プロセレクション×東京カメラ部 インタビュー

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東京カメラ部10選2013 鈴木達朗さん SC-PX3V/SC-PX5VIIインプレッション

硬派なストリートスナップを撮り続けている鈴木達朗さんは、海外でも評価されオリジナルプリントの販売もおこなっている。これまで販売用プリントはプロラボに発注し、ポートフォリオ用プリントは自身の手でおこなっていたという。こだわりは黒が締まった力強いモノクロ。強い黒の締まりを生む「Epson UltraChrome K3インク」を搭載した「SC-PX3V」「SC-PX5VII」を使い、プロラボ品質のプリントをエプソン販売(株)の プロフェッショナルアートプリンター・小澤貴也さんの指導の下、体験していただいた。

東京カメラ部10選2013 鈴木達朗さんの作品 作品を拡大表示

プリント体験前のインタビュー

───現在、プリントをする頻度とその利用目的を教えて下さい。

自宅には「PX-5V」があり、ポートフォリオ用のプリントは作っています。しかし、展示用のプリントはプロラボにお願いをしています。展示はプリントが命。プリントの質が低いと写真に入り込めず、展示全体が雑な印象になってしまいます。僕のプリントに対する知識と技術ではプロラボ以上のプリントは作れません。現像の追い込みとプリントの追い込みは全く異なると聞いていますし、ワークショップではプロラボに出せと叩き込まれていまして、ポートフォリオ用と展示用とでは棲み分けをしているという状態です。

───つまり、ご自分でプリントした場合とプロラボでプリントした場合とでは、クオリティーの差を感じられているということですか?

黒の締まりが違うと感じます。「PX-5V」はA3ノビまでの対応ですから、アウトプットサイズという物理的な問題もあります。展示は可能な限り大きなサイズにしたいので。今日も自分でやったプリントを持ってきていますが、プリントごとに少し色のばらつきを感じます。

───データの仕上げはどのようにおこなっていますか?

レタッチは「Silver Efex Pro」を使用し、エプソンのプリント専用ソフト「E-Photo」で出力しています。紙は黒が締まるためバライタしか使いません。

──今日はどのようなプリントを作りたいですか?

とにかく黒を締めたいです。コントラストが高く、ザラッとした感じ。ガッと迫力のあるようなモノクロでしょうか。今の段階では、まだ展示用はプロラボで、という考えは変わりませんが、ポートフォリオ用のプリントもプロの方々に見ていただくわけですから、可能な限り良い紙を使い、最高のクオリティーにしたいと思っています。

プリント実践 鈴木達朗×小澤貴也 (エプソン販売)

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1 「モノクロ写真」設定の使用

小澤 お持ちいただいたプリントを拝見し、恐らくプリンタードライバーのカラー設定をカラーモードでプリントされているように感じました。「PX-5V」をお使いなら、K3インク搭載プリンター独自の「モノクロ写真」設定をおすすめします。

鈴木 カラー設定は特に設定していませんでした。「モノクロ写真」の設定があることも正直知りませんでした。使うと何か利点はあるのですか?

小澤 「PX-5V」も今回体験していただく「SC-PX5VII」も、プリント専用のソフト「Epson Print Layout」のカラー設定で「モノクロ写真」を選ぶことにより、カラーインクの使用を最小限にします。グラデーションを作るためにカラーインクを多く使うと、ハイライトがマゼンタに転んだり、シャドウにグリーンがのってたりしますが、「モノクロ写真」設定では3色の黒インクを優先的に使い、よりトーンの美しいモノクロプリントを作ります。「E-Photo」のデフォルト設定のままだと、どこか色がのったモノクロになってしまうんです。

鈴木 どうりでモノクロしかプリントしていないのに、カラーインクの消耗が速いと思っていたんです(笑)。カラー設定を「モノクロ写真」に設定するだけで、プリントの色のばらつきはなくなるわけですね。

小澤 劇的に変化すると思います。

東京カメラ部10選2013 鈴木達朗さん
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Epson Print Layoutでモノクロ写真の表現を広げよう

2 「マニュアル色補正」での微調整

鈴木 すでに「Silver Efex Pro」で追い込んだデータをプリントを見ながらさらに追い込むにはどうしたらいいのでしょうか。

小澤 プリント専用のソフト「Epson Print Layout」で微調整をおこなうことができます。レタッチ後の画像データを読み込んでさまざまな編集がおこなえます。「モノクロ色調」で冷黒調や温黒調などを設定できるほか、暗室作業でいうと印画紙の号数にあたる「調子」、ハイライトとシャドウの明るさ調整、「最高濃度」では写真の最大濃度の調整もおこなえます。
それでは、半光沢の「写真用紙<絹目調>」でプリントしてみましょう。データそのままとカラーサークルを青と緑の方向に振ったものの2種をプリントしてみます。

