マイコンとは?意味や役割、機能、動作の仕組み、利用例をわかりやすく解説

マイコンとは?

マイコンと聞いて何を想像しますか?パソコンにはいっている頭脳?電子炊飯器に入っているIC?コンピュータのようなもの?世代や背景によってはそのイメージが異なるかも知れません。ここでは、初心に立ち返って“マイコン”とは何かを考えてみたいと思います。

マイコンは何の略称か?正式名称は?

マイコンの正式名称は以下のいずれだと思われますか?


  • マイクロコンピュータ(Microcomputer)
  • マイクロコントローラ(Microcontroller)
  • マイ・コンピュータ(My computer)
  • その他

以下の分類から名称を考えてみます。

捉え方による分類(コンピュータ or コントローラ)

いずれにしても、プログラムを逐一、読出、解釈・実行を行い、算術論理演算、分岐を行う装置です。捉え方からは、以下の二つに分類できます。

  1. コンピュータ製品
    • 計算することを主体的にとらえたコンピュータ製品と考えれば、「コンピュータ」の名称が適当です。
  2. 組み込み製品の部品
    • ハードウェアを制御して製品機能を実現することを主体的にとらえ、組み込み製品の一部分と考えれば、「コントローラ」の名称が適当です。この場合、組み込み製品の部分ということを示すため、マイクロコントローラユニット(Micro Controller Unit)、略してMCUとも呼びます。

規模感別の分類(マイクロ or マイ)

規模感を表現した意味ではどうでしょうか。

  1. 小さいという意味
    • マイクロ(μ)は、数学的には10のマイナス6乗ということになりますが、非常に小さいという意味でも使われています。ここでは非常に小さい半導体チップ上で実現されるということを意味します。
  2. 私の、個人のという意味
    • かつて、パソコンのことをマイコンと呼んだ時代もありました。その語源は、私のという意味でマイコン(マイコンピュータ)といっていたと記憶しています。ただ、その名称は、すぐにパソコン(パーソナルコンピュータ)に置き換えられました。

以上のことから、現在マイコンの正式名称は、マイクロコンピュータ(Microcomputer)、マイクロコントローラ(Microcontroller)あるいは、マイクロコント―ラユニット(Micro Controller Unit)のあたりが適当と考えられます。

組み込みマイコンとは

組み込み製品で使用されるマイコンを指します。では、組み込み製品とは、何でしょうか。日頃、私たちが使用する家電などを含め、ほとんどの電子機器を指します。家電製品、乗用車、工業製品、携帯機器、医療・健康機器など。電子機器は、必ずしもマイコンが搭載されているわけではありませんが、複雑な処理でも、柔軟に処理をすることが可能であることから、マイコンが搭載されている比率は高くなっています。

マイコン基板(ボード)とは

マイコンは半導体製品(IC)であり、実際にマイコンを用いた製品を開発するためには、開発環境(ハードウェア,ソフトウェア)を整えなければなりません。例えば、ネット通販を通じでマイコン(IC)を購入しただけでは、何もできません。まずはプロトタイプ開発や試験的な開発を行うための開発環境が必要です。
マイコン基板(ボード)とは、マイコンのほか、入出力装置、電源装置など、マイコンが動作するために最低限必要な部品を搭載したボードを指します。また、多くの場合、このボードはパソコンと接続してマイコンのソフトウェア開発が可能なようになっています。そのため、プロトタイプ開発や試験的な開発には最適なボードです。

マイコンとICの違い

マイコンは半導体製品(IC)の一製品です。しかし、マイコンはさまざまな要素を搭載し得る半導体製品とも言えます。

以下に半導体製品の分類例を示します。

マイコンとICの違い

図1 半導体製品の分類例


マイコンとCPUの違い

前述の通り、マイコンにはさまざまな要素が同じひとつの半導体チップ上に搭載されます。そのうちCPUはマイコンに搭載される一つの部品です。一部品ではありますが、人間に例えると頭脳にあたる部分で、マイコンが動作する上では、もっとも重要な部品と言えます。ちなみにパソコンに入っていて、頭脳として働いている部品は、マイコンではなくてCPUと言えます。

