セミナーレポート

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根本タケシセミナー

記録メディアから、想いを解き放とう!根本流プリントテクニック

第3章:根本流プリントテクニック

根本流オリジナルプリントの第3章のテクニックは、用紙のインク受容層に保持できる量を見計らい、数回にわたってプリントを行い、被写体の深みを表現します。ここでは、具体的な作業方法とアート紙の取扱いについて解説します。

第1プリント

では、自分だけのプリントはどうやってつくっているでしょう?私は根本流と命名しております。あくまで私の作品づくりの中での話で、自己責任でやる方法です。当然、メーカーさんも推奨していません(笑)。ただ、この方法でプリントをしますと、モニターで見るデータ以上の色の深み、階調表現を作り出すことができます。
まず、このプリントを見てください。画面の中にグレーがぼんやりプリントされていますね。なんのことだと思われるかもしれません。実はこれ、この作品を仕上げる前段階のプリント(1回目のプリント)なのです。

先ほども申し上げましたが、この作品に写っている永平寺の屋根は、銅板葺きです。したがって、晴れている日に撮影しますと、どうしても屋根だけが明るくなって扁平に仕上がってしまい、寺の持つ雰囲気や歴史を表現できませんでした。せっかくの屋根に立体感がでてこないのです。そこで、まずはAdobe® Photoshop®上でレイヤーをつくり、ブラシツールで屋根の部分にグレーのムラを描き込みます。ここでのポイントは、ブラシの先端を「ソフト円ブラシ」にすること。できれば「ペンタブレット」で<筆圧感知>を使う事です。そうしませんとブラシの跡がはっきりついてしまい、わざとらしい仕上がりになってしまいます。境界線のことはそれほど気にせず、おおよそでやっています。ブラシのグレーですが、この場合はモノクロ作品のハイライトを抑える目的でグレーにしています。この場合は、わずかに飛びが抑えられる程度ということで一番薄いところを、R=250 G=250 B=250程度のニュートラルな薄いグレーにしました。こうしてブラシで屋根の飛びを抑え、立体感の元となる<ムラ>が出来ましたら、この状態で一度プリントします。それが前段階のプリントとなるわけです。

第2プリント

次に、この用紙を再びセットして今度は写真をプリントします。いわゆる2度刷り状態になるわけですが、こうすることで屋根のトーンや立体感を自分ならではの感覚で調整することができます。では、なぜブラシで描いたレイヤーと写真を一度にプリントせずに2回に分ける必要があるのでしょう?それは、インクジェットプリンタがプリントする際、その用紙に適切なインクの量を「最低限」使用してプリントしようとするからです。つまり、用紙がもつインクを受け止められる許容量いっぱいにプリントしているわけではないのですね。ですので、この2度刷りを行うことで1度刷りでは表現できなかった濃度や色彩を表現できるようになります。現在、私は5回プリントして作品を仕上げるなんていうこともやっています。私が知る限り、エプソンのプリンターのすごいところは、給紙の精度が非常に優れ、何回もプリントしても想定外のズレが生じないところです。

ただし、この方法は注意が必要です。それは紙によってインクを受け止める許容量に差があることです。許容範囲を越えるとインクは溢れてしまいます。吉田繁先生のセミナーでも取り上げられていましたアート紙と呼ばれる用紙ですと、だいたい許容量は多めです。

そして、このようなアート紙でプリントする際の注意点を付け加えさせてもらいます。それは、プリントする際に必ず<紙粉>をとるということです。用紙は製造の段階で裁断されたり束ねられたりします。その時に出てくる細かい紙の繊維が紙粉と呼ばれるものです。これはマット紙や和紙など表面に凹凸がある用紙ほど残りやすく、知らず知らずのうちに紙粉が乗った状態でプリントしてしまうことがあります。紙粉が残っている状態でプリントすると、どうなるでしょう?インクは紙粉の上に乗りますので、あとで紙粉が落ちた時に写真に穴があいたように、プリントされていない部分ができてしまいます。これを<ピンホール>と呼んだりしますが、これではせっかくの作品も台無しです。また、プリンター故障の原因にもなります。プリント前に用紙の表面を刷毛で払い、確実に紙粉をとってください。

展示作品

最後に、デジタル写真をワークフローで追ってみると、
<撮影の準備をする>→<撮影する>→<モニターで鑑賞する>→<セレクトする>→<用紙を選択する>→<画像調整/処理する>→<プリントする>→<飾る、プレゼントする>
等のポイントがあります。このポイントはどれも重要で、どれも楽しみになります。自分自身を顧みて、どこかかけたポイントはないでしょうか?もしかしたら、そのかけているポイントこそ、最も楽しいものかもしれません。
私たちの写真生活がもっと素敵なものになるように、もう一度自分のワークフローを見直してはいかがでしょうか。

(注):Adobe、Photoshopは、Adobe System Incorporatedの登録商標、または商標です。