セミナーレポート

NEW PHOTO FORUM 7th セミナーレポート

岡嶋和幸セミナー

自分流で楽しむブレない作品づくり

第2回:作品表現の幅が広がる「用紙選び」と「撮影」のポイント

自身の作品づくりにも精力的に活動しているプロ写真家岡嶋和幸氏による「自分流で楽しむブレない作品づくり」。
今回のテーマは「用紙選び」と「撮影」です。まずは「用紙選び」について、お話しいただきました。

「撮影より先に、なぜ用紙を選ぶのか?」
僕は子供の頃から絵を描くのが好きでした。それでふと絵って考えたときに、紙が決まらないと描けないなあと思ったんです。そして写真もプリントで見せるというのは、絵と一緒だな。だから用紙は、撮影や画像処理などよりも先に決めるべきじゃないかなって。
昔は僕もプリント前に用紙選びをしていたんですが、そうするとアレコレ迷って収拾がつかなくて…。このやり方に変えてから用紙選びも迷わなくなりました。自分の作品のテーマが「水」なので、温度や湿度が感じてもらえるような用紙、光沢紙や半光沢紙、マット紙などから主に選んでいます。

岡嶋氏によると、用紙は単なる素材ではなく、撮影機材と同じように作品づくりに欠かせないアイテムだといいます。
では、実際の作品づくりの過程ではどのように用紙を選んでいるのでしょうか?
アイルランドと、ミャンマーで撮ったそれぞれの作品をもとに、具体的にお話しいただきました。

写真 アイルランドの作品

これは、アイルランドで撮影した作品です。アイルランドという土地は、天気がころころ変わるんです。雨が降ったり止んだりして、光も柔らかい。雨が降った後は光が集まって、晴れていないのに緑がすごく鮮やかにみえる。晴れている時とは違う鮮やかさです。このような雨の日の湿度・温度感をプリントで表現したくなってくるんです。それで水彩画みたいに、彩度を落として、ぬくもりのあるような画像処理を施し、どんよりとした曇り空に合うよう用紙は「UltraSmooth Fine Art Paper」という光沢を抑えたマット系を選びました。

写真 ミャンマーの作品

一方こちらの写真はミャンマーで撮影した「学校へ行こう!」という作品です。学校が水の上にあるんです。東南アジアなので同じ「水」をテーマにしていても、 アイルランドの作品とは光の感じが違います。服装も鮮やかなんです。このときは超光沢の印画紙を使い、コントラストと彩度を強く表現しました。やっぱりマット系だとアジアのビビッドな色合いが伝わらないので、この場合は光沢紙を選びました。

用紙選びのコツは、まずはいろいろな用紙で試してみることだそうです。さまざまな種類の用紙を使ってみて、それぞれの用紙の特徴を知ること。そうすれば、 作品表現の幅がぐっと広がります。
さて次は、いよいよ「撮影」です。
“シャッター速度”と“絞り”における押さえるべきポイントを、教えていただきました。

写真 映像 ミャンマーの作品(教室内の子供の写真)左:静止 右:動きのある写真

“シャッター速度”については、左の写真を見てください。この時は、被写体が止まっているので手ブレしないレベルでのシャッター速度に設定して撮影しています。逆に右の写真は被写体の一部が動いていますから動きのあるところがブレてきます。
こういった静止した写真の中で、一部ブレがあることで、写真に動きができたりします。

例えばスポーツシーンなどでは、決定的瞬間を止めて撮るときもあれば、流し撮りの手法などで動きを出すほうがいいときもあります。
動きがある被写体では、ただ全体をシャープに写し込めるのではなく、ブラすことによって写真の動きの表現になったりします。

シャッター速度を調整することで、ブレを大きくしたり、小さくしたりすることができるので、どのぐらいのブレが、動きを感じるかどうか自分の中で決めておくことです。

写真 映f像 アイルランドの作品(羊の写真)

“絞り”については、たとえばこの写真、前方にある羊にピンと合わせて、後方をボカすことで奥行きを出しています。これは絵画の世界にある、遠くのものほどかすんで見えるという「空気遠近法」という手法をヒントに、遠くをボカして遠近感を表現しています。もし全体的にピントを合わせると、後方までシャープに写ってしまって遠近感が表現できませんよね。
このように“絞り”はボカしを表現する際に、よく使います。この場合は、少し後方の部分がボケるような絞りを選んでいます。

ここでちょっと質問なんですが、みなさん被写体深度の調整は、“絞り”だけ合わせていませんか?
そうやっている方がけっこう多いんですよね。
それよりもまずレンズ選びや撮影距離を決めることが大切です。あとピントの位置もです。
レンズの焦点距離、どの距離から撮るか、どこにピントをあわせるかが決まってはじめて、絞りが設定できます。だから“レンズ”、“撮影距離”、“ピント位置”をまずは調整して、その後で“絞り”を合わせるようにしてください。

あともうひとつ、“絞り”の際に覚えておいてほしいのが「回折現象」です。
一般に絞れば絞るほどシャープに写ると言われていますが、デジタルカメラでは、ある数値を境にそれが逆転します。絞り込みすぎると、シャープにならずにボケてしまう。これを「回折現象」といいます。
具体的には、絞り値F11ぐらいから少しずつ甘くなりますね。コントラストとシャープネスが低下していくんです。F22になると、ちょっとぼやっとした感じに写ります。
僕の場合は、プログラムAEで撮影することが多いです。これだと基本的にF10より絞り込まれることはありません。すごく明るい環境ならそれ以上に絞り込んだりしますが、それ以外は絞り込まない。だから安心して撮影できます。便利ですので、ぜひやってみてください。

“シャッター速度”や“絞り”はみなさんにとってはとても身近な内容でしたので、より理解が深まったのではないでしょうか。次は、岡嶋氏の作品づくりのワークフローの終盤、「セレクト」と「画像加工」「プリント」についてご紹介いたします。