラス面に反射している様子を捉えています。しかも、よく見ると建物のなかに写し出されているすべての人たちが花火を撮ろうとカメラやスマートフォンを構えているなど、さまざまな点で驚きに満ちた瞬間になっているのが、この写真の楽しいところです。花火の色の鮮やかさやガラスの質感なども含め、ここまで緻密に写るという驚きもありますが、写っている人たちがほとんどぶれずに写っている点にも驚かされます。構図も秀逸で、力強さの感じられる作品です。