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文筆家・速水健朗に聞く 大量の「紙の資料」どう整理する?

職場と居住地の近接する傾向が生まれている昨今の傾向を軸に、変わりゆく都市と人々の暮らしについて書いた『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』や、オウム事件や大震災などエポックな事象が数多く起きた年を基準に昨今の日本をひもといた『1995年』など、著書でさまざまなテーマを独自の切り口から展開する、速水健朗さん。

仕事に取り組む上では“あえて得意分野をつくっていない”といい、理由を「飽きっぽいので、毎回テーマを変えているんですよ。その時に興味があるものを、都度調べ上げて書いていきます」と話します。

そのため執筆の際は、膨大な資料・文献を読みながら進めるのが基本スタイルになっているといいます。今回は、そんな速水さんの資料収集とデータ管理について聞きました。

多彩なテーマに取り組む文筆家が考える「紙とデジタル」それぞれのメリットとは?

――多様なテーマを扱われている速水さんですが、それゆえに取材や資料を集めるのはかなり大変なのでは? と感じます。実際のところ、どうですか。

速水さん ええ、特に資料収集に重点を置いていますね。仕事に使う全労力のうち、文献を集める労力が7に対して、人から話を聞く労力が3くらい。もちろん、取材も大切ですが、僕が著書で掲げているテーマの場合は、資料・文献が手元にないと執筆を進めるのは難しいんです。

――資料・文献は、どういった形のものを?

速水さん 本、雑誌、新聞。あと、「紙か? デジタルか?」という点では、どちらも使っていますね。電子書籍は5年くらい使ってますし、新聞は以前は紙と電子版、1部ずつ契約していました。今は電子版だけですが。

――やはり、電子版の方が扱いやすいんでしょうか。

速水さん 紙とデジタルのそれぞれを考えると、やはりどちらにもメリット・デメリットがありますよ。たとえば連載などで評論を書く、という場合は、電子版の新聞は検索性が高く、出てきた記事を読んで考えたり引用したり、といったことがやりやすい。反対に、大事なところに赤線を引いたり付箋を貼ったりできるのは、紙の大きな長所でしょう。電子書籍でもマーカーが引けるようになっていますが、それでも現時点ではまだまだ紙の本、雑誌の方が簡単にできると感じますね。紙とデジタルそれぞれをうまく併用していくのがベターな方法だと考えています。

「毎回異なるテーマを書くからこそ、机の上をゼロに戻したい」 速水健朗の整理論

――では、紙のデメリットは何になるのでしょう?

速水さん やはり、場所をとるという点が大きいですね。僕の場合、自宅の仕事部屋があって、そこに収まらない本・雑誌のためにコンテナルームを借りているんですが、一切捨てないまま紙の資料が増えていけば、いつかはコンテナにも入り切らなくなります。でも、「新しいコンテナ借りよう」「仕事場借りよう」となると、際限なくなりますよね。

 

――大変そうですね(笑)

速水さん こうなってしまう理由の1つは遺伝もあると思ってて、父がスクラップマニアで、僕自身もかつてはスクラップを保存していました。また以前、猪瀬直樹さんの事務所にお邪魔したことがあるんですが、やはり猪瀬さんもスクラップを収めたファイルや大量の紙資料、書籍が机の上から本棚まで、至るところにあるんです。テレビで田原総一郎さんの仕事部屋を見た時も同じでした。だから、遺伝のほかにも、職業的にそうなってしまう面はあるかもしれませんね。

――そのスクラップは、どれくらいの頻度で読み返しますか?

速水さん それが、ほぼ読み返すことはないんですよ。ただ、後から調べなおす手間を考えると、やはり資料はアーカイブしておくべきだなと。だから僕は今、スキャナーを活用して紙の資料はデータ化しています。デジタルデータに変換することで、後からいつでも読み返すことができるだけでなく、OCR(光学文字認識)によって読みたいところをすぐ検索できますしね。あっという間に増えてしまう紙の資料ですが、デバイスの使い方ひとつで、仕事スペースが乱雑になるような状態は防げるんです。

――そうお聞きすると、速水さんは整理が得意な人のタイプに感じます。整理って、思い切ってモノを捨てることが大切といいますし、そこに通ずる気がしました。

速水さん いやいや、若いころ働いていた出版社では、誰よりも机が汚かったですから……最近、「机が綺麗な人は仕事はできる」論と「整理と仕事のできは関係ない」論、2つあるじゃないですか? 「どっちなんだよ!」って思いますが(笑)。それでも、僕の仕事の場合でいえば、1冊の本を書き上げたら机の上を「ゼロ」に戻した方が、効率がいいと思うようになりましたね。

――「ゼロに戻す」とは、仕事のたびにモノをちゃんと捨てるということですか?

