産業用ロボット

導入事例 クラボウ(倉敷紡績株式会社)様

クラボウ
(倉敷紡績株式会社)様

たわみやねじれも正確に!
ケーブルに特化したビジョンセンサー

クラボウ(倉敷紡績株式会社)様

クラボウ(倉敷紡績株式会社)様

お客様インタビュー(前編)

繊維製品で有名なクラボウは2020年4月、3次元(D)ビジョンセンサー「KURASENSE(クラセンス)」を発売し、産業用ロボットの市場に参入した。一般的な3Dビジョンセンサーでは形状の認識が難しい各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードなどに特化しており、たわみやねじれ、曲がりも含めてケーブルの形状を瞬時に認識できる。
前編では、こうしたクラセンスの特徴や開発の経緯を詳しく紹介する。

自動化が進んでいない作業

クラボウが開発したクラセンスは各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードの形状の認識に特化した3Dビジョンセンサーだ。
3Dビジョンセンサーは、トレーやケースの中にばらばらに置かれた金属部品や樹脂部品の形状を認識するのに使われることが多い。金属部品や樹脂部品は形状が変わらない「定形物」だが、クラセンスが得意とする各種ケーブルや光ファイバーなどは「線状物」と呼ばれ、柔らかく形状が一定ではない。たわんだり、ねじれたり、曲がったりするため、一般的な3Dビジョンセンサーでは正確に認識できず、今までロボットでハンドリングするのが困難だった。
開発を担当した環境メカトロニクス事業部技術開発部商品開発課の北井基善課長補佐は「ケーブルの配線作業は人なら簡単にできるがロボットには難しく、自動化がほとんど進んでいないのが現状」と説明する。

輪郭形状をベクトルで表現

ケーブルの輪郭の形状を認識する「Kurasense-C100」

ケーブルの輪郭の形状を認識する「Kurasense-C100」

クラセンスの最大の特徴は、ケーブルなどのたわみやねじれ、曲がり具合を高速で、そして正確に認識するスキャン技術だ。
一般的な3Dビジョンセンサーは物体の全体の形状を膨大な点群の集まりとして認識し、あらかじめ用意した3DCAD(設計用ソフトウエア)データと照らし合わせる「パターンマッチング」と呼ばれる方式を採用することが多い。
「数万から数千万にも上る点群データの中からCADデータに合う形状を探す必要があり、計算量が膨大になる」と北井課長補佐は語る。

これに対し、クラセンスは0.1mmの間隔で並んだ点と点を結び、ケーブルの輪郭の形状だけをベクトル(大きさと方向を持った量)で表現する「線分ベクトル認識」という手法を取った。点の一つ一つが座標になっており、つかむ位置をクラセンスが座標値として算出し、ロボットに指示する仕組みだ。
輪郭の形状だけなので、全体の形状を点群で表現するパターンマッチング方式と比べ、データの処理速度を大幅に向上できる。そのため、たわみやねじれも含めたケーブルの形状を瞬時にスキャンできる。北井課長補佐は「ケーブルに特化したからこそ、高速処理が実現できた」と胸を張る。
高速スキャンの技術により、ケーブルの形状を「見たままに」認識できるため、パターンマッチング方式とは違って事前に3DCADデータを用意する必要もない。
また、カラーセンサーも搭載しており、ケーブルの色も見分けられる。複数の色のケーブルの中から、特定の色のケーブルを識別してつかむことも可能だ。

クラセンス認識のしくみ

クラセンス認識のしくみ
パターンマッチングが不要な独自の「線分ベクトル認識」方式(クラボウ様提供)

きっかけはタオル

北井基善 課長補佐

「ロボットでタオルをつかむのは非常に難しいと分かった」と話す
北井基善 課長補佐

同社は繊維製品で広く知られるが、ウレタンをはじめとした化成品に加え、染料の色を識別するカラーマッチングシステム、基板やシートなどの外観検査装置、写真の3D計測装置など、多岐にわたる事業を展開する。
では、ロボット用の3Dビジョンセンサーを開発した理由は何か?
そもそものきっかけはある顧客からの「タオルを検査装置まで運ぶのにロボットを使えないか」との相談だった。
「最初は簡単につかめると思ったが、タオルのような柔軟物を認識するビジョンセンサーがなく、ロボットでタオルをつかむのは非常に難しいと分かった」と北井課長補佐は述べる。

柔軟物をつかむ作業を自動化できれば、新たな市場ニーズを開拓できる。

初期に開発したTシャツを畳むロボットシステム

初期に開発したTシャツを畳むロボットシステム
(クラボウ様提供)