マイコンの基本構成図

図2 マイコンの基本構成図


パソコン、マイコンの黎明期は、双方のCPUについて、その性能差はあまりありませんでしたが、常に高性能が求められるパソコンのCPUは、年を追うごとに性能が向上していきます。一方、マイコンに搭載されているCPUは、その組み込み製品に必要とされる性能に応じて高性能化するものもあれば、低い性能まま存続し続けているものもあります。機能的には、すべて機能の高いCPUに置き換えることは可能ですが、高性能であるほど、その価格は高価だったり、あるいは消費電力が高かったり、対象の組み込み製品によっては、使用できないこともあります。例えば、ウォッチにパソコンのCPUを搭載したら、あっという間に電池切れになってしまいます。いつの時代でも、各組み込み製品に最適なマイコンが求められるというわけです。

マイコンの基本構成図
図3 各年代におけるパソコンとマイコンのCPU性能を示したイメージ図


マイコンは何ができる?役割と機能

マイコンには、入力、演算、記憶、制御、出力のような各機能回路が搭載されています。以下、機能回路ごとに役割・機能をみていきます。

  1. 入力回路
    • 入力端子に供給される電圧レベルをもとに値を入力することが可能です。3.3Vで動作するマイコンであれば、端子に3.3Vを与えればHレベル (="1”) が入力され、端子に0Vが与えられれば、Lレベル (="0”) が入力されます。
  2. 演算回路
    • 入力されたデータやメモリに格納してある値を用いて、演算を行います。演算可能な種類はマイコンにより異なりますが、機能の低いマイコンであっても、論理和(OR)、論理積(AND)、排他的論理和(エクスクルーシブOR)、加算(+)、減算(-)くらいは可能になっています。機能が上がるにつれ、乗算、除算、積和演算*1、浮動小数点演算*2など実行可能な演算は増えます。
  3. 記憶回路
    • メモリのことで読み出ししかできないROM、読み書きが可能なRAMなどの種類があります。ROMにはマイコンを製造する過程か、組み込み製品を出荷する時点で、プログラムコードを書き込みます。また、RAMは自由に読み書き可能ですが、マイコンの電源が抜けてしまうと、そのデータも消えてしまいます。
  4. 制御(判断・分岐) 回路
    • 演算した結果や値の大小を判断して、プログラムの分岐を行います。通常、演算した結果はCPU内のフラグに残され、このフラグを判断することにより、プログラムの分岐先が変わります。各判断は、このプログラムの分岐により行われます。
  5. 出力回路
    • 上記の処理を経た後、出力ポートにHレベル(="1")もしくは、Lレベル(="0")を出力することにより、マイコン外部の装置を制御します。

以上1)~5)までが、もっとも基本的なマイコンの動作になりますが、マイコンにはその他にさまざまな周辺回路が搭載されています。CPUがこれらを操作して、さまざまな機能を実現することが可能です。


*1:積和演算: 積の和求める演算であり、デジタル信号処理で多用される演算式。
*2:浮動小数点演算: コンピュータにおける数値演算方式のひとつ。数値を仮数部と指数部に分けて表現することにより、極端に大きい、あるいは、小さい値であっても、その値を近似して表現することが可能になり、データサイズを抑えることができる。

マイコンの動作の仕組み・原理

以下は、一般的なマイコンのブロック図です。マイコン毎に多少の差異はありますが、基本的には以下のような構成になっています。本ブロック図を用いて、マイコンの動作原理を簡単に説明します。

