技術・イノベーション

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エプソンのコア技術を結集!
スマートグラス「MOVERIO BT-200」

2014年11月掲載

最大の特長 「両眼シースルー」

スマートグラス「MOVERIO BT-200」

2014年6月に発売したスマートグラス「MOVERIO BT-200」 は、両眼シースルーが最大の特長のウエアラブル機器です。前モデル「BT-100」と比較して、ヘッドセット部(メガネのように顔へ装着する部分)の重さは88gと約3分の1となり、小型・軽量化することができました。カメラ、ジャイロ、加速度、地磁気などの各種センサー、GPS機能などを搭載しています。さらに、両手が使える利便性とさまざまなアプリケーションによって現実の光景に重なって現れる大画面の拡張現実(AR:Augmented Reality)映像により、人々の生活を変える可能性を秘めています。また、OSにはAndroid™ 4.0を採用しており、外部のデベロッパーがアプリケーション開発に参加していただけるよう、開発環境を提供しています。

Engineer Interview

感動を共有できるコミュニケーションツールに

ビジュアルプロダクツ事業部
HMD事業推進部 スマートグラス「MOVERIO」開発担当者

※ 組織名は2014年11月時点のものです。

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エプソンのコア技術を結集!

「MOVERIO」にはエプソン独自のコア技術が結集されています。

世界シェアNo.1を15年間継続※1してきたエプソンの3LCD方式 プロジェクター。そこで長年培った光学設計・製造技術とHTPS(高温ポリシリコンTFT液晶)パネル『ULTIMICRON』に加え、新たに開発した曲面を多用した斬新な光学導光技術の融合で、映像そのものの美しさを損なうことなく、クリアな両眼シースルーと小型・軽量化を実現しました。

※1 2001年から2015年、500lm以上のプロジェクターにおいて(Futuresource Consulting Limited 調査)

「MOVERIO」の光学原理

LEDバックライトから出た光は、HTPSパネル『ULTIMICRON』 でフルカラー映像に変調され、プロジェクションレンズで画角(画面サイズ)などが整えられます。その映像光は導光板に入り、透過と反射を繰り返して目の前にあるハーフミラーによって最終的な映像として調整され、目に届きます。同時に、外界の景色をそのまま視認できるので、実視野に映像を重ね合わせることが可能になります(拡張現実:AR)。

前モデル「BT-100」の光学系

「BT-100」では、画角を確保するためにHTPSパネルそのものもサイズが大きく、プロジェクションレンズも径の大きいものを使っていました。さらに、導光板内部で映像光が反射する全ての面が平面のため光路が長くなり、光学系全体のサイズが大きくなっていました。

<BT-200とBT-100の光学部品の比較>

  BT-100 BT-200
導光板

約61g

約33g

プロジェクションレンズ

約15g

約4g

HTPS
パネル

0.52インチ

0.42インチ

自由曲面導光板技術を採用した「BT-200」

「BT-200」は、上記「BT-100」の光学系の多くの課題について、自由曲面を多用することによって解決を図りました。自由曲面で光路内の光を集光させてレンズの中心部をメインに使うことにより、プロジェクションレンズを小型化し、光路長を短くすることができました。これにより、顔のラインにフィットする光学レイアウトが可能となり、デザイン性、装着性が大きく向上しました。

自由曲面は、プロジェクションレンズと導光板の3箇所とで計4箇所採用しましたが、性能向上に非常に有効である反面、設計においては、膨大なパラメーターをコントロールする必要がありました。そこで、市販の光学設計ソフトに対応できる独自のアルゴリズムを構築し、非常に汎用性の高い自由曲面の設計技術開発も同時に行いました。

グループを横断して導光板成形技術を確立

導光板の設計的なハードルをクリアしても、それをどのように作るかが最大の課題でした。導光板の形状には、内部で透過・反射を繰り返すため非常に高い面精度・平面度が要求されます。導光板の厚みは10mm程度あり、従来の肉厚射出成型の精度では十分な光学性能を確保できません。そこで、材料選定から金型作製・加工、成形まで、社内のプリンター、プロジェクターの精密加工技術を活用し、グループを横断して開発に取り組み、要求精度を満足する低コスト導光板の成形を実現しました。

自由曲面が課題解決に貢献

自由曲面は光学系全体の小型・軽量に大きな役割を果たしましたが、他の課題解決にも貢献しました。「BT-100」と同等の画角を確保しながらも、HTPSパネル『ULTIMICON』を0.52インチから0.42インチサイズへと小型のものが使用できるようになったのです。さらに、同じ解像度でパネルサイズを小さくすると画素ピッチが狭くなるため透過率は低下しますが、高効率なバックライトを採用することにより輝度低下の課題もクリアしました。

導光板薄型化へのハードル

導光板は、薄くしすぎると必要な画角(画面サイズ)を確保できないという課題があります。一方で、導光板を厚くすれば画角を広げる(画面サイズを大きくする)ことは可能ですが、当然サイズも重量も増加してしまいます。

導光板のハーフミラーは自由曲面であり、導光板内を伝搬してくる映像光を目の方向に"取り出す"役割があります。この取り出し部は全反射条件を満たしながら、目に導くため所定の角度で傾斜しています。また、取り出し部の大きさは最大画角が決まれば一意的に決められます。

現状の導光板の厚みは、両眼シースルーとしての必要な画角と重量バランスを試作による検証を重ね決定しました。

両眼特性を満足させる

エプソンのスマートグラス「MOVERIO」の最大の特長は、両眼シースルータイプであるということですが、その両眼特性を満足させるには、両眼の焦点ズレ、輝度/色ズレなどが無いことが重要です。左右のHTPSパネルを画素単位(10マイクロメートル以下)で調整して固定する技術や、左右の画質のアンバランスを測定し補正する回路システムが必要ですが、ここにも長年にわたりプロジェクターで培った技術が応用されています。

圧倒的な映像美を支える『ULTIMICRON』

エプソンのMOVERIOに使われているエプソン独自のHTPS液晶パネル『ULTIMICRON』は、デジタルカメラなどに向けた電子ビューファインダー(EVF)用途としても大手カメラメーカーなどに採用されています。市場で高い評価をいただいている、この超小型・高精細なHTPSの技術をスマートグラスにも応用しているのです。

HTPS液晶パネルULTIMICRON