2004
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シリーズ名:2004年全日本GT選手権(JGTC)
大会名:もてぎ GT チャンピオンレース
距離:4.801km×63周
予選:9月4日 曇り一時雨・観衆:1万7000人(主催者発表)
決勝:9月5日 雨のち曇り・観衆:5万1000人(  同  )
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EPSON NSXが待望の初優勝
2人のドライバーがアグレッシブな走りを見せて観客を魅了

スタートを担当したアンドレ・ロッテラー選手と、中嶋悟総監督以下、スタッフ全員がプラットフォームで待ち受ける中、最後まで、着実な中にもアグレッシブさを盛り込んだドライビングを続けてきた松田次生選手がストレートに戻ってくる。 そしてチェッカー。夢にまで見たEPSON NSXの初優勝が、ついに実現した。ここまでの苦労を吹き飛ばすような快勝劇に、2人のドライバーはもちろん、チームスタッフ全員の笑顔が弾けた…。

9月に入ると同時に猛暑・酷暑が一気に去っていき、少し過ごしやすくなった先週末、栃木県にあるツインリンクもてぎでは2004年全日本GT選手権(JGTC)のシリーズ第5戦が開催された。 関東圏では年に3?4回開催されいてたGT選手権だったが、今シーズンは富士スピードウェイが全面改修工事の真最中とあって、このもてぎでの1戦限り。関東圏でのGTバトルを待ち望んでいたファンが多く、生憎の天候となったにもかかわらず、日曜日だけで5万を超える大観衆が詰めかけた。 そんなファンの声援に後押しされたかのように、レースは史上希に観るドッグファイトの連続となり、雨模様の中、最後まで熱心に観戦を続けたファンには、記憶に残る1戦となった。

金曜日の公開練習では、走り始めとしてはまずまずの6番手につけることになる。タイム差も僅かだったし、何よりもマシンのバランスが良く、本番に向けての期待は更に高まっていった。 土曜日の公式予選では、午前のセッションで遅いマシンに引っ掛かりながらも6番手タイムをマーク。トップタイムと比べても、金曜日以上に差が詰まっていた。 だが、更に期待を高めて臨んだ午後のセッションでは、自己ベストは更新したものの、ライバルのタイムアップの方がより大きく、結果的に決勝レースでは8番手スタートとなった。 日曜日は朝から雨。前夜ほどの集中的な"豪雨"ではなかったものの、コースは完全にウェット。スタッフが、急遽レインセットに切り替えて臨んだ朝一番のフリー走行だったが、結果は上々の5番手。 だが、雨が小止みになっていくに連れ、決勝スタートに向けてどのタイヤを履くべきなのか、中嶋総監督を中心に、スタッフは頭を悩ませることになる。

決勝レース直前のウォームアップで最終確認し、チームは結局、浅ミゾのレイン、通称インターミディエートを選択、ロッテラー選手がマシンに乗り込んで、いよいよスタートとなった。 彼のスタートの巧さは誰もが認めるところとなっているが、今回もまた、オープニングラップのうちに8番手から5番手にポジションアップしてみせた。 その後も追撃の手を緩めなかったロッテラーは、前を行くブノワ・トレルイエ選手に襲い掛かかり、2周目のストレートではスリップストリームを使ってこれをパス。4番手にポジションを上げて1コーナーへと飛び込んでいった。 更に9周目には飯田章選手をパスしたロッテラー選手は、トップを逃げていたスープラがスピンで後退して2位に進出することになり、今度はディフェンディングチャンピオンの本山哲選手に襲い掛かる。 11周目の1コーナーで、本山選手のインに飛び込んだロッテラー選手だったが、流石に本山選手もチャンピオンの意地を見せて踏ん張り、3コーナーへのアプローチまでをサイドbyサイドのバトルで応酬する。 この超接近戦は、3コーナーに対してインを奪う格好になった本山選手が制することになるが、サーキットビジョンに映し出された迫真バトルに、スタンドのファンからは大きなどよめきが起こったほどだった。 だが、ロッテラー選手の猛プッシュは、これで終わりとはならなかった。12周目の裏ストレートで本山選手のテールに食らいつき、駆け下った先の90度コーナーへのアプローチでスパッとインに切り込み、あっさりとこれをパス。12周目のコントロールラインをトップで横切り、EPSON NSXは開幕戦TIに続き2度目のラップリーダーを奪取する。

トップに立ったロッテラー選手はなおも先を急ぐが、彼の後方からはジェームス・コートニー選手が、それを上回るペースで追い上げてきており、やがて2台は互いにベストラップを塗り替えながら、超接近戦のトップ争いを繰り広げることになる。 が、左リヤタイヤがスローパンクし、27周目にはコートニー選手の先行を許したロッテラー選手は、ピットと無線で交信しながら、ピットインのタイミングを見計らっていた。 ロッテラー選手は28周を終えたところでピットイン。待ち受けていた松田選手と交代する。次の周にはコートニー選手もピットインして若い片岡龍也選手と交代し、レース後半は、松田選手と片岡選手のバトルに注目が集まるところとなった。 予想通り、全車がピットインを終えた段階ではトップは片岡選手、2番手が松田選手で、3位以下とは大きな差が付いていた。

ここから松田選手の猛チャージが始まった。途中小雨がぱらつくこともあったが、この時点ではライン上は完全にドライ。ただしライン1本外すとまだまだウェット。そんな厳しいコンディションの中、遅いマシンを周回遅れとしながら先を急ぐ…。 ここでは松田選手の経験が大きくモノをいった。毎周のようにコンマ数秒ずつ間隔を詰めていった松田選手は、やがて片岡選手のテールに手が届くところまで近づいてきた。 コースコンディションのこともあって、不用意にラインを変えてパッシングに掛かるのは危険。それを充分に理解していた松田選手は、テールtoノーズで数ラップ周回した後、48周目のヘアピンで一気に勝負に出る。 手前のストレートでアウトから仕掛けていったように見せかけた松田選手は、アプローチに向けてラインを変え、立ち上がりで一気にこれをパスして見せる。まさに"技あり"のパッシングだった。 こうして再びトップに立った松田選手は、残り周回数をノーミスで回る。 大詰めに来て、片岡選手をパスした脇阪寿一選手とリチャード・ライアン選手が、それぞれ2番手と3番手に進出、なおも上位を窺っていたが、松田選手はいつものようなパーフェクトなドライビングでポジションをキープ、今季初となるトップチェッカーを受けた。