マイコンのブロック図例
図4 マイコンのブロック図

*各ブロック間の接続については、一般的にはバス回路*6を用いて接続しますが、ここではわかりやすさを優先して、単に矢印でデータの流れる方向を示しています。

まず、各ブロックの説明をします。

  1. プログラムカウンタ
    • マイコンはソフトウェア(プログラムコード)に従って動作を行います。通常、プログラムコードはメモリ上に記憶されていますが、メモリのうち実行すべきプログラムコードが記憶されているアドレスを指定する回路です。
  2. メモリ (コード用)
    • プログラムコードを格納するメモリです。現在ではフラッシュメモリ*3を使用する場合がほとんどです。フラッシュメモリは、書き換えが可能なメモリで、電源を切ってもそのデータは消えません。
  3. メモリ (データ用)
    • データを一時的に格納するためのメモリです。一般的にはスタティックRAM*4が用いられます。スタティックRAMは、自由に書き換え可能なメモリで、低消費電流で動作します。但し、いったん電源を切ると、そのデータは消えてしまいますので、一時的にデータを記憶する場合にのみに使用します。
  4. CPU
    • 演算装置、制御装置をあわせた回路ブロックです。メモリに記憶されていたプログラムコードを取り出し、どのような制御を行うのか判断、また、算術論理演算を行います。
  5. 周辺回路
    • マイコン機種毎にさまざまな回路が搭載されます。ここでは、一般的な例として、発振回路、タイマ、リアルタイムクロック、ADコンバータ、入出力回路を上げました。

*3:フラッシュメモリ: 書き換えが可能な不揮発性メモリ。消去しないと再書き込みはできない。消去は特定のブロック単位で行う。
*4:スタティックRAM: 書き換えが可能な揮発性メモリ。リフレッシュ信号を供給する必要がない。
*5:ALU: Arithmetic Logic Unitの略で、算術演算、論理演算を行う回路のこと。
*6:バス回路:各回路ブロック間を共通の信号線で接続し、データを転送するタイミングを時間で区切って各データを送るようにした回路。これにより、配線本数を大幅に削減することが可能。


マイコンの動作の流れを説明します。


  1. 初期化
    • ほぼすべてのマイコンにはリセット端子が備わっており、この端子をHもしくはLレベルにすると、マイコンシステムの初期化が行われます。①プログラムカウンタ、④CPUほか、周辺回路の初期化が行われます。ほとんどの場合、メモリは初期されません。また、②メモリ(コード用)には、書き込み装置などを用いて、あらかじめプログラムコードを書き込んでおきます。
  2. プログラムコードの出力
    • ①プログラムカウンタは、②メモリ(コード用)のアドレスを指定します。初期状態では、プログラムの開始番地が指定され、②メモリ(コード用)は、最初に実行するプログラムコードを④CPUに対して出力します。
  3. 解釈・実行
    • ④CPUは、最初に実行するプログラムコードを読み出し、そのコードの解釈を行います。また、解釈した結果に基づいて各種制御を行います。プログラムコードの制御内容は、以下の3種類程度に分けられます。
    • ■データの転送

      ④CPU内には、レジスタという一時的な記憶エリアがあります。このレジスタの数やビット長はCPUにより異なります。レジスタとメモリ間でデータを転送、あるいは⑤周辺回路とレジスタ間でデータの転送を行います。

    • ■算術論理演算

      算術演算は、加減乗除などの計算を指し、論値演算は、論理和・論理積・排他的論理和などの演算を指します。レジスタに記憶された値などを演算して、一時的にレジスタや③メモリ(データ用)に結果を格納します。

    • ■判断(分岐)

      算術論理演算した結果や、値を比較した結果に基づいて、次に読み出すべき①プログラムカウンタのアドレスを指定します。

      データ転送、算術論理演算だけを実行する場合でも、①プログラムカウンタの値は、必ず一つ増え、次の②メモリ(コード用)のアドレスを指し示します。

  4. 周辺回路動作
    • ④CPUの指示に基づき動作し、⑤周辺回路の制御を行います。周辺回路には、多様な回路が搭載され、さまざまな機能を実現します。

マイコンの用途は?電子部品として使われるマイコンの利用例・製品例

マイコンは、多種多様な機器に使用されています。その一例は以下のようになります。


家電製品

エアコン、炊飯器、洗濯機、掃除機、空気清浄機、電子レンジ、リモコン、感知器

乗用車

自動車、バイク、トラクター

工業製品 タイムスイッチ、カウンタ、タイマ、サーモスタット、温調器、ガス・水道メータ、マルチメータ
携帯機器 スマートフォン、ウォッチ
医療・健康機器 医療機器、体温計、血圧計

マイコンを利用するメリットは何か?