そう考えた同社は、外観検査装置の事業で培った画像処理技術や3D計測技術を生かし、柔軟物を認識する3Dビジョンセンサーの開発に2016年度から着手した。柔軟物と一口に言ってもケーブルやシート、リネン(シーツや布団カバー、枕カバー、浴衣、タオルなど)、食品と多岐にわたる。
当初はTシャツを畳むロボットシステムなども開発したが、ケーブル関係の相談が特に多かったことから、ケーブルに焦点を絞って3Dビジョンセンサーの開発を進めた。そして、2020年4月に満を持してクラセンスを発売した。

自動化システムにして提供

クラセンスの主なターゲット市場は、自動車や電子デバイスの組み立て工程など。従来は人手でやっていた、各種ケーブルやコネクターの挿入作業の自動化を提案していく。
同社はクラセンスを単品で販売するのではなく、ロボットなども含めた自動化システムの形にして顧客に提供する考えだ。システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)として、システム一式を請け負う。
今後は、各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードなどのさまざまな線状物に対応したロボットシステムの開発に取り組む。それに当たり、ロボットメーカーとのパイプの強化が重要な課題の一つに挙げられるが、北井課長補佐は「メーカーごとに得意な領域は違う。顧客の業種やつかむ対象物に合わせたロボットシステムを提案できるよう、さまざまなメーカーと付き合いたい」と話す。

クラセンスとエプソンの小型ロボット、力覚センサーなどを組み合わせた自動化システム

クラセンスとエプソンの小型ロボット、力覚センサーなどを組み合わせた自動化システム

その第一弾として、クラセンスの特徴を生かした「フラットケーブル高速挿入ロボットシステム」をセイコーエプソンと協力して開発。2020年10月19日から受注を開始した。
クラセンスとエプソンの小型ロボット、力覚センサーなどを組み合わせたシステムで、複数の細いケーブルを平面上に束ねたフラットケーブルの挿入作業を自動化する。
後編では、エプソン側の開発担当者の話も交えながら、システムの特徴を詳しく解説する。両社の出会いの場は2019年に開催された「2019国際ロボット展」で、北井課長補佐は「お互いの技術を補完できそう、と直感的に思った」と当時を振り返る。

お客様インタビュー(後編)

クラボウは2020年4月、ケーブルなどの形状認識に特化した3次元(D)ビジョンセンサー「KURASENSE(クラセンス)」を発売した。
後編では、クラセンスを活用した具体的な自動化システムの事例として、セイコーエプソンと協力して開発した「フラットケーブル高速挿入ロボットシステム」を取り上げる。エプソンの開発担当者の話も交えながら、システムの特徴や両社の出会いのきっかけなどを紹介する。

エプソンと協力して開発

クラボウが2020年4月に発売したクラセンスは、一般的な3Dビジョンセンサーでは形状の認識が難しい各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードに力を発揮する。
ケーブルはたわんだり、ねじれたり、曲がったりして形状が一定ではないが、高速スキャン技術を特徴に持つクラセンスならケーブルの形状を瞬時に、そして正確に認識でき、つかむ位置を的確にロボットに指示できる。
同社はクラセンスを単品で販売するのではなく、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のようにロボットなども含めた自動化システムの形にして顧客に提供する。
その自動化システムの具体例の一つが、セイコーエプソンと協力して開発したフラットケーブル高速挿入ロボットシステムだ。2020年10月19日から受注を開始した。
クラセンスとエプソンの小型ロボット、力覚センサーなどで構成され、従来は人手でしていたフラットケーブルの挿入作業を自動化する。フラットケーブルとは細いケーブルを平面上に束ねたもので、家電製品や電子機器などに使われる。
まずはクラセンスでフラットケーブルの形状を認識し、その情報を基にロボットがフラットケーブルをつかんでコネクターに挿入する。エプソンの力覚センサーで微妙な力加減を調整しながら、フラットケーブルを正確にコネクターに差し込む。
システムの販売価格は2,000万円(税別)から。2024年度に年間10億円の売り上げを目指す。

フラットケーブル高速挿入ロボットの構成

フラットケーブル高速挿入ロボットの構成(クラボウ様提供)

お互いの技術を補完

北井基善 課長補佐

クラボウ
北井基善 課長補佐

両社が出会ったのは、2019年に開催された「2019国際ロボット展」(iREX2019)。セイコーエプソンはもとより、クラボウもクラセンスのニーズ調査のためにiREX2019に出展した。
小間ではフラットケーブルの挿入システムもPRしたが、環境メカトロニクス事業部技術開発部商品開発課の北井基善課長補佐は「フラットケーブルの挿入作業では『つかむ』と『差し込む』の2つがポイント。クラセンスを使って『つかむ』の部分には対応できたが、わが社の技術だけでは『差し込む』の部分がうまくできなかった」と明かす。
こうした課題意識を持ちながらiREX2019の会場を回り、エプソンの小間にも立ち寄った。そこで目にしたのは、ロボットがフラットケーブルをつかんでコネクターに挿入するデモだった。実はエプソンも、コア技術である力覚センサーの具体的な活用事例の一つとして、2Dビジョンセンサーを使った挿入システムを展示していたのだ。
「『差し込む』の部分に独自の力覚センサーを使っていると分かった。お互いの技術を補完できそう、と直感的に思った」と北井課長補佐は語る。

