身近なオフィス改革から持続可能な社会の実現を目指す

協創を通じて自社のできることを広げる
身近なオフィス改革から
持続可能な社会の実現を目指す

SDGsへの先進的な取り組みを続ける三浦工業と、紙の再生機PaperLabを開発して環境配慮型オフィスを提案するエプソングループが協創を通じて循環型社会の実現を目指している。2019年11月7日、北九州市環境ミュージアムにて開催された「小さな紙の再生工場によるSDGsへの挑戦」と題した北九州SDGsフォーラムに登壇したのが三浦工業の福島広司氏とセイコーエプソンの市川和弘氏だ。このお二人に、SDGsの目標実現に対する現在の取り組みの内容や課題、将来への展望などについて伺った。

フォーラムには地元の企業から多くの参加者がつめかけ、会場は熱気に包まれた
市川 和弘氏

お客様と共に知恵を絞り
持続可能社会の実現に貢献する

セイコーエプソン株式会社
執行役員・技術開発本部副本部長
市川 和弘氏

プリンターのリーディングカンパニーであるエプソンにとって、紙は欠かせない存在だ。だが、その生産において、木材伐採、水の大量使用など、環境負荷が高いのも事実である。「とはいえ、視認性、可読性、携帯性を兼ね備えた紙は、不可欠なコミュニケーションツールです。それならば、印刷された紙の最後まで責任を持ち、紙を心おきなく使っていただくことが私たちの責務と考えました」と市川氏は語る。そんな課題に対する一つの答えがPaperLabの開発だった。

「ドライファイバーテクノロジーによって、通常の紙の製造に対し水の使用量は100分の1、CO²排出量も工程全体で26%削減でき(注1)、「第1回エコプロアワード」経済産業大臣賞を受賞するなど環境保全に貢献できるという評価を頂いております」(市川氏)

同社が目指しているのは、PaperLabと同社の省エネタイプの高速ラインインクジェット複合機を組み合わせた環境配慮型オフィスだ。紙を循環させることで、環境負荷が限りなく小さいオフィスが実現できる。

単なる紙の再生だけでなく、色紙、厚紙など、付加価値を付けて再生できるのも、PaperLabの大きなポイントだ。

「お客様と共に知恵を絞り、PaperLabを使った新しい可能性について考えています。今後は、もっと多くの人が使えるようにしていきたい」と市川氏。エプソンは、協創を通じた持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいる。
(注1)2019年3月エプソン調べ。

エプソンの
提供価値
  • 印刷コスト・環境負荷を大幅に低減した、紙ならではの豊かなコミュニケーションの実現
  • オフィス内で実現する新たな紙循環サイクルで森林資源と水資源の保全に寄与
  • 紙文書を繊維まで分解し、情報を完全抹消
福島 広司氏

社員の腹落ち感を訴求
協創により「+i」を広げていく

三浦工業株式会社
管理本部常勤特別顧問
福島 広司氏

2019年に創立60周年を迎えた三浦工業は、新たなインナーブランディングの推進を図っている。

「SDGsやCSRを単なるお題目にするのではなく、社員の一人ひとりの腹に落としていくこと、つまり具体的な行動として示すべきだと考えたのです」と福島氏。「そのひらめきに、愛はあるか。」というキャンペーンをさらに進めて、社員一人ひとりができることを、もう一歩踏み込んで考える「ひとり、ひとりの+i」を展開している。

PaperLabを導入したのもその延長線上にある。環境管理部がCO²削減効果、経済効果などを試算した結果、かなりのメリットがあると判断したためだ。興味深いのは、この導入が障がい者雇用にも効果があった点である。同社では2017年に特例子会社を設立しているが、再生紙の品質向上のため使用済み用紙の仕分けを追加したところ、正確に粘り強く作業を繰り返す点が障がい者の能力にマッチした。「何かを生み出しているという点にやりがいを感じたのでしょう。責任感も芽生えました」と福島氏は喜ぶ。

そして、ただ単に紙から紙を作るだけではなく、「+i」の発想で、CSR報告書、ノート、名刺の作成のほか、環境教育に活用する卓上プラネタリウム、SDGsの意識向上を図るかるたなどを制作した。
「こうした活動によって社内の一体感が増しました。今後はさらにインナーブランディングを推進することで、社内をより活性化し、新しい人材も入れていきたいと考えています」と福島氏は語る。三浦工業の挑戦はまだまだ続く。

PaperLabを中心にした紙のリサイクル図。
手元で紙の再生ができるため、輸送にかかるCO2が削減できるほか、創造性を生かした用紙作成が可能になる

環境配慮型オフィスの第一歩/
PaperLabと高速ラインインクジェット複合機

セミナー会場にはPaperLab A-8000が展示され、参加者は、使用済みの紙を入れて再生用紙を再生する様子を体験することができた。参加者の関心は非常に高く、具体的な質問が数多く飛んだ

機密情報の漏洩問題にも対応可能な
PaperLab

PaperLabの最大の特長は、水をほとんど使わず(注2)に紙が再生できることにある。水の給排水の設備も不要なので環境負荷に加えて設置の負荷が極めて小さい。エプソンが目指す省エネの高速ラインインクジェット複合機と組み合わせれば環境配慮型オフィスへと近づける。

また、機密情報保護にも大きな効果がある。「最近ではシュレッダーで裁断しても情報を復元される恐れがありますが、PaperLabでは繊維の状態にまでほぐすので情報は一切残りません」(市川氏)。手元で再生できるため、機密情報を社外に出す必要がないのもメリットである。

  • (注2)機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。

本コンテンツは「日経ESG 2020年2月号」に掲載した内容を日経BPの許諾を得て掲載しています。禁無断転載