マイコンを利用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 複雑な処理も比較的簡単に制御できる。
  • ひとつのマイコンでもソフトウェアを変更するだけで、他の組み込み製品に対応することができる。
  • 製品開発中に急な仕様変更が入った場合も、ある程度柔軟に対応できる。

欠点

  • ハードウェアのみで構成された専用ICに比べれば、処理速度が遅い。
  • 完全なロジックIC(カスタム)よりも単価は高くなる可能性が高い。

マイコンの基礎の次は、マイコン製品の概要となにができるのか?を学ぼう

ここまで、マイコンの基礎(原理や仕組み、利用例、機能など)について詳しく解説しました。それでは、次は、マイコン製品ではどんなことができるのか?について、エプソンの製品を例にご紹介します。今後、マイコンをさまざまな領域で利用される場合のヒントにご活用ください。

エプソンのマイコンでできること

できること できることの概要 活用イメージ
警報音を鳴らすマイコン 御社製品から警報音を出力することができます。音声作成PCツールを用いて、容易にWAVフォーマットファイルのデータを取り込むことが可能です。 警報音を鳴らすマイコン
音声ガイド 御社製品に音声ガイド機能を付与できます。録音することなく、世界12か国の音声再生が可能です。 音声ガイド
温度測定 高精度な温度測定を得意としています。低消費電力での測定といった特長があります。 温度測定
液晶ディスプレイ表示 液晶ディスプレイに表示させることを得意としています。低い電力で液晶ディスプレイの駆動に必要な安定した電源も生成します。 液晶ディスプレイ
メモリ液晶ディスプレイ表示 メモリ液晶ディスプレイに表示させることを得意としています。メモリ液晶に特化したコントローラを内蔵していますので、CPUに負荷をかけずにモノクロやカラー表示を得意としています。メモリ液晶を駆動するために必要な電源も生成します。 メモリ液晶ディスプレイ
電子ペーパーディスプレイ(EPD)表示 電子ペーパーディスプレイ(EPD)に表示させることが得意です。EPDドライバ搭載した低消費電力のMCUを用いることにより、長期間の運用が可能です。 電子ペーパーディスプレイ
デジタルマルチメータ(DMM) ひとつのMCUを用いるだけで、デジタルマルチメータ(DMM)を実現することが可能です。 デジタルマルチメータ

上記のように、エプソンのマイコンはさまざまな用途で利用できるように、ラインナップを揃えております。詳細については、下記のPDF資料で詳しく解説しているので、マイコンは一体なにができるのか?をさらに学びたい方は、ぜひお気軽に資料請求してください。

資料名:エプソンのMCUが得意なこととできること一覧

この資料では、エプソンの MCU(マイコン)が得意なこと、できることをわかりやすくまとめています。MCU選びの際の参考にしていただけたらと思います。また各 MCU のデータシート、テクニカルマニュアル、サンプルプログラム、サンプルプログラムマニュアル、評価ボード資料のダウンロードもこの資料からできますので、気になる製品があれば、ぜひお気軽にダウンロードして活用ください。

エプソンのMCUが得意なこととできること一覧

エプソンのマイコンについて

エプソンのマイコン製品については、下記のコラムで詳しく解説しています。


エプソンの32bit・16bitマイコンの概要・特長

マイコンの各種ドライバの特長や概要

マイコンの動作クロック、消費電力、電源について

マイコンの入出力について

マイコンのタイマについて