セミナーレポート

NEW PHOTO FORUM 2013 セミナーレポート

吉田繁セミナー

想いをプリントに -コンセプトをもった作品プリントを仕上げる-

第1章:いい写真をつくるための守破離

いい作品をつくるとは一体どういうことか?何が自分の作品なのか?
作品づくりをする上で誰もが一度は突き当たるであろう疑問を、写真家吉田繁氏が解説します。氏は広告・PR誌・雑誌などで撮影をするかたわら1990年頃から巨樹を中心に自然を対象にした作品制作を展開。近年、海外のギャラリー向けにオリジナルプリントの販売をすすめています。第1章は自分の作品をつくる上でのひとつの方法「アーティストステートメント」を紹介します。

僕はここ数年、作品発表の場を海外に移して、海外のギャラリーに作品を売るようになりました。今回のセミナーは作品を売り込む場で僕が経験してきたことを中心に、作品をつくるにあたって大事なことをいくつかご紹介したいと思います。
私たちは普段「写真が上達する」とか「いい写真」という言葉を耳にすることがあります。では、「写真が上手くなる」とはどういうことでしょうか?また、「いい写真」ってどんなものでしょう?改めて考えてみると難しいですよね。一言では説明できないと思います。僕がギャラリストを相手に作品をレビューして気がついたことは、「いい写真」とは自分の思想や解釈が表明されたもの、「写真が上手い」とはその解釈が紙の上にしっかりと表現されていること、ということです。日本には「守破離」という言葉があります。もともとは武道で生まれた言葉ですが、いい写真を仕上げていくには、この言葉がぴったりなんじゃないかと僕は思います。

「守」というのは型を覚えるということです。これはフレーミングやピントなど、写真の基礎を覚えることにあたります。写真展や写真集を見たり、昨今では「GANREF」に代表される、写真を投稿してお互い見ることが出来るSNSサイトなど、人の作品を見て、その表現方法を学ぶことが第1ステップと言っていいかと思います。

そして基礎を身につけた人が次に進むのは「破」と「離」のステップです。今までに撮った写真のパターンや表現方法を乗り越えて自分独自の物の見方を完成させるということです。先ほどの「守」で人が撮った写真を参考にすることは、あくまでも人の美学を踏襲することで、自分の美学ではありません。つまり厳密にいうと自分の作品とは言えないものです。
例えば富士山の写真を撮る場合、ダイヤモンド富士が何月何日に見ることができるとなると、みんな一斉に三脚を並べて撮ったりします。当然撮ってらっしゃる写真は皆ほとんど同じ仕上がりになるんじゃないかと思います。もちろん撮影が楽しいというのは結構ですが、その人の独自の美学ということになるとどうでしょう?なかなか差がつきにくいかもしれません。そして何故そこに三脚が一斉に並んでいたのでしょう?それは既に表現として確立しているものをなぞっているからです。当然綺麗な写真にはなりますが、独自性、斬新性はありません。つまり「破」や「離」ではないのです。

では一体どうしたらいいのでしょう?ここで僕が提案するのは、アーティストステートメントという道具です。これはいわば自己紹介であり、自分の作品づくりにおける所信表明ともいえる文章です。海外のギャラリーで自分の写真を見てもらう時、まずはこのアーティストステートメントを読んでもらうことから始まります。海外では国籍や人種、宗教がそれぞれ違いますので、共通の認識や価値観は持っていません。
そこでまずは作品を見る前に、作者が何者でどういった作品を作っているのかを簡単にまとめた文章が必要となるのです。そしてプレゼンテーション中にも必ず相手は「あなたはどこから来た何者なのか」ということを聞いてきます。テクニックや被写体というのはその次の段階なんですね。すなわち「破」や「離」の段階にステップアップするためには、自分の中身を把握することなのです。そして漠然と頭で考えているのではなく、「ステートメント」という型にしてやることが大事だと思います。私は海外に売り込みには行かないから・・・という人にもお勧めします。だいたい400文字程度が一般的ですが、いざまとめようとすると結構難しいです。是非挑戦してほしいと思います。