セミナーレポート

NEW PHOTO FORUM 2013 セミナーレポート

吉田繁セミナー

想いをプリントに -コンセプトをもった作品プリントを仕上げる-

第3章:まずは用紙の特性を知ろう

吉田繁氏による「想いをプリントに -コンセプトをもった作品プリントを仕上げる-」
作品づくりで第一に重要なのは、用紙を知ることです。用紙がどのような特性を持っているか把握することで、それに応じたデータ調整が可能となります。第3章では特性を把握するための方法を紹介します。

ではここで、プリント作品をつくる上で不可欠な用紙について話を移そうと思います。まずはお聞きしたいことがあります。普段はどんな用紙にプリントされていますか?やはり光沢紙が多いでしょうか?また、何の用紙を使っているか分からない方もいらっしゃるかもしれません。用紙の種類は沢山あり、毎回銘柄を気にされていない方も多いかと思います。

現在、日本の写真シーンでは光沢紙を目にすることが非常に多いです。しかし、視点を海外に移すと、面白いことに光沢紙を見ることはほとんどありません。そのほとんどはマットのアート紙が主流です。どうして光沢紙は少ないのかというと、あの光沢感はもともと自然界にはない、いわば不自然ともいえる質感です。なので、部屋の中に飾っておくと主張が強くて疲れてしまうそうです。
最近はアート紙と呼ばれる紙にも沢山の種類が登場し、半光沢紙や光沢紙もあります。また、用紙の素材もバライタや漆喰などさまざまです。こうした用紙は、すべて質感や風合いが異なるだけでしょうか?答えはNOです。用紙はそれぞれに表現できる特性が異なります。これを把握することで写真作品はワンランク上の完成度に到達することができます。それでは用紙の特性について解説していきましょう。

用紙の特性を知るには、濃度をあらわすグラフをみれば一目瞭然です。まず、このグラフの見方を解説しますが、これは真っ黒(L=0)から真っ白(L=100)までのデータを10段階にわけて同じ用紙にプリントし、実際にプリントされたものを測定してグラフ化したものです。

このグラフを見ますと、真っ黒(L=0)のデータをプリントした部分は、実際にはL=20ほどになってしまいました。中間のグレーの部分はL=50、真っ白のデータ(L=100)はL=95ほどになって表現されることをあらわしています。つまり、実際は濃度領域が0~100あったものが、この用紙でプリントすると20~95の領域しか表現されず、濃度領域が75と狭くなっていることなります。つまり、この紙はコントラストが低い用紙ということが分かる・・・というふうに読みます。

ではこれを使って光沢紙、マット紙、和紙を比較してみましょう。まず光沢紙ですが、この用紙はハイライトからシャドウまでをコントラストが高い状態で表現できますし、彩度のある被写体も得意です。だいたいモニターで見た印象に近いものが表現可能です。グラフを見ますと、黒がL=5くらいで白がL=95くらいになっています。濃度領域は90程度と、かなり高いことがわかります。データをそのまま表現することが出来る用紙といっていいでしょう。そして、グラフの線がほとんど一直線になっている点にも注目です。これはデータが一定量暗くなったり明るくなった場合、それに伴ってプリントもリニアに濃度が推移していくことがわかります。すなわち非常に扱いやすい用紙といえるでしょう。

一方マット紙はというと、黒がL=20という数値を出しています。これはシャドウ部分が潰れがちになるということが分かります。また、マット紙はディープシャドウ部分が、曲線を描くというのが特徴です。ですので、濃度領域は光沢紙よりも狭く、結果としてコントラストの少ない柔らかい表現をする用紙ということが分かります。また、和紙は黒のデータがL=30程度、先ほどのマット紙よりもさらに濃度領域が狭くなります。こうして比較してみますと用紙によって濃度の領域におおきな違いがでることが分かります。
では、マット紙や和紙は駄目な紙なのかといいますと、そういうわけではありません。光沢紙に比べてコントラストが狭くなりますので、それをふまえてデータづくりをしないといけませんよということです。そのため、プリントする用紙に対してデータをつくっていく必要があります。現在はアート紙の人気が出てきています。多様な種類のアート紙の中から自分の作品にあった風合いのものを選ぶことは作品づくりの一環になってきています。20枚の作品をまとめるのは難しいという方も、こうした用紙を選んで1枚でも作品を完成させていただきたいと思います。

同じ写真でも、それぞれのスタンスによって紙選びや仕上げ方がおおきく変わっていくのがお分かりになるでしょうか?このように1枚でも紙から選んで仕上げていきますと、自分の本質を垣間みることが出来るかと思います。オリジナリティに必要な「破」「離」のきっかけをつかんでいただけると嬉しいです。

SAMURAI FOTO(Japan Fine Art Print CLUB)

吉田氏が顧問を務める写真団体。
世界のアート市場で活躍できる人材を育成することを目的に設立されたクラブ。
自らの手で明確なコンセプトに基づいて撮影しプリントしたシリーズ作品をつくり続ける活動を実施している。