技術・イノベーション

製造技術

マイクロピエゾ製造技術

PrecisionCore に結集するエプソンの革新的製造技術

築き上げた技術が開く道筋

インクジェットプリントは、インク滴を紙などのメディアに直接飛ばして印刷します。インクを吐出する方式には、電圧により収縮するピエゾ素子を使ったピエゾ方式と、加熱によりインク内に気泡を発生させるサーマル方式があり、PrecisionCoreプリントヘッドはピエゾ方式を採用しています。

独立して制御された一つ一つのノズルから、正確にコントロールされたインクを1秒間に最大50,000回吐出するこのヘッドは、エプソンのインクジェットプリンターを支える超精密なコア部品です。ピエゾ方式はサーマル方式に比べ、インク吐出量や液滴サイズを精密に制御でき幅広いインクに対応できますが、その構造が複雑になるため、生産においても非常に高度な技術が求められます。

エプソンは20年以上にわたり培ってきたインクジェット技術とサブミクロン単位での超微細加工が可能なMEMS技術を融合させ、さらに自社の持つ産業用ロボットを駆使し、総投資額約400億円をかけ、高い品質と生産性を両立する完全自動生産ラインを日本国内に実現しているのです。

※Micro Electro Mechanical Systemsの略称で、機械要素部品、センサー、アクチュエーター、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化すること、または、その技術を用いて製造したデバイスの総称

エプソンにしか作れない

エプソンのPrecisionCoreプリントヘッドを他社で作ることは極めて困難です。

その理由は、ヘッドの心臓部となるマイクロTFPプリントチップ製造とヘッド組み立てに隠された、エプソンの持つ3つの革新的技術にあります。

  1. 薄膜ピエゾテクノロジー
  2. MEMS 技術
  3. 超高精度組み立て技術

マイクロTFPプリントチップの製造

マイクロTFPプリントチップは、長野県の諏訪南事業所で製造されています。3枚のシリコンチップ(①TFPアクチュエーター、②インクチャネル、③ノズルプレート)を貼り合わせて作られ、インクチャネルの流路に入ってきたインクを、TFPアクチュエーターがポンプの役割を果たしてノズルから吐出するのです。このTFPアクチュエーターの作成に、第1の革新的技術、薄膜ピエゾテクノロジーが、さらにすべてのチップ部品の作成に第2の革新的技術、MEMS技術が導入されています。

薄膜ピエゾ(Thin Film Piezo: TFP)テクノロジー

TFPアクチュエーターは、ピエゾ素子の膜をシリコン基板上に形成したものであり、電圧を加えることで収縮するピエゾ素子の動きによってインク流路に入ってくるインクをノズルプレートから押し出す動力源の役目を担っています。

薄膜ピエゾテクノロジーは、シリコンウエハー上に厚さ1 マイクロメートル(1/1000mm)のピエゾ素子の膜を均一に、かつ均質に形成する技術であり、独自の結晶化技術により、安定した配向性を持つ高品質なセラミック結晶を焼結形成できます。

この技術を用いて作られたTFPアクチュエーターは、結晶構造が均質なため収縮時の変位量の均一性が保たれ、またピエゾ素子の膜厚が薄いため収縮が大きくなり、強く精緻なインク吐出による高精度な印刷を可能にするのです。

なお、ピエゾ素子そのものの原料は自社で製造しており、原料の合成に使用している化学反応や合成装置もエプソンが独自に開発したものです。ピエゾ素子の要求性能に合った最適なピエゾ原料を使うことができることもエプソンの強みです。

業界レベルを超えるMEMS技術

エプソンのMEMS技術の強みは、3次元サブミクロンの高精度なフォトリソ積層技術です。通常、半導体製造においては平面加工寸法の要求精度は高いのですが、厚みに関しての精度はそれほど高くありません。業界汎用装置のばらつきは数%程度ですが、エプソンは、このばらつきを5分の1から10分の1に低く抑えています。

これは、通常の装置メーカーの保証値を超える業界トップクラスの精度であり、この技術が精巧なTFPアクチュエーター、インクチャネル、ノズルプレートの形成を可能にしています。これがピコリットル(ピコは1兆分の1)の精緻なインク吐出制御と高精度なインク着弾精度を支えています。

なお、感光樹脂で作成するサーマルヘッドのノズル長が数ミクロン程度であるのに対し、シリコンウエハーで作成するマイクロTFPプリントチップのノズルは、その10倍を超える長さを確保できるため、インクの着弾精度が各段に高くなっています。

超精密完全自動化組み立てライン

超高精度組み立て技術

PrecisionCoreプリントヘッドの組み立ては、国内の2拠点(東北エプソン秋田エプソン)にある完全自動の内製製造ラインで行われています。マイクロTFPプリントチップにドライバーICを載せたフィルム基板を接続し、インク流路構造を持つ部品やケースを組み合わせて作りますが、ここで生かされるのが第3の革新的技術、超高精度組み立て技術です。

時計の自動組み立てラインを起源とするロボットの内作技術が、超精密ロボティックス技術へと進化を遂げ、この自動化ラインを実現させたのです。

コストの優位性から、組み立て工程は海外の製造工場で行うことが多いのですが、完全に自動化されたこのラインは、オペレーターを最小限にすることができ、国内にありながら海外と同等以下の製造コストを実現しています。

また、オペレーターが少ないため異物の混入が無くなり、海外への輸送も行わないことから、チップのコンタミネーション(汚染)のリスクが無く安定した品質が得られます。

確かな品質を守るために

PrecisionCoreプリントヘッドに生かされている革新的技術は、マイクロTFPプリントチップの検査にも生きています。

完全自動の内製ヘッド組み立てラインを可能にした超精密ロボティクス技術と、液晶・プリンターで培った画像処理技術は、マイクロTFPプリントチップの高速自動検査装置を生みだし、チップ製造ラインの1)品質保証、2)不良層別による品質向上支援、3)省人化の体制を作り上げました。

また、PrecisionCoreプリントヘッドは全て国内で一貫生産され、品質や生産性を極限まで高めています。この品質管理を支えているのが、チップのウエハー加工工程をコントロールする完全社内開発の生産・品質管理および技術解析支援システムであり、プリンターの生産・品質管理システムと連携させることにより、プリンター完成品 ⇒ ヘッド ⇒ チップ(ウエハー)へのトレーサビリティーの保証と、一貫した品質・技術解析を行える体制を作り上げました。

自らの手で創り、作り、お客様の期待を超える

ピエゾ素子の内作からヘッドの組み立てに至るまで、エプソンは製造ラインまでも自社で作り上げてきました。
これらの技術をさらに成長、進化させ、PrecisionCoreテクノロジーのさらなる高精度化、高密度化を実現していきます。