WristableGPS for Trekの開発思想とは

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Engineers Interview 山で、絶景や自然を安心して楽しむ。そのために、正確な位置情報を実現しました。 登山中の位置や標高、さらに目的地までの時間などが高精度に把握できるWristableGPS for Trek。どんなことをヒントに、何を目標に開発が進められたのか。その現場の様子を、開発を担当したS企画設計部の2人の技術者にインタビューした。 セイコーエプソン株式会社 S企画設計部 部長 牛山 憲一 山村 義宏

「あとどのくらい、がわかればもっと山を楽しめるのではないか」

―開発に取り組むきっかけは何だったのでしょうか。

牛山私たちS企画開発部は、GPSセンサーなどを活用した、スポーツ系の製品を開発する部署です。エプソンにはGPSセンサーのほか脈拍やモーションなど数多くのセンシング技術を持ち、例えばGPSセンサーは携帯電話向けに長年提供をしており、低消費電力で高精度なものを製造できる技術があります。さらにウオッチを作ってきた中で培ってきた、人が身に着けて高機能・高精度、しかも長く使える製品としてまとめ上げる技術やノウハウ、体制があります。このセンシング技術とウオッチの製造技術を融合させて、新たな価値を提供したい、という思いが基本にあります。その中でWristableGPSとしてランナー向けモデルが生まれたわけですが、今回、登山やトレッキングを楽しまれる方にそのフィールドを広げました。

山村会社近くの守屋山という山に登っているとき、年配の方から「頂上まであとどれくらい?」と聞かれたことがありました。僕らは何度も登って知っている山でしたので、あと5分くらいですよとお答えしたのですが、「行けるかなぁ」「僕らは君たちほど速く歩けないからなぁ」と、結局、その方たちは山を下りてしまいました。
本当にあと少しで絶景が見られたのにと、とても残念に思いました。でも初めて登る山は、ルートも周囲の景色も初めてですから何かと不安になりがちです。正しいルートを歩いているのか、ピークまであとどれくらいで何分かかるのかが分からなくて、いつもストレスを抱えながら歩いているのではないかと、その年配の方々を見て感じたんです。上級者であれば、読地図をして自分がいる地点を割り出せるのでしょうけど、すべての人がそういう技術を身に付けているわけではないですから。
そこで、自分の居場所や目的地までの時間が正確に分かるギアを作って、そんなストレスから登山者を解放したい。それが今回のWristableGPS for Trekの原点になっています。

インタビューの様子

WristableGPS for Trekの写真

―5つのセンサーと新開発のCPUのはたらきを教えてください。

山村高精細な精度を実現することが今回の目標でした。精度が高いほど、安全・安心な登山に結びつくと考えています。万一遭難して救助を呼ぶ際も、より正確な位置が通報できればより早く救助できるでしょう。
WristableGPS for Trekでは、GPS、気圧、地磁気、温度、加速度の5つのセンサーと新開発のCPUを搭載しています。これらのセンサーから出力されたデータは、そのまま使うわけではなく、各センサーのデータ同士の関係性をプロセッサーで演算し、さらに求めるべき情報の精度を高めます。それを実現するのが「センサー・フュージョン・テクノロジー」です。複雑な計算を行うため、2コアの16ビットCPUとDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を組み合わせた専用のCPUを新たに開発して搭載しました。目標とする精度や性能を実現するための、エンジンそのものから開発したわけです。

牛山この小さい筐体に、5つもセンサーを載せようとすると互いに干渉してしまうんです。例えば地磁気センサーは磁気の影響を受けるので、磁気を発する部品からできるだけ遠ざけたい。でもそうすると基板が大きくなってしまい、使い勝手が犠牲になってしまいます。

山村気圧センサーはわずかな風が当たってもデータ変動が起こります。影響を受けにくい位置を探したのですが、そうすると今度はGPSセンサーのアンテナと干渉してしまう。そういった問題が、5つのセンサーそれぞれに発生するわけです。

牛山GPSセンサーにしてもそのほかのセンサーにしても、エプソンには技術や細かなノウハウを持つ、職人と呼べる技術者がいます。信号の状態に応じて、どのようにしたら適切なデータが出力できるか。ほかのデータとどう組み合わせたら最適な結果が導き出せるか。小さなボディにどう納めていくか。そういうことを熟知した技術者たちが知恵を出し合って、問題を解決し、目標とする精度や機能を作り上げていったわけです。このギアは単にセンサーを組み合わせて作り上げただけではなく、細かな技術やノウハウがそのベースにあります。ですから最終的に極めて高い精度を作り込むことができたと思います。

