技術・イノベーション

人と技術

腕で測る!高精度脈拍計測技術

2014年11月掲載

脈を測れる活動量計

2014年10月に日本国内で発表したアクティビティートラッカー(活動量計)「PULSENSE」シリーズ、GPSスポーツモニター 「WristableGPS SF-810B/V」は、約20年にわたりエプソンが培い進化させてきた独自の脈拍計測技術を採用しています。手首に機器を装着するだけの手軽さで高精度に計測できることが一つの特徴です。

エプソンが企業の健康保険組合向けに提供している、脂肪の燃焼効率を高め、メタボの改善を運動・食事の両面から支援する「生活習慣改善プログラム」にも、この技術が活用されています。

Engineer Interview

人の役に立つもの、生活を変えるようなものを創り出したい

センシングシステム事業部
S企画設計部 脈拍計測技術開発担当者

※ 組織名は2014年11月時点のものです。

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脈拍計測のしくみ

微小な光量変化をモニタリング

脈拍計測には、光を吸収するというヘモグロビンの性質を利用しています。緑色のLED光を皮膚内の血管に照射し、ヘモグロビンに吸収されずに反射してきた光を脈拍センサーの受光素子で捉え、その光量の微小な変化をモニタリングすることにより脈拍を計測します。

受光素子は光を受けると電気が流れる性質があり、そのアナログ信号をデジタル信号に変換することによって、脈拍として計測しているのです。

リスト型機器の脈拍計測はこの原理を応用しているものがほとんどで、エプソンもそれは同じですが、国内の自社工場で製造する独自の受光素子をはじめとしたセンシング技術によって、高精度かつ低消費電力での脈拍計測を実現しています。

脈拍計測は血中のヘモグロビン量の変化を測定することで行う。

(注)本サービスは、YouTube™のサービスを使って提供いたします。
(注)YouTubeは、Google Inc.の商標です。

半導体技術と光学技術の融合が生んだ独自の光学フィルター

受光素子への不要な入射光をカット

計測精度を高めるために、反射LED光をとらえる受光素子上に、「角度制限フィルター」と「多層薄膜フィルター」の2種類の独自光学フィルターを搭載しています。受光素子に入射してくる光は、脈拍計測のためのLED光だけではありません。屋外であれば太陽光、屋内であれば照明光、また肌の表面や外装からも脈拍計測には関係の無いLED反射光が入ってきますが、こうした計測に不要な外乱光などの入射光をこれらのフィルターで除去します。

角度制限フィルターと多層薄膜フィルターにより効率的で正確な脈拍計測を実現。

「角度制限フィルター」は、高度な半導体技術によって、受光素子上に微細なMEMS構造として形成しています。これにより、肌の表面や外装からの脈拍計測には関係の無いLED反射光をカットしています。また、さらには角度制限フィルター上に、数十層もの「多層薄膜フィルター」を形成しています。これにより、太陽光のような強烈な光を由来とする外乱光ノイズを遮断し、正確な脈拍計測を実現しているのです。

これらのフィルターは、エプソンが長年培ってきた半導体技術と光学技術を融合させることではじめて実現することができたもので、高精度な脈拍計測を実現するために欠かせない要素となっています。

太陽光などの侵入を防ぐためには機器を大型化して装着面積を増やすことも有効ですが、それでは装着性が犠牲になってしまいます。
エプソンではこのような技術によって、機器を大型化することなく高精度な脈拍計測を実現しています。

さらに、この高精度計測技術によって緑色LEDの光量を低減することが可能なため、低消費電力にも貢献し、機器の長時間使用にもつながっています。

二つの受光素子を搭載したダブルセンサー構造

また、GPSスポーツモニター 「SF-810B/V」では、ランニングなどの激しい運動時でもさらに精度の高い脈拍計測を実現するために、メインセンサーとセカンドセンサーの二つの受光素子を搭載したダブルセンサー構造としています。

WristableGPSのダブルセンサー。LEDが発した光を皮膚内の血管に照射し、反射光を2つの受光素子(写真中央の紫色の長方形部分)で捉える。

体動ノイズを除去するアルゴリズム

脈拍計測精度を高めるために、機器に搭載した加速度センサーも利用しています。 腕の振りなどによって機器が揺れると、LED反射光が拡散して体動ノイズとなり、脈拍計測の邪魔になってしまいますが、体の動きを加速度センサーで計測してこのような体動ノイズを除去するアルゴリズムを組み込んでいます。

高精度な脈拍計測と装着感の良さを両立

またその他、機器の装着状態を安定させるためのメカ構造やリストバンドなどのさまざまな工夫によって計測精度を高めながら、腕に着けた際の装着感の良さも追求しています。

エプソンは、この脈拍計測技術をバイタル(生体)センシングのキーテクノロジーとして、スポーツ、健康、医療の分野で世の中に新しい価値をもたらせるよう技術開発に努めていきます。