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 繁盛店のヒントとコラム

「ゴーストレストラン」業態でのコスト削減

スタートアップの強い味方に

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2021.03.22
「6curry」の立ち上げメンバーで店舗統括マネ―ジャーの新井一平(あらいいっぺい)氏、ブランドデザイナーのYOPPY(ヨッピー)氏

 テイクアウトやデリバリー対応を行う飲食店が増え、徐々に消費者の生活にも浸透しつつある昨今。店舗を持たずに電話やインターネットで注文を受け付け、料理を配達する「ゴーストレストラン」という新形態も増加傾向にあるようです。「6curry」はケータリング・デリバリー専門店という形で経営を行っていた「ゴーストレストラン」の先駆け的カレー店。今回は「6curry」の立ち上げメンバーで店舗統括マネ―ジャーの新井一平(あらいいっぺい)氏、ブランドデザイナーのYOPPY(ヨッピー)氏に、実店舗を2店舗展開する成長の礎となった「ゴーストレストラン」業態のコストメリットや気を付けるべきポイントを伺いました。

ミニマムの初期投資で開業まで約4ヶ月

YOPPY氏「開業のきっかけはFacebook上でカレー好きな仲間たちで集まって、何か面白いことをやってみようと話していたところからでした。美味しいカレーを開発したから、みんなにも食べてもらいたい。でも、店を構えるには初期投資がたくさんかかるということで、既存のレストランのキッチンを昼間の期間だけ間借りして、デリバリー専業で営業を開始しました」
新井氏「デリバリーサービスの開業まで、準備期間は約4ヶ月ほどでしたね。スピーディーに行動できたのは、ゴーストレストランという形態だったからだと思います。キッチンや冷蔵庫などは間借りしているレストランの設備を借りて、小さく始められるという利点は、スピーディーに始めたい私たちにはぴったりでした。また、実店舗と比べると、家賃も1/6くらいに抑えられました。実店舗ほどスタッフ数は必要ないため、人件費も低く抑えることができたのも大きかったですね。2畳くらいのキッチンがあれば料理はできるし、デリバリーの範囲も今では3キロから5キロくらいまで届けられるようになっているので、一等地である必要もなく、初期費用を抑えて飲食業を始められるゴーストレストランという業態にはメリットがありますよね。」

「ただし、間借りしているレストランと事前にルール決めをしておくことは、ゴーストレストラン運営で重要なポイントだと思います。食材の冷蔵スペースの配分や、備え付けの調理設備だけで運営に対応できるのかなど、実際に営業開始してみないと分からない部分も出てくるからです。一方で、設備を一括購入せずに運営しながら改善、必要に応じた追加投資が可能な点は、間借りのメリットでしょう。」

「6curry」が実店舗の開業とゴーストレストランの開業における初期投資額を比較すると、大きな開きがあったといいます。(図①参照)実店舗開業の場合、店舗リサーチから賃貸契約、内装デザイン、キッチン設備工事まで入れると概ね2000万円程度かかったところ、「ゴーストレストラン」の開業では、既存の店舗・設備を利用するため、初期投資は数十万まで抑えられていました。事前に提供する料理ジャンルと設備の相性を見極める時間は大切ですが、営業開始までの工数も少なくて済むため、商品開発や運営オペレーションの作成といった準備の時間を捻出しやすいことも特徴といえます。コロナ禍などで、先の見通しを立てにくい状況においても、スモールスタートが可能な「ゴーストレストラン」業態は親和性の高い業態といえるでしょう。

初期投資におけるメリット

ゴーストレストランに潜む想定外のランニングコスト

初期投資におけるコストメリットが大きい「ゴーストレストラン」ですが、ランニングコスト圧縮による利益拡大も最大の魅力の一つです。「6curry」の実店舗運営とゴーストレストラン運営を比較してみました。(図②参照)実店舗では、売上に占める経費割合として、人件費や食材費が25~30%ほど。雑費や家賃が10~15%ほどかかっています。しかし、「ゴーストレストラン」は家賃を大幅に削減できる他、接客(ホール)が必要ないため、人件費や賃料を大幅に下げられるのです。そんな「ゴーストレストラン」のメリットを余すことなく享受できたという「6curry」ですが、運営の中で新たなコストの課題は発生していました。

売り上げに占める経費割合

YOPPY氏「実店舗がないからこそ、お客様に商品やブランドを知ってもらう機会が少ないことが課題の一つでした。お客様には“6curryで注文した”という商品のバリューを感じてもらうため、テイクアウト用のカップにロゴを印刷したシールを一枚一枚手貼りし、配達時の紙袋にはロゴやデザインを印刷してオリジナリティを少しでも感じてもらえるように意識しました。最初のうちは社内プリンターで印刷する発想がなく、全て外注で印刷していたため、気づけば印刷コストは相当な額面になっていましたね」