インタビューの様子

インタビューの様子

「実際につけて登ってみてあらゆる点から検証を繰り返す」

―実際に山に登って、精度や機能を検証されたそうですね。

山村フィールドテストだけで30回以上は登っています。試作モデルを片腕に2、3個ずつ、両腕に着けて何度も登りました。山だけではなく、広い場所でGPSセンサーの精度を評価したり、より過酷な状況を想定してマラソンを走ったりもしました。マラソンのときは両腕のほか、腰に4つぶら下げて走ったら、見物の子どもたちから笑われてちょっと恥ずかしい思いをしましたね(笑)。
山でのフィールドテストでは、主に標高と気圧のデータを確認しました。三角点や国土地理院の地図を参考に標高を確認しながら、1回の山行で最低でも10回程度チェックしました。また、日本アルプスのような高山でも、登山口は森林、徐々に森林限界を超え、ピークでは空が開けた状態でGPSセンサーの感度が刻々と変わりますので、そういう状況でも正しい計測ができているかどうかも現地で確認しました。
そうやって得たデータを会社に戻ってから実際の標高や位置とデータを照らし合わせ、どんなときに算出結果がずれているか、原因はどこにあったのかを検証してプログラムを修正し、目的通りに機能するかを再び山で確かめるということを繰り返しました。テストで現地の標高とピタリと同じデータが表示されたときなどは、嬉しかったですね。

登山の様子

インタビューの様子

インタビューの様子

牛山フィールドテストでは、筐体や外装のデザインなどもチェックしています。外装もデザインと精度の両立を狙って0.1ミリ単位で修正を繰り返し、現在の形になっています。
例えば、堅牢にするために金属のガードを付け加えたら、それがGPSセンサーのアンテナ感度に影響することがわかり、デザイン変更が必要になりました。
また、ストックを使っているときに本体のボタンを間違って押してしまうことがあったので、ボタン下部をガードするようなデザインに変更し、ボタンロックの機能も付け加えました。
こういうことは、実際に着けて歩いてみないとわからない情報です。すべて、お客様に問題なくお使いいただけるように、との思いを持って開発を進めています。

フィールドテストの様子

「身に着けることで見えなかったものが見えてくる」

―PC・スマートフォンとの連携や、Bluetooth®による
通信機能も搭載しています。

牛山WristableGPS for Trekでは本体のほかに、PCやスマートデバイスで使えるWebアプリ「NeoRun」も開発しています。Bluetooth®SMART通信を使って、スマートフォンなどとデータをやり取りすることで、「NeoRun」で計画を立て、登山結果を詳細に確認するなどの連携サービスを提供します。
こうしたネットワーク機能は、山を楽しむためだけではなく、より安全・安心な登山の環境づくりにも貢献できる可能性をひろげられるかもしれません。今回ヤマレコさんなどの登山コミュニティサイトから山行データをあらかじめ取り込める機能を搭載しましたが、そのデータを登山計画の提出などにも活用できるのではないかと考えています。

―エプソンでは、ウエアラブルの領域に力を入れています。

牛山エプソンではWristableGPS for Trekに搭載された5つのセンサー以外にも、人やモノの動きを測るモーションセンサーや、脈拍を測るセンサーなどを自ら開発しています。ウオッチ開発から脈々と続く「省・小・精」の精神で開発された省電力、小型、高精度のセンサーは、色々な機器に搭載され、新たな体験を生み出しています。
ウエアラブル機器を身に着けることで「見えなかったものが見える」ようになり、その人自身の可能性や行動範囲が広がり、さらにそのデータを活用することで、新しいサービスが生まれたり、より良い環境作りや整備が進む。これこそ、エプソンが磨いてきた技術が役に立てる領域だと思っています。今後も新たな価値をもった製品を市場にお届けできると考えています。

インタビューの様子

―最後にお客様にメッセージをお願いします。

山村WristableGPS for Trekは、何度も山に登って精度や使い勝手を確かめた新しい製品です。私たちのセンサー技術、そしてウオッチ作りのこだわりをここに凝縮しました。位置情報や標高などの精度は、可能な限り作り込みました。また社内でも開発部門から製造部門、販売部門、さらに山好きの社員まで一体となって開発に取り組んできました。
この精度を、次は皆様にぜひ使っていただきたいと思っています。いま自分がどこにいるか分からない、そんな不安やストレスから解放されて、山の絶景に見とれたり、足もとの草花をじっくりと観察したり、そんなふうに山にいることを安心して思いきり楽しんでいただきたい。WristableGPS for Trekは、皆様のそんな山体験を優れた精度でしっかりとサポートします。

(注) Bluetoothのワードマークおよびロゴは、Bluetooth SIG,Inc.が所有する登録商標であり、
セイコーエプソン株式会社はこれらのマークをライセンスに基づいて使用しています。

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