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池上 諭「蜜柑が赤く熟れる時分」

会期:2018年2月16日(金)~3月1日(木) 日曜休館 展覧会情報

©Satoru Ikegami

愛媛県八幡浜市、真網代地区から穴井地区で収穫される真穴みかん。11月と12月は収穫真っ盛り。
この時期、私は農家に住み込みで働き始めて4年が経つ。
この展示はその仕事を紹介するものではなく、
ここでの生活のすべてがそこに在る風景の中に見つけられたひとつの成果である。

©Satoru Ikegami

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Interview インタビューコメント

――この度は、「epSITE Exhibition Award」受賞おめでとうございます。 今回は、記念すべき第1回で6つの展示の中から選ばれた訳ですが、受賞してみての感想はいかがですか?

池上さん/最初に受賞の連絡をいただいたときは、とにかく嬉しかったです。
これまで約10年間写真に取り組んできましたが、北島敬三先生や小高美穂先生に講評・評価いただけたことで、自分の行ってきた活動が間違っていなかったんだという確認になり、今後に向けての自信にもなりました。
特に北島先生が、公募展の選考時に「見ているものが複雑で、矛盾とか迷いといったものも受け入れているような感じがある」といったことを指摘されていたのが印象的で、自分では気付かない点にまで踏み込んで見ていただけていることに感動しました。見る人の立場や状況によって感じ方が変化するのが、こうした作品の面白さだと思いますが、その一方で先生方のように冷静に写真を見てくれる方に評価していただきたいという思いもあり、今回の受賞は特に嬉しく感じています。加えて、今回は私が日頃信頼している人の感想や評価も高めだったのも嬉しかったです。

――展示は2018年の2月16日~3月1日まで行われた訳ですが、今回の展示「蜜柑が赤く熟れる時分」の意図やコンセプト、 こだわったポイントはどういった点ですか?

池上さん/今回の作品に限らず、私の場合は山に行く、街に行くといった目的の場所を定めて写真を撮るのではなく、自分が生活の中で行くことになった、あるいは関わった場所で撮るというスタンスを基本としています。
今回の作品は、真穴みかんの産地である愛媛県八幡浜市の農家に4年間住み込みで働かせていただいて、その生活の中で撮った写真です。そういった撮り方なので、最初の2年間は写真を撮るどころではなく、3年目くらいから撮り始めて、4年目でようやくカタチにできたといった感じです。
コンセプトとしては、その地域の“仕事の紹介”をするのではなく、その地域のリアルな「生活」「土地」 「産業(農業)」を見せていきたいという思いがあります。個人的にも農業やその従事者に対する憧れのようなものがあって、最先端なものよりもアナログなものに人間的な魅力や面白さや楽しさを感じます。展示に関しては、空間をどう構成するかをポイントにしました。特に今回は、会場に入ったときの第一印象として多少なりインパクトのあるものにしたいという思いが あったので、大判プリンターなども駆使して、大・中・小と3種類の大きさのプリントを制作しました。
従来は、同じ大きさのプリントを展示することが多かったのですが、3つのサイズで展示することで変化やリズムをつけることができました。いちばん大きなプリントは、900㎜×600㎜というサイズだったので、光の映り込みや風合いなども考慮して絹目調の用紙を使用しています。また、会場の壁面が濃いグレーなので白い枠を付けて、メリハリのあるものに仕上げています。そうした点は、自分の中での新たな挑戦であり、一歩前に出られたかな?と思える展示にできました。

――今回の作品に限らず、池上さんの作品制作全般でこだわっている点はありますか?

池上さん/まず作品制作ついては、撮影は学生時代からの習慣もあって、主にフィルムカメラで撮っています。その上でフィルムをスキャンしてデータを仕上げ、プリントするという手法が中心です。
その点は、特にアナログにこだわっているという訳ではないのですが、私の作風に合っているように感じています。撮影のスタンスとしては、フレーム内にあえて人を入れずに、人の“におい”のするものや道具、地形的なものを軸に撮影して、人々の生活感を表現していくといった方法がメインになっています。人を画面に入れてしまうと、人が中心になりすぎるというか、表現が直接的になりすぎる印象があって、風景や地形といったものを中心に撮って、幅のある表現を目指しています。
この手法は、2010年に約7か月かけて徒歩で日本縦断を行ったときに確立した手法なのですが、基本的な撮り方は、その頃から変わっていません。

――ちなみに今回、その作品をエプサイトで展示したいと思ったきっかけはどういった点でしょうか?

池上さん/作品のジャンルとしては「風景」が近いと思いますが、風景を専門にしたギャラリーなどよりも、ジャンルを問わず「写真としての表現」を大切にしているギャラリーで展示したいという思いがあって、エプサイトに応募しました。

――今回の受賞を踏まえ、今後の作品制作の予定や目標などがありましたら教えてください。

池上さん/作品発表の方法としては、原板がフィルムなので、プリントが最終形態であることに変わりはないのですが、その見せ方は展示だけとか写真集だけとかではなくて、この2つを組み合わせることが私の理想です。
そのため、今回の作品を写真集にまとめるというのが、現在のひとつの目標です。今回は副賞として賞金をいただけたので、それを資金にして写真集にする予定です。
作品制作に関しては、現在、長野県の農家に行く予定などがあるので、そうした場所や私が住んでいる湘南エリアで撮影を続けて、作品化していこうと考えています。
また、今後はデジタルカメラの活用や展示方法の模索も含めて、新たな表現方法にも挑戦していこうと考えています。

池上 諭氏

池上 諭 Satoru Ikegami

プロフィール
1984年神奈川県生まれ。第16回三木淳賞奨励賞受賞。
http://ikegamisatoru.com/