セミナーレポート

NEW PHOTO FORUM 7th セミナーレポート

岡嶋和幸セミナー

自分流で楽しむブレない作品づくり

第1回:自分の作品を自身のコトバで語る

自由気ままに写真を撮るのも楽しいですが、テーマに沿った撮影は、それとは違った写真の醍醐味が得られます。このセミナーでは「自分流で楽しむブレない作品づくり」を学んでいきます。

講師は、プロ写真家の岡嶋和幸氏。広告や雑誌などの写真を撮影するかたわら、世界を旅して詩情豊かな作品を発表し続けている岡嶋氏に、私たちにも取り組める「自分流写真」のつくり方をお話いただきました。第1回はブレないための作品づくりにおける「テーマ決め」についてです。

まず僕のワークフローをご紹介します。僕は作品をこんなプロセスでつくっていきます。

まず最初にテーマを決め、次に用紙を決め、機材を選んで、撮影をしてセレクト。そして画像処理して、プリント。僕にとって作品は、プリントにして初めて完成なんです。
パソコンやモニターで見えているのは作品じゃなくて、それはあくまで画像。なので、この「テーマ決め」から「プリント」までのすべての過程が、「僕の作品づくり」となります。

この中で、最初におこなうのが「テーマ決め」です。

「テーマ決め」というよりも、キーワード(言葉)を決めるといったほうがわかりやすいですね。これから撮ろうとする作品を言葉にして、作品の方向性を決めます。
そして次に用紙を選びます。ふつうは撮影を行って、写真をセレクトして、画像処理。用紙を選んで、プリントして初めて、テーマとかタイトルを何にしようかなって考える。それが僕の場合は逆なんです。昔は、一般的なワークフローでやっていたんですが、そうするとやっぱりブレちゃうんです。なので、作品がブレないために、最初にキーワードを決めます。

僕はひとつの被写体や場所をずっと撮り続けていくのが苦手で、つねに新しいものやさまざまなものを撮りたいと思って撮影しています。そのなかで共通のテーマとして「水」というのがあります。自分の中で「水」というキーワードがあるだけで、水を意識した撮影や画像加工、被写体探しができるので、表現としてもひとつにまとまります。

「テーマ」を言葉(キーワード)にすることが、ブレない作品づくりの出発点。
しかし「テーマを決める」と言っても、実行するとなると難しいそうです。
そもそも、どうやってテーマを探せばいいのでしょうか?

「テーマ」というと、とても難しく考えがちですが、まずは身近な事や物をもとに、手繰り寄せてくればいいんです。これまでの自分が撮った写真を振り返ってみたり、今興味があること、今後撮ってみたいものなどから共通点や連想する言葉を思い浮かべてみてください。単語などひと言で簡潔に表すことができないのであれば、文章や詩でもいい。短歌や俳句も面白い…ことわざなどを引用するのもありだと思います。

これは3年前に発表したアイルランドの南西部にディングル半島という場所で撮った作品です。

テーマは「水」なのですが、そこからもう少し掘り下げて「ノスタルジア」というキーワードでつくりました。この言葉があれば、画像加工でもそういう作品に仕上げていきますから、作品としてまったくブレないですね。

これは、「学校へ行こう!」というタイトルの作品で、ミャンマーで撮影しました。

インレー湖という湖の上で生活している人たちと、そこの子供たち。特に学校を取材しました。
昭和初期とか、戦中、戦後の日本の学校のような雰囲気、そういう思いを込めて作品にしていきました。このときのテーマは、「古き良き時代の学校と子供たち」というものです。

「テーマ」を見つけたら、次はそれを土台にして、作品をつくりこんでいきます。そうすることでテーマやコンセプトに沿って一貫した作品が広がっていくようです。 さらに作品の完成度を高めていくためには大切なポイントがあります。それは「他人の意見に耳を傾ける」こと。

写真の見方、感じ方は人によってさまざま。そうした意見がテーマやコンセプトづくりのヒントになったり、あるいは自分では気づいていなかったこと、 うまく言葉にできていなかったことを引き出してくれたり…。役に立つことがたくさんあると思います。
また、撮り進めていくうちに迷いが生じたり、ブレを感じ始めたりしたら、途中経過を誰かに見てもらうのもいいでしょう。
なかには共感してもらえて、最初に決めたテーマが間違いではなかったと、自信にもつながります。

「自分の作品を自身のコトバで語る」には、自分の作品や作品づくりに対して、つねに客観的な視点や判断を持てるようになること。
写真を撮るには、技術と同じくらい写真を「見る力」が必要だということが、このセミナーで再認識させられました。写真って、ほんとに奥が深いですね。