新井氏「やりたいことがいろいろあって、日々、実験しながら営業している私たちなので、スタイルもどんどん変わるし、1ヶ月後には違うメニューやサービスが生まれる可能性もあるんですよね。コロナ禍だと営業時間も変わる可能性がありますし、お店ができてから2年たった今でも細かい情報の変更が発生するので、制作物も大量に作ってしまうとリスクがあって。そういう意味でも、少数のロットでさっと印刷できる社内プリンターは欠かせません」
「さらに、ランニングコストとして注意しておきたいことは、人件費は抑えられてもデリバリーのプラットフォームに支払う手数料が発生するので、利益が逼迫しがちな点です。」

新井氏「さらに、ランニングコストとして注意しておきたいことは、人件費は抑えられてもデリバリーのプラットフォームに支払う手数料が発生するので、利益が逼迫しがちな点です。幸いにも私たちはUber Eats専属デリバリー店として銘打ったことで宣伝効果もあり、プラットフォーム上で苦戦を強いられることは少なく、商品研究に情熱を注ぐことができたと感じています。」

 必要以上の人件費やアプリ手数料の圧縮は現実的に難しいところ。「ゴーストレストラン」は、すでに圧縮されたコストで運営する業態だからこそ、ランニングコストとして含まれる印刷費などの見落としがちなコストをさらに低く抑えられれば利益にも直結します。価格競争も激しいデリバリー商戦において、プロモーションや商品力を強化することも、事業をスケールアップしていく要となりそうです。

お客様の輪を広げるため、クリエイティブを強化

カップカレー

ゴーストレストラン時代、野菜たっぷりでヘルシーなカップカレーを開発。

チキンカレー

「6curry」で人気のチキンカレー。

 今では実店舗を持ち、スタッフの数も増え、活動も多岐にわたる「6curry」。日中だけ営業する「ゴーストレストラン」時代があったからこそ、店舗オペレーションに追われすぎず、新商品開発や新たなビジネスコンセプトの創出が可能だったといいます。実店舗ではメンバーの1日店長企画や「6curry」名物カレーバトルなど、関わる人たちからさまざまなMIXが生まれる企画を開催。今後は、仲間同士で得意なことを学び、深め合う場をつくる計画もあるそうです。近隣の人たちにも気軽にカレーを食べに来てもらえる場として、ローカルコミュニティにも輪を広げていきたいとのこと。そんな常に進化を続ける「6curry」では、「ゴーストレストラン」時代に続き、実店舗を運営する今でも印刷の重要性はさらに高まってきているそうです。

YOPPY氏「ゴーストレストランの時には、お客様にデリバリーで商品が届いた際、このお店かわいいなと思ってもらい、また頼んでもらう購買動機の醸成にデザインの力を発揮してきました。現在、実店舗ではメニュー表や冊子、ランチョンマット、レトルトカレーのパッケージなど多数の印刷物を手掛けていますが、多様な展開を迎える「6curry」を“ブランド”にしていくために、今後もデザインの力、印刷物の重要性は上がっていくと考えています。」

新井氏「今後は近隣の人たちに知ってもらうために、これまで手掛けてこなかった看板やチラシのポスティングなども増えていくと思います。また、これからも店舗を増やし、それぞれの店舗ごとに個性豊かなコミュニティをつくっていく事業を展開していこうと考えていますので、宣伝に係る制作物・印刷物の労力や重要度は、さらに上がっていのではないでしょうか。社内プリンター活用の頻度も上がると思いますし、印刷費のランニングコストを抑える工夫は今後も大切ですね。」

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商品情報は
こちら

公式ホームページ:https://6curry.com/

公式Twitter:https://twitter.com/6curry_com

公式 Instagram:https://www.instagram.com/6curry/

【店舗紹介】
忙しい女性が仕事をしながらも気軽に食べられるカップカレーが、見た目のスタイリッシュさも相まってSNS上で話題に。「ゴーストレストラン」事業が成長軌道にのり、その後、「カレーをきっかけに人と人がつながる場をつくりたい」との思いから会員制のコミュニティキッチンというスタイルを構築。現在は、恵比寿と渋谷に「6curryKITCHEN」という店舗を持ち、カレーを介して、人々が様々なMIXを生み出す活動をメンバーとともに行っている。渋谷店は会員でなくても気軽にランチを食べられるようにするなど、これからの進化も楽しみな注目のお店。

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