エプソンプロセレクション

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開発者が語るプロセレクション・テクノロジー、その想い。

プロのカメラマンからハイアマチュアのユーザーまで、幅広いユーザー層を持つプロセレクションシリーズ。新機種 SC-PX5VIIの開発には、ユーザーの想いに応えたいという現場の強い意志があった。開発を指揮した、セイコーエプソン 商業プリンター事業部の大川泰輔に、SC-PX5VIIが誇るテクノロジーと、その開発への想いを聞いた。

画質を向上させるために黒濃度を上げる、という考え方を理解してもらうのに苦労しました。

セイコーエプソン株式会社 商業プリンター事業部
商業プリンター企画設計部 主任 大川泰輔

画質を向上させるために黒濃度を上げる、という考え方を理解してもらうのに苦労しました。セイコーエプソン株式会社 商業プリンター事業部 商業プリンター企画設計部 主任 大川泰輔

プロセレクションシリーズの開発テーマとは何ですか?

大川
お客様の理想の作品を現実のものにしていく、というのが一番大きなテーマです。それは、色の表現力を向上させるというだけでなく、あらゆる紙への対応力を広げることや、より使いやすい道具にする、ということです。ユーザーが使いたい用紙で、思い描いたとおりのトーンを出せることを目標に取り組みました。

SC-PX5VIIの一番の特長は黒濃度の向上だと思いますが、そこに注力した理由は?

大川
きっかけは、現場での「気づき」でした。実際にプロの写真家さんやハイアマチュアの皆さんのプリント作業の現場に行って、どのような紙を使用して、それぞれの紙でどのようなレタッチをされているか、ドライバーでどんな設定がされているかを見せていただく機会がありました。その時の皆さんの作業の内容を分析すると、黒の再現性を変えるとより使いやすいものにできるのではないか、と思いあたったんですね。それで、画質向上として黒の再現力を高めていくという方向を決めました。
前機種のPX-5Vが非常にご好評をいただいており、アンケートでも「黒が不満だ」という声は特にあがっていませんでした。そのため「これ以上の黒濃度がいるのか?」という意見もあり、社内を説得するのにもなかなか苦労しました。ただ、我々の開発メンバーは、必要性をきちんと説明すれば理解してくれ、そしてそれを実現できる能力がありますので、納得してもらったあとは、安心して任せられました。実際、完成した画質は私が想像していた以上の黒の締まりが出ていて、初めてプリントを見たときには本当に興奮しましたね。

インクが変わったのに伴って、LUT(注1)も新しくしたのですか?

大川
インクの特性が一色でも変わったら、LUTはすべてつくり直します。今回、黒が濃くなったことで「カラーも今までよりきれいに見える」「立体感が増した」と言われるのには、LUTの更新も大きく関わっています。LUTはLCCSというシステムである程度のところまで論理的に割り出してつくることができます。しかし最終的には、人間が実際にプリントを目で見て判断します。機械が算出したベストが必ずしも本当にベストとは限らないんです。LCCSで184京通りの組み合わせから選び出されているので、ここまで算出できるならもう人の手は不要、と誤解されがちなのですが、そうはいかない。
(注1) LUT:ルックアップテーブル。ねらった色を出すために、どのインクをどのくらい使うかという配分のこと

それは、どういうことでしょう?

大川
プロセレクションプリンターは芸術品をつくる道具ですから、最後は機械ではなく、やはり人間の感性が大事なんです。理論的には正しい色づくりをしたプリントでも、実際に見てみると「ここが少し赤い」など、違和感を感じる部分や気持ちのいい再現ができていない部分が、どうしても出てきます。プロセレクションの開発では、論理的に正しくても職人として見てプロセレクションの品質に合わないものは、やり直すことにしています。テストプリントもカラーチャートばかりを見ているのではなく、実際の写真で「気持ちよい色」であるかを確認することも大事にしています。
数値では表せないようなところまでこだわって色をチューニングする、そこが職人の技なんです。

インクそのものの改良については、奥山さんに詳しくうかがいましたが、微細なインクを吐出する技術にも、エプソン独自の技術がたくさん詰まっていますね。

大川
「マイクロピエゾヘッド」による「マルチサイズドットテクノロジー」ですね。簡単に言えば、いろいろな波形の電圧をプリントヘッドに伝えることで、一つのノズルから3つの大きさのインクを吐出できる技術です。黒が3濃度あるK3インクですと、3つの濃度で3サイズのドットを吐出します。ですから、まったくインクを打たないところも含め、1つのインク吐出で最大10階調をつくれるわけです。インクの数を増やさずとも、技術力で多階調を充分に実現しています。

