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 繁盛店のヒントとコラム

競争に勝ち抜く飲食店のポイントとは?(全3回)
【第3回】店舗の「価値向上」のためにテクノロジーで演出力アップ、「心」を伝える!

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2019.12.13

 「ホットペッパーグルメ外食総研」エヴァンジェリスト、株式会社ケイノーツ代表取締役の竹田クニさんに、これからの飲食店が自店の価値を高め、生き残るために、テクノロジーを用いてどのような新しい工夫が可能かを伺いました。竹田さんが分類する飲食店の5つの価値である「メニュー(調理・提供方法)」「食材」「ストーリー」「空間」「接客」に沿ってお話を聞いていきます。

外食(飲食店)の価値とは?
-テクノロジー活用の例
「メニュー(調理・提供方法)」「食材」「ストーリー」

 メニューブックに、肉や魚の産地、生産者のこだわり、日本酒・ワインでいえば味の傾向分類や醸造元に関する情報、調理や仕込みの工程のこだわりを載せるなど取り組みをされている店は多いと思います。こうした情報を、タブレットやプロジェクターを使って写真や動画で見せたり、メニューに盛り込んだりすることは効果的でしょう。セルフオーダー端末の店であれば楽しみながらオーダーしてもらえるコンテンツ化も業態によっては考えられます。
 「ただし、飲食店は人の温もりが大事な面も少なくないので、デザインされたキレイなカードや和紙のような素材感を生かした紙に手書きのメッセージを入れるなど、テクノロジーを活用しつつも、その店がもつ雰囲気やあたたかさを大切にしてほしい」とは、竹田さんからのアドバイスです。

「空間」

 「会社の宴会が多い店であれば、プロジェクターや音響設備に凝るのもいい。プロジェクションマッピングで、魚介メニューを出すときには店内を海中のように見せるなどのエンターテインメント的な演出をしている事例もあります」と竹田さん。また、プリンターを用いて、ランチョンマットに「○○様、本日はご来店いただきありがとうございます」というようにメッセージを載せるといった取り組みをしている店も少なくありませんが、これも前述同様、人の温もりとの加減の見極めが大事ですね。

「接客」

 「接客技術そのものにテクノロジーを活かせることは多くはないものの、顧客情報をいかに把握するかという部分で大いに工夫の余地がある」とのこと。例えば、POSレジとWeb予約の連携は「リピート回数や注文履歴、来店目的など、中小規模の店でも顧客情報を確実に蓄積できるようになったのは大きな飛躍」と竹田さんは言います。注文履歴から、「この料理を頼んだ人はこのドリンクを頼んでいる」といった併売傾向のデータマイニングも可能。「この一皿にはこちらのお酒が人気です」と提案するなどはアップセル効果も高いと思います。

-初期リピーターの把握が重要

 一般的に常連となる顧客は初回来店客総数の5%以下。「顧客が離脱するのが多いのは来店2~3回目。5回くらい来店してくれると自然とスタッフも顔を覚えるものですが、せっかくリピートしてくれた2~3回目でリピーターだと顔でわかるのはなかなか難しい。ネット予約で来店履歴がわかれば、スタッフが再来店のお礼など対応することができ、お客様にとっては『顔を覚えてくれていた!』という好印象になります。顧客がグッときて常連化する可能性を高めることができるのでは?」と竹田さん。常連になってくれたら、常連客限定のクリスマスカードを送るなどの販促活動もできますね。

-テクノロジーで付加価値を高め、生産性を向上させる

 「このようにテクノロジーは、何かを効率化、合理化するだけでなく、人でなければできない付加価値の向上のために使われるべき。そしてその付加価値にふさわしい「対価」をいただけるようになることが重要なのです」と竹田さん。
 したがって、「テクノロジーは生産性向上のための手段であって、自店らしい付加価値を生み出す活動に積極的に活用することが重要だ」というのが竹田さんの考えです。

テクノロジーで付加価値を高め、生産性を向上させる

 最後に、社会のグローバル化とボーダーレスな大競争時代に突入する今、競争に勝ち残る飲食店となるためには、今後何が必要となるのでしょうか。
 「消費者(市場)も、働く側も多様化が進む中、自店を他と差別化するためのマーケティング思考がこれまで以上に重要となります。テクノロジーを積極的に活用して付加価値を高め、生産性を高めることは、CS(顧客満足)、ES(従業員満足)の向上、そして投資力を高めることにつながる。そういう好循環を生み出していただきたい」と、竹田さんは強調します。
 テクノロジーを活用することで、従業員は人にしかできない仕事に全力を注げる。それが自店の価値を高め、競争を生き抜く店になるポイントなのですね。

竹田クニさん
■プロフィール
竹田クニ(たけだくに)さん
1963年生まれ。「ホットペッパーグルメ外食総研」エヴァンジェリスト、株式会社ケイノーツ代表取締役、日本フードサービス学会会員、一般社団法人 日本フードビジネスコンサルタント協会 専務理事、早稲田大学校友会 料飲稲門会 常任理事。マーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演、官庁自治体への政策提言活動など行うほか、外食、中食、給食を結ぶB to Bマッチングも手掛けている。

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