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仕事の効率や生活の質が上がる、「ミニマリスト」という生き方とは?

家具や身の回りのものを必要最低限に減らし、身軽に、そして快適に毎日を過ごす「ミニマリスト」という生き方があります。一昨年「新語・流行語大賞」にもノミネートされたこの言葉は、2015年に刊行された書籍『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(ワニブックス)によって、国内でも広く知られることとなりました。

同書の著者である佐々木典士(ふみお)さんも、もちろんミニマリストです。書籍の冒頭には、佐々木さんが暮らす1K20平米の住まいの様子が収められています。テーブル代わりの小物入れがポツンと置かれたリビングや液体石鹸だけが設置された浴室を見ると、そのシンプルな暮らしに誰もが驚くでしょう。しかし実は佐々木さん、以前は典型的な「物を捨てられないタイプ」だったのだそうです。

そんな佐々木さんに、物を持たない暮らしを実現させるためにどのように工夫したのか、また、物を減らすためのデジタル活用術についてお話を伺いました。

捨てられない自分がいやだった

――ミニマリストになられる以前は、どのような暮らしをされていたのでしょうか?

佐々木さん(以下、佐々木):これは今でも変わりませんが、僕は昔から物が大好きだったんです。アンティークのカメラを蒐集したり、本やCDも大量に集めていました。でも、今思い返せば明らかに自分の管理能力のキャパシティーを超えた量を抱えてしまっていたんです。物が溢れていると生活の自己管理ができなくなりますし、自己肯定感も今よりずっと低かったと思います。現に、仕事を終えて掃除をしていない部屋に帰るとドッと疲れを感じていましたし、翌朝洗っていない食器を横目に家を出る瞬間は、いつも「自分はだらしないなぁ」と自己嫌悪に陥っていました。そんな悪い状況がスパイラルしていたと思います。

――そうした日常を、佐々木さんはミニマリストとして生きることで大きく転換させることができたということですが、そもそもミニマリストという生き方を知ったきっかけは何だったのでしょうか。

佐々木:僕は出版業界にずっと勤めていたのですが、以前仕事でカメラマンとクロアチアに行ったことがありました。当時、現地は雨が降っていて、小さなホテルに閉じこもっていたんですが、部屋には必要最低限のものしか置いていなくて、テレビを見ても現地の言葉の番組ばかりで何もわからない。すると、同行していたカメラマンがその状況を「ミニマリストみたいだ」と思ったらしいんです。その時ぼくも「ミニマリスト」という言葉を初めて知り、画像検索をしました。そして出てきた身軽で自由なミニマリストたちの姿に強烈に惹きつけられたのがきっかけです。

スキャナーがあったことで捨てられたものはたくさんある

――ミニマリストになることを決断されて、最初に捨てたものは何でしたか?

佐々木:家の中に転がっている、明らかにいらないものから手をつけました。コンビニの割り箸や納豆のタレ、ボロボロの服や靴……どんどん捨てていくと、捨てる力のようなものが身についていったんです。それから、大量の本やテレビといった大きなものにチャレンジしていきました。

――処分する時、名残惜しい気持ちにはならなかったのでしょうか。

佐々木:なりましたよ。だから、捨てるものをすべて写真に撮っていきました。特に本は表紙を一冊一冊撮影していくと、まるで自分の歴史の一面を見ているようでしたね。

――佐々木さんは著書の中で、ミニマリストになるための整理整頓の過程ではスキャナーの存在も欠かせなかったとつづっていらっしゃいますよね。具体的にはどのようなシーンで活用されましたか?

佐々木:持っていた本を裁断してデータ化する“自炊”にはスキャナーが必須でした。仕事の書類はもちろん、趣味だったフィルム時代の写真を取り込むためにも活用しましたね。持っていたものを写真に撮る行為もそうですが、僕の中でのスキャンをする行為って、整理整頓における一種の“儀式”のようなものなんです。

――儀式、といいますと?

佐々木:例えばなかなか捨てられないもののひとつに、思い出の手紙があります。でも、捨てられないからといって保存しておいても、それを見返すことはそうそうなくて、存在自体を忘れていたりもする。スキャンという再びそのものと向き合う行為を通して「あぁ、こういう手紙をもらって、その時こんな気持ちになったな」と感謝して記憶に刻み込めば、手放すことができるんです。そしてちゃんとデータとして保存をすれば、いつでも見返すこともできる。スキャナーがあったことで、僕が捨てられたものはたくさんあります。

――整理整頓にスキャナーを取り入れる際のコツはありますか?

佐々木:まず、そもそもスキャンをするかどうかを一度考えること。明らかに今後見返すことがイメージできないものはそのまま処分すればいいと思いますし、逆に毎日見るようなものはスキャンしなくていいと思います。多分キリスト教の人たちは聖書を“自炊”しないでしょうから。

――実際にスキャンをしたデータの管理はどうされていますか?

佐々木:スキャンをした日付とファイル名は必ず設定するようにしています。その習慣が後々データとして見直す時にとても役立っています。それと、1TBのハードディスクに入りきる量におさめることも僕の中でのルールです。いくら無限にデータ化ができるといっても、例えば3TBのハードディスクに整理されていないデータがごちゃごちゃに入っている状況では、バックアップするにしても、クラウドストレージの料金や手間もすごくかかりますからね。

物を整理し減らすことで得られるもの

――スキャナーでのデータ整理など、物を減らしていくことで普段の仕事に影響はありましたか?

佐々木:メンタル面では、冒頭でお話ししたような日常生活におけるストレスがなくなりましたから、心に余裕をもって仕事にも当たることができるようになりました。僕は仕事終わりに、いらない物は捨て、書類はスキャンしてデータ化するなど、必ず机の上を何もない状態にして帰宅するようにしているのですが、そうすることで翌朝出社した時も気持ちよく仕事をスタートすることができています。

仕事の効率などに関しては、とにかく忘れ物がなくなりましたし、ミスも減りました。パソコンのデスクトップにも余計なアイコンを置かず、やり残した仕事だけをファイルとして残しておくようにしているんです。部屋や物理的な作業環境だけでなく仕事内容の整理もちゃんとできるようになりました。

また、時間の有効活用ができるようになったことは大きいと思います。なかなか意識することはありませんが、人間って1日に10分は何かしらの探し物をしているそうです。これは一生分に換算すると150日でして、僕はその内かなりの日数を得しているなと。もし、今周りを見回して少しでも「何か気になる空間だな」と思う場所がある人は、小さなことからでもミニマリストのスタイルを取り入れてみてほしいですね。

ミニマリストになる決断をしてから、もっとも物が多かった状況から95%もの物を処分したという佐々木さん。「物に執着しないことで、本当に自分に必要なものも見えてきた」そうです。また、データ化については、スキャンする際の基準や、保存しておく容量を決めておくなど、管理のコツをしっかりと教えてくれました。

仕事の効率性だけでなく心の穏やかさも手に入れることができるミニマリストのスタイル。普段の生活をより豊かにするためのヒントがたくさん詰まっていました。

プロフィール
佐々木典士(ささき・ふみお)
ミニマリスト/作家/編集者。1979年生まれ。香川県出身。早稲田大学教育学部卒。『BOMB』、『STUDIO VOICE』、ワニブックスを経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに、ミニマリズムについて記すサイト『Minimal&ism』を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(ワニブックス刊)は16万部突破、12カ国語の翻訳が決定。

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