マイクロピエゾヘッド概念図

(注)画像はイメージです。

MSDT(マルチ・サイズ・ドット・テクノロジー)
インクの大きさを1つのヘッドで3種類に打ち分けられる「ピエゾヘッド」によって、同じ色でも最大10階調を生み出すことができる

もてるものすべてをここに結実させたと思っています。写真表現の可能性を広げるお手伝いができればうれしいです。

「芸術品をつくる」という視点は、用紙の開発にも現れていますよね。

大川
2000年に顔料大判プリンターを発売したその頃、美術品としてプリントをつくるという気運が高まってきていました。この新しいプリンターならファインアートプリントの世界を広げることができるのではないかと、2000年頃から「ベルベットファインアートペーパー」の開発に着手しました。ファインアートの世界では伝統的に画材紙が主に使われてきましたので、私たちも表面にテクスチャーのある紙をつくることにしたのです。
また、ファインアートのための紙には耐久性も必要ですので、インクと紙を組み合わせて加速試験を行っています。劣化の主な原因となる光とオゾンにプリントをさらして、早回しで劣化させる試験です。特殊なボックスに入れて、数ヶ月かけて、数十年分の劣化の様子を観察しています。エプソン純正紙であれば、アルバム保存で200年、飾るなどして光や空気にさらした場合は60年、という試験結果を得ています。

インクジェット用紙は今、いろいろなものが発売されていますが、プリンターメーカーとしては対応が大変ではないですか?

大川
たくさんの用紙メーカーさんに自由に紙を作っていただいて、ユーザーの皆さんも自由に好きな用紙を使える方がいい。それも使いやすさの一つです。そのためにプリンターは、紙の表面が多少異なっても一定のプリント品質が得られるように開発しています。インクの色材が表面にとどまりやすくなるように改良したのもその一例ですし、さまざまな種類の紙でも給紙・排紙がスムーズに正しく行えるようにするのも、紙の自由を確保したいからです。

紙を送る機構の改良とは、どういうものですか?

大川
紙を送る部分のゴムの材質やモーターの速度をコンマ何ミリや、ものによってはμmの単位で制御しています。また同じ紙でも、温度や湿度でがらりと特性が変わりますので、温度や湿度を変えてのテストも行います。それから前機種のPX-5V以降は、「紙が直角でないことを検出する機能をオフにする」こともできるようにしました。紙の端が直線ではない耳付きの和紙などへの対応です。本来は紙が直角でない場合、エラーを知らせて給紙しない設定になっているのですが、それをオフにして、変則的な紙でもプリントできるようにしたわけです。

Velvet Fine Art Paper

Velvet Fine Art Paper
しっとりとしたファインアート用紙のなかでも、質感と彩度を両立させた最高峰の用紙。ハイコントラストなモノクロ、彩度の高い作品に。

SC-PX5VIIは、カメラを問わず、紙を問わず、展示環境を問わず、ハイクオリティーを実現するプリンターだということが、よくわかりました。

大川
きっとまだまだ、やるべきことはあるのだと思います。でも、今の時点で私たちが持てるものすべてをここに結実させました。そういう自負はあります。幅広い選択肢に対応できるプリンターを提供できれば、ユーザーが思い描いた世界をどんどん現実のものにしていけると考えています。そうやって写真表現の可能性を広げるお手伝いができれば、私たちもうれしいです。

最後に伺いたいのですが、そうした地道な努力を支えるモチベーションはなんですか?

大川
お客様の声です。良いことも悪いことも、皆さんのお声をリアルイベント等を通じてお聞かせいただきたいです。プロ・アマチュア問わず、写真家さん方から「プロセレクションプリンターでなければ作品づくりができない」という声をいただきますが、やはりそういった使ってよかったという声をいただくと、「じゃあもっといい物を作って、それを使っていただきたい」と思います。ときには厳しいご意見もいただきますが、それも全部開発のモチベーションになります。ですからSC-PX5VIIについても、ユーザーの皆さんとコミュニケーションを密に取って、時流の変化にいち早く対応していくように心がけたいと思っています。

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SC-PX5VIIスペック
Epson UltraChrome K3インク/8色顔料インク/
L判~A3ノビ/解像度5760dpi×1440dpi

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