一方、エプソンもフラットケーブルの挿入作業の自動化に関し、課題意識を持っていた。
同社はこれまで、自動化が難しい領域に挑戦することで新たな市場を切り開き、競合他社との差別化を図ってきた。現状は人手でしているケーブルの挿入作業を自動化できれば大きなビジネスチャンスになると見込んで技術開発に取り組んだが、「わが社には2Dビジョンセンサーしかなく、『つかむ』の部分で困っていた」とロボティクスソリューションズ事業部RSエンジニアリング部の小林誠課長は振り返る。「クラセンスを見て『これだ』と思った。初めて見た時の驚きが今も鮮明に残っている」とも話す。

また、エプソン販売で代理店向けの営業を担当するFA営業部FA技術課の安田光一も「クラセンスと自社製品を組み合わせれば、良い自動化ソリューションになると確信した。営業的な目線で見ても、わが社の技術が表に出る機会が増えると感じた」と説明する。

セイコーエプソン小林誠

セイコーエプソン
小林誠

エプソン販売安田光一

エプソン販売
安田光一

セイコーエプソン上田淳也

セイコーエプソン
上田淳也

実用的な生産設備を

ケーブル高速挿入ロボットシステム

約9カ月で開発したフラット
ケーブル高速挿入ロボットシステム

それぞれの要素技術を補完し合えると判断した両社は、iREX2019の会期中に打ち合わせを進めた。クラボウ側は北井課長補佐が、エプソン側は小林と上田がそれぞれ中心となり、フラットケーブル高速挿入ロボットシステムの開発を始めた。
上田は「クラセンスがケーブルを認識し、つかむ位置の座標値をロボットに指示する必要があるので、まずはロボットの座標軸とクラセンスの座標軸を合わせるキャリブレーションの作業に力を注いだ。初めは座標軸が合わず、ロボットが変な方向に動くこともあった」と述べる。
試行錯誤を重ね、約9カ月の開発期間を経てシステムの完成にこぎ着けた。

北井基善 課長補佐とセイコーエプソン上田

開発を担当したクラボウの北井課長補佐(左)と
セイコーエプソン 上田

クラボウの北井課長補佐は「これまで多くのデモシステムを製作してきたが、あくまでデモ。実際の現場のことをほとんど知らなかったが、ロボットメーカーで電子部品メーカーでもあるエプソンから、実用的な生産設備を作る上でのノウハウを助言してもらえたのは大きな収穫」と手応えを語る。
セイコーエプソンの小林も「わが社には生産設備を開発する部署があり、ロボットもビジョンセンサーも実際に使用している。ユーザーとしての立場からもクラボウに助言し、システムの完成度を高めた」と言う。
エプソンは現在、自社製のロボットを社内で活用して自動化を推進する取り組みに力を入れている。上田は「クラセンスの強みを生かせる工程も中にはあるので、今後はクラセンスの技術情報を社内で共有したい」と話す。

役職は取材当時となります。

クラボウ(倉敷紡績株式会社)

会社概要

クラボウ(倉敷紡績株式会社)

クラボウ(倉敷紡績株式会社)

1888年(明治21年)創業。繊維、化成品、エレクトロニクス、エンジニアリング、バイオメディカルなどモノづくりを行う事業展開のほか、食品・サービス事業など5つの領域で事業を展開。エレクトロニクス事業は、繊維の染料などの調合作業を自動化したカラーマッチングシステム(CCM)の製品化から始まり、ここで培ったソフトウェア技術と色のセンシング技術のもと、現在では「情報処理」「検査・計測」の分野で幅広い産業を支えています。

1888年(明治21年)創業。繊維、化成品、エレクトロニクス、エンジニアリング、バイオメディカルなどモノづくりを行う事業展開のほか、食品・サービス事業など5つの領域で事業を展開。エレクトロニクス事業は、繊維の染料などの調合作業を自動化したカラーマッチングシステム(CCM)の製品化から始まり、ここで培ったソフトウェア技術と色のセンシング技術のもと、現在では「情報処理」「検査・計測」の分野で幅広い産業を支えています。

導入事例PDFダウンロード

導入事例は、PDFでもご覧いただけます。

PDFダウンロード

(約2.46MB)

Get Acrobat Reader

PDFファイルをご覧いただく為には、Adobe® Reader®が必要です。
左のアイコンをクリックして、ダウンロードいただけます。

(注):Adobe、Reader、Get Adobe Readerロゴは、Adobe Inc.の登録商標または商標です。

製品に関するお問い合わせ・資料請求

エプソン販売株式会社
エプソンロボットに関するお問い合わせ(エプソン販売株式会社 FA営業部)