セミナーレポート

NEW PHOTO FORUM 2012 セミナーレポート

岡嶋和幸×松平光弘セミナー

写真家が語る 写真展までの作品制作

第2回:写真家とプリンターがひとつのものを作るために大切なのは光を共有すること

写真家岡嶋和幸氏、プリンティングディレクター松平光弘氏による「写真展までの作品制作」。
今回のテーマは「写真家とプリンターが共有するもの」についてです。

■岡嶋
まずはじめに、僕と松平さんは写真家とプリンターという関係です。エプソンが出しているのもプリンターと同じ名前ですが、正確には松平さんの場合はプリンティングディレクターです。
海外とかではプリンターっていうと日本より確立していますよね?

■松平
そうですね。アメリカではプリントメーカーというような名称で呼ばれていたりします。

■岡嶋
では実際に何をする人かというと、おおまかにはフィルムの現像やプリントをするラボ(現像所)のデジタル版のような役割をしてくれる人です。 デジタルデータを仕上げる人といえばレタッチャーと呼ばれる人もたくさんいますが、彼らはどちらかというと印刷物をターゲットにしていることが多いです。
でも松平さんの場合はオリジナルプリントをつくる人で、暗室経験のあるレタッチャーという感じです。
デジタル写真は便利で、それこそラボを使わずに自分でプリントまで仕上げることが出来ます。
しかし撮影から仕上げまで全部ひとりでやっていると、どうしても客観的に見ることができなくなってくる側面もあります。
ですので知らず知らずの間に不自然な仕上がりにしていることもたまにあるのです。
そんなわけで僕なんかは一度プリントしたものを一晩おいて、少し客観的に見ることができるようになったら改めて見直すということをやっています。
しかしそんな方法でプリントできるのはやはり少ない枚数の写真を仕上げる時だけです。

写真展のようにたくさんの写真の場合、それらを全て客観的に見るのはきわめて困難ですし時間も掛かります。 そこで松平さんにお願いするわけです。
そして松平さんに依頼する時はデータをそのままプリントしてもらうこともできますが、それ+αみたいなレタッチを行ってもらい、作品のテーマをより明確にしたり伝わりやすくしてくれます。
これによって自分が思いもよらなかった発見につながっていく・・・これがプリンターの本当の実力です。

ここから写真家とプリンターが仕事をする行程を解説していきます。 僕が松平さんとやりとりをする際に一番よく話をしたのは「撮影した時の光」についてでした。どういった光、どういった気温、湿度だったかといったものを話して僕の撮影した時の雰囲気を共有したのです。
光ってフィルムの時は非常に意識していましたが、デジタルになって解像技術が上がるにつれ反比例するかのようにその意識が鈍ってきている様に思います。
まずは撮影時の光を再認識する作業から作品づくりはスタートしました。

■松平
そうですね。やれコントラストを上げてくれとか、トーンカーブをいじってくれとかではないんですね。

■岡嶋
松平さんとはそういう話はしませんでした。撮影とプリントをどう繋ぐかというと、それはやはり光ですね。
ここに写っている波がどうこうではなく、ここを照らしている光がどうだったのかということをやり取りしながら仕上げてもらったわけです。
作品づくりに大事なのはこうした光、それはすなわちテーマを言葉にすることです。光からはじまって撮影、画像処理、発表と作品制作はひとつなぎの作業です。
それが一貫していてはじめて完成だと思いますが、言葉にしていないと途中でブレてしまい、
結果的につじつまの合わない作品になってしまいます。ですのでプリントをする時はどんな意識で撮ったかが大事になってきます。
そして次に大事なのは用紙と写真展に展示するときのサイズでした。
以前は撮影をしてセレクトして、最後プリントをする時に用紙を決めていましたが、最近僕はテーマが決まった時点で用紙を決めます。
それは用紙の種類と大きさを変えることで写真から伝わるものは変わってきます。自分は何を、この写真をどのように見てもらいたいか、どう感じてほしいかということを考えて紙を選びました。
具体的には、九十九里の海は海外と違い、湿度もありますし磯の匂いを強く感じます。その辺を伝えられたらとイメージしました。
そのイメージを基準とすると、マット系の用紙では少しドライな感じになってしまいます。そこで今回は写真用紙光沢で見せていくことにしました。

■松平
用紙のサイズこそ違いますが、普段みなさんもお使いになっているごく一般的な用紙です。ちょっとこれで本気を出して作品づくりをしようということでした。

■岡嶋
一番苦労したのは大きく伸ばした時にいかに撮影データの調子を出していくかということでしたね。

■松平
そうです。大きさが変わるとやはり見え方や調子が変化します。そこを調整しながら大きく伸ばすというのがポイントでした。