速水さん そうです。やっぱり、時代のトピックをまとめた『1995年』という本を書くときと労働と住居の近接性を論じた『東京どこに住む?』という本を書くときとでは、机の上に置く資料が全然違うわけですよ。思考も変えなきゃいけませんしね。常に綺麗にしておくのは難しいにしても、新しい仕事に取りかかるときくらいは、机の上を「ゼロ」に戻した方がいいと思うんです。

「マルチなものより必要なものだけを」 編集者から見たテクノロジーの進化

――ご著書『1995年』ではまるまる1章分のページが、インターネットとテクノロジーについて割かれています。あれから約20年、テクノロジーは編集の世界にどんな変化を与えましたか?

速水さん パソコンがかなり普及したとき、編集者の間でよく交わされたのが「エディターツールは何を使ってる?」などという会話でした。でも今となっては、ユニバーサル(一般的)なデバイスやアプリしか仕事で使うことはありませんね。原稿ならば、最初からパソコンにインストールされているテキストエディターやMicrosoft® Wordなどで書いて、入稿していますし。

――それは編集者でなくても、同じかもしれませんね。

速水さん そもそもの話、大勢のニーズに答えなければなりませんから、ユニバーサルに使えるようなデバイスなどに落ち着くわけです。プロに特化したデバイスは、今後はあまり発展しないじゃないかな、とも思います。

――やはり機能性もシンプルな方が良いということでしょうか?

速水さん それは強く思いますね。昔は自宅の仕事スペースに複合機を置いていた時期もあったんですが、意外と使わない機能もあるんです。たとえば、十徳ナイフって使ってみたくなる見た目ですけど、その中には「絶対にこれは使わないよ」という刃があるじゃないですか。

――そのたとえ、わかりやすいですね。

速水さん もちろん複合機を使う良さもあると思うんですが、僕はスキャンならスキャナー、印刷ならプリンター、と必要な機能ごとにデバイスを揃えるようにしているんです。そうすれば、今述べた使わない機能を省けるだけじゃなく、1つの機能が壊れただけでそのデバイスのすべてが使えなってしまう、というリスクも防げます。反対に、本当に必要な機能――たとえば先ほど述べたOCRなどは、古いスキャナーには備え付けられていませんよね。でも、今のスキャナーなら解像度が上がりスキャンした資料の文字検索ができるようになりました。マルチなデバイスは費用が高いこともあり、欲しい機能があってもすぐ機械を変えるというわけにはいきません。機能ごとに分けるのは、こうした必要とされるスペックを持つ製品に、すぐ移れるということでもあるとも思うんです。

資料の管理や編集とテクノロジーの話題にとどまらず、上手なデバイスとの付き合い方まで教えてくれた、速水さん。

場所を選ばず仕事をするフリーランスの文筆家・編集者でなくとも、近年ではフリーアドレスのオフィス(働く人が席を自由に選ぶ)や自宅勤務を認める企業など、柔軟性・多様性のある働き方が見られるようになりました。仕事のカタチが変わりつつある今、スマートで操作もシンプルなものを選ぶという選択肢もひとつかもしれません。

スキャン機能のあるデバイスを探すときも、場所をとらず自分が必要とする機能が搭載されているアイテムを選ぶことで、より仕事をスマートに進められるはずです。

プロフィール
はやみずけんろう・文筆家。1973年生まれ。石川県金沢市出身。 パソコン雑誌の編集を経て、2001年よりフリーランスとして、雑誌や書籍の企画、編集、執筆などを行う。『都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代』(角川oneテーマ21)、『1995年』(ちくま新書)、『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』(朝日新書)など著書多数。ほか、ラジオ「速水健朗のクロノス・フライデー」(JFN系列、金曜6時~)でMCを務める。

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