鈴木 たしかに、この設定を知っているのと知らないとでは大きく違うな、というプリントになっています。

小澤 RCペーパーでもこのクオリティーですから、バライタ紙でプリントをすればもっと良いものになると思います。ハーネミューレ社の「フォトラグ バライタ」を使いプリントしてみましょう。この紙は厚さが約0.4mmあるので、フロントから給紙します。

鈴木 格段に色のりがいいですね。

小澤 RCペーパーと比べると黄色みのある紙ですが、バライタは色のりが良くこってりとしたモノクロになります。用紙選びやプリントの調整は正解のある世界ではないので、自分で説明ができるプリントを作ればいいのだと思います。

印刷する様子
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3 粒状とテクスチャーを活かしたプリント

鈴木 もっとグッとくるようなプリントにするにはどうしたらいいでしょう。これだと、女性の顔がかなり滑らかで、単純にキレイな写真と感じてしまうのです。

小澤 データには粒状をのせていますか?

鈴木 いえ、デジタルでわざとノイズをのせるのは嫌いなんです。フィルムだと自然にノイズは入るからよいのですが。

小澤 ノイズではなく粒状です。粒状は個人的に追加していいと考えています。デジタルは細部まで見えすぎてしまうため、人の眼には不自然に感じられることがあります。それを抑えるために粒状を追加するわけです。「Silver Efex Pro」の粒状は、デジタルでは最も美しいと思います。それがどうしてもお嫌いでしたら、高感度で撮影し、高感度ノイズを活かすという手段もあります。

鈴木 この写真はISO3200で撮影をしています。もっと高感度にすればノイズは目立ってくると思いますが、それも作為的と感じてしまうんです。

小澤 いまAdobe®Photoshop®で粒状をのせてみましたので、「フォトラグ バライタ」のA2サイズでプリントしてみましょう。

鈴木 粒状を追加した方がカッコイイ写真になっていますね。何より、A2サイズは迫力があります。展示にはA2以上のサイズはやはり欲しいところです。

小澤 たしかに、作為的なもので好き嫌いはあると思います。ただプリントとしてより良いものにしたいと考えたとき、抵抗を感じるか、表現に必要なものとして考えるか、だと思います。粒状を追加するのではなく、テクスチャーのあるよう紙を使用するのもひとつの方法です。テクスチャーは粒状の代わりになります。例えば、この「Velvet Fine Art Paper」。マット系でテクスチャーもあります。

鈴木 バライタへのこだわりはありますが、マットもすごく合っています。黒も想像以上に締まっています。バライタの方が黒の締まりは上に見えますが、とても好印象です。

東京カメラ部10選 鈴木達朗 と エプソン 小澤貴也
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4 紙ごとのプリセットの作成

小澤 「写真用紙<絹目調>」、「フォトラグ バライタ」、「Velvet Fine Art Paper」を同時に見ていくと、それぞれに特徴があることが一目瞭然です。鈴木さんの場合、スナップで相当数の写真をお撮りになりますので、先ほどの「マニュアル色補正」を使いカラーサークルから色調を選びそれをプリセットし、いつでも同じ色調のプリント出力ができるようにするといいと思います。

鈴木 RCペーパーや「Velvet Fine Art Paper」は、「フォトラグ バライタ」と比べると黒の締まりが弱いので「最高濃度」を上げるというのはいいかもしれないですね。

小澤 「白地にかぶり効果を与える」をオンにすると、ハイライト部にもインクをのせるので、展示などでハイライトの反射だけが違う、というようなことも回避できます。

鈴木 いかにプリントのことを知らなかったのか、ということを痛感しました。今日の解説を基に設定を正しくすれば、もっと良いプリントが作れそうです。ただ、バライタにこだわってきたのは間違いじゃなくてホッとしています。

小澤 鈴木さんのデータは完成度が高く、「Epson Print Layout」の微調整だけで十分。わずかな追い込みをしていき、それをプリセットに登録しておけばいいんです。「Velvet Fine Art Paper」は黒の締まりは弱いものの、質感と黒の重みには優れます。紙によって必ずトレードオフはありますから。デジタルは何でもできてしまうので、選択肢を狭めていくという作業が最も大変です。だからこそ、用紙ごとにプリセットを作っておき、迷うことなく作業をすることをおすすめします。「PX-5V」から「SC-PX5VII」と「SC-PX3V」になり、より黒の締まりが優れたインクに改良されています。それら最新のプロセレクションでさらにハイクオリティーなプリントを目指していただきたいです。

鈴木 想像していた以上のプリントクオリティーでした。ポートフォリオを作るのはもちろん、プロラボに依頼をすることになっても、質のいい色校を付けた方がいいですから、もっとプリントの勉強をしていきたいと思います。

(注):Adobe、Photoshopは、Adobe Systems Incorporatedの登録商標または商標です。

鈴木達朗さんのプロフィール写真
鈴木達朗さん|東京カメラ部10選2013

ストリート写真を撮っています。
2016年の主な受賞歴:LensCulture Street Photography Awards Finalist、ND Awards 2016 Street Category 1st Place、Steidl Book Award Japan Winner、ほか
Instagram: tatsuo_suzuki_001