エプソン独自のインクジェット技術、「マイクロピエゾテクノロジー」の工業分野への応用事例をご紹介します。
2003年、イタリアのアパレル業界は、シルクなどの生地にも美しい印刷ができるエプソンのインクジェット技術を、ファッションの世界に持ち込みました。これまで生地サンプルの印刷程度でしか利用されていなかったインクジェットプリントを、本格的な捺染印刷機に採用したのです。高級ブランド品のプリントも手がけるイタリアのコモ地域で、エプソンのインクジェット技術が、最新ファッションを発信し始めています。

液晶ディスプレイのカラー表示には、カラーフィルターが必要不可欠です。エプソンでは、過去10年以上にわたって、色の三原色であるRGBをインクジェット技術で正確に塗り分ける技術開発を進めてきました。
そして2006年、エプソンは第8世代の大型液晶基板に対応したカラーフィルター用インクジェット装置を開発、実用化に成功しました。従来と比べ大幅なコストダウンと優れた色特性を実現。また、廃棄される材料を大幅に削減できることにより、環境にも配慮した次世代の製造技術として注目されています。

エプソンでは、液晶プロジェクター用の液晶パネル製造に、インクジェット技術を使用しています。これは、インクジェット技術を工業分野へ応用した世界初の実用化例です。液晶パネルには、液晶分子群を一定方向に配列させるための薄い膜「配向膜」が必要です。この配向膜の形成には、従来ローラーを使って薄く伸ばすフレキソ法が用いられてきましたが、エプソンのインクジェット技術を使うことで、非接触で均一な配向膜を製造できようになりました。これにより画質の向上だけでなく、使用材料の効率化、製造時間の短縮、廃液をほとんど排出しないというクリーンな製造プロセス※を実現しました。
※配向膜形成の製造方式を変更した当社事業所では、従来方式に比べて、CO2排出量を約80%削減しました。

2004年5月、エプソンは、インクジェット技術を応用し、世界で初めて大型(対角40インチ)フルカラー有機ELディスプレイのプロトタイプ開発に成功しました。自発光する有機材料を用いる有機ELディスプレイは、薄型軽量・低消費電力で、高コントラスト・広視野角・高速応答性など視認性に優れた次世代ディスプレイです。
技術的な課題から大型化は難しいと考えられていましたが、エプソンは、大型基板に、有機材料をインクジェット技術で一括塗布するプロセスを開発することで、フルカラー有機ELテレビが将来実現可能であることを証明しました。

インクジェット技術により基板に有機層を一括形成
(イメージ)
2009年5月、エプソンは、大型有機ELテレビの実現に向けた、インクジェット方式による有機材料の均一成膜技術を確立したことを発表しました。当技術の確立により、従来、インクジェット方式による大型有機ELテレビの製造において課題となっていた塗布ムラを解消でき、37型フルHD 以上の大型有機ELテレビの実現に向けて大きく前進しました。

均一成膜技術を証明した試作有機ELディスプレイ
2004年11月、エプソンは、独自のインクジェット技術を応用して、世界初となる20層の積層回路基板の開発に成功しました。わずか数ナノから数10ナノメートルの銀微粒子を液体中に分散させたインクと、絶縁体インクとをインクジェット技術を用いて交互にパターニング・積層することができたのです。
インクジェット技術は、従来のフォトリソグラフィを用いたプロセスと比較して、必要な部分のみに描画することができるため、材料使用量が圧倒的に少なく、廃液がほとんど排出されません。また工程数が少ないためエネルギー消費量も少なく、地球環境への負荷が少ないクリーンな製造プロセスといえます。

2006年4月、エプソンはJSR株式会社と共同で、インクジェット技術で液体材料を基板上に塗布しシリコン膜パターンを形成し、液晶ディスプレイの画素をコントロールする薄膜トランジスター(TFT)を試作することに成功しました。
液体材料から高品質なシリコン膜とTFTを形成できることを実証した論文が、英国の科学雑誌「ネイチャー」に掲載されました。

エプソンは、インクジェット技術を応用し、薄膜トランジスター(TFT)を、有機材料を用いて製造する研究開発を進めています。これまで、TFTの半導体層や絶縁体層を作るためには、大型の真空装置や多くの材料、電力が必要でした。エプソンでは、プラスチック上に、有機材料をインク化したものをインクジェット技術で塗布することで半導体層を形成、さらには同様のプロセスで絶縁体層も形成し、有機TFTの試作に成功しました。この技術によって、巨大な装置が不要になり、使用材料や電力を低減できると期待されています。
有機薄膜トランジスターの製造(イメージ)
2003年、エプソンはインクジェット技術を応用し、マイクロレンズの試作に成功しました。紫外線をあてると硬化するUV硬化樹脂を、3.5pl(ピコリットル:1兆分の1)ずつ数回にわけ吐出し、表面張力を利用してレンズの成形に成功しました。オフィスのLANなど短距離で大容量の光通信向け面発光レーザーへの応用も可能です。

レンズの形成(イメージ)