開発者が語る MOVERIO Proの可能性

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「現場の行動を変え、ブレイクスルーを起こす」

MOVERIO Proは、現場で作業を行う人達がハンズフリーで使え、安全に作業の効率を高め、業務の効率化に貢献できる、エプソン初の業務支援用両眼シースルータイプのスマートヘッドセットとして登場した。新しい分野を開拓する製品の企画開発を率いたセイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部 HMD事業推進部の津田敦也 に、社内の最先端技術を集約したMOVERIO Proの持つ可能性を聞いた。

セイコーエプソン株式会社 ビジュアルプロダクツ事業部 HMD事業推進部 部長 津田 敦也

「業務支援への活用はBT-100の開発当初から企画していた。モニターを見ながら行う作業や支援に貢献。」

-MOVERIO Proは、様々な現場で活用できる業務支援デバイスとして登場しました。開発された経緯を教えてください。

津田最初のMOVERIOであるBT-100が登場したのは2011年11月ですが、企画段階からセイコーエプソンの社内では 、業務用途でMOVERIOが導入されると何が改善できるのかを検討していました。
BT-100の発表後は非常に多様な業種業界の方々からお問い合わせを受け、2年以上にわたって多くの現場を訪ね、検証を重ねてきました。
また、私たちは業務用のスマートグラスが活用される現場として、モニターを確認しながら作業を行う業務を想定しました。映像や情報をモニターに映してその情報を元に現場で作業することや、カメラで撮影した映像を見て確認しながら物を操作する現場がとてもたくさんあります。
地道に数百という事例を集め、実際にそのような現場で作業されている方々の話をお聞きし、実証実験を続けてきました。それらの成果を結実させたのが、MOVERIO Pro BT-2000です。いろいろな業種業態の業務用として十分なスペックを持っており、多くの企業や組織で積極的に活用いただけると自負しています。

-MOVERIO Proが作業を行う現場で活用しやすいのは、どのような点が優れているからでしょうか。

津田エプソンのMOVERIO Proは、現実の視界に映像や情報を重ねて見せる両眼シースルータイプを採用しています。
いわゆる業務用スマートグラス(スマートヘッドセット)と呼ばれているものには片眼タイプもありますが、両眼であることは重要なポイントです。通常、人間は左右両方の目を使って画像を見ています。そこに片方の目だけで、別の画像を見ようとすると、そこに意識が集中し、周囲が見えなくなります。その点、両眼タイプであれば、左右の目に同じ画像が映し出されるので、違和感なく映像と周囲の状況を同時に確認できます。特に業務用途では、周囲の安全にも気を配らないといけないため、両眼で同じ情報を取得できるほうが望ましいのです。
MOVERIO Proは、左右の高輝度ディスプレイで映像を表示します。さらにまわりの明るさを認識して自動調整する照度センサーを持たせ、シースルータイプでありながら、高い視認性を確保しています。
左右それぞれに小型プロジェクターがついていますが、2つのプロジェクターから投影される映像をずれることなく目の前に映し出すことは技術的に非常に難しいのです。それを実現できていることは、MOVERIO Proの優れている点の1つです。

-装着方法が独自のヘッドセット型になっています。これはどういうメリットがあるのでしょうか。

津田ヘッドセット型にしたのは、メガネ型は軽量とは言え鼻で支える構造ですから、8時間の業務中、ずっと装着していると重さを感じること、作業は下を向いて行うことが多く不安定になりやすいことを考慮し、鼻で支えるのは望ましくないと考えたからです。
ディスプレイ部分が跳ね上げられる構造なのは、ディスプレイを視界から簡単に外せるというだけではなく、映像が見える位置を上下に微調整できるようにするためというのもあります。正面に位置させれば、自分が見ている物に重なるように映像を見ることができ、少し上にずらせば上目使いの時だけ映像が見えるという使い方ができます。人の目は上下の動きは自然にストレスなくできるので、手元の作業と映像による情報取得を適切な形で、安全にできるように設計しています。

-カメラの解像度が500万画素と、従来から比べて大幅に上がり、二眼のステレオカメラを搭載しています。このスペックになった理由は何でしょうか。

津田様々な業種業界の方々からのご意見をいただき、現場の作業者の手元を遠隔で確認するのに必要な解像度として500万画素に決定しました。例えば、セイコーエプソンは各種プリンターを販売していますが、プリンターの印字ミスが確認できるレベルであれば一般的な作業に必要な情報を撮影できると判断しました。これ以上のものにすることもできますが、スペースやバッテリー寿命などを考慮しました。
また、2つのカメラを搭載するステレオカメラであるのは距離を測定するためです。例えばAR(拡張現実:Augmented Reality)で活用される場合に距離を認識させる必要があります。今後、二眼カメラを活用するアプリ開発に期待しています。

「最先端のセンシング技術を活用して、いろいろな業種業態でブレイクスルーのきっかけにして欲しい。」

-高い精度で位置情報が取得できますが、これはどのような技術を使っているのでしょうか。

津田MOVERIO ProはIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)を搭載しています。IMUは人の動きを検知するもので、3軸の角度(または角速度)と加速度が検出できるセンサーです。
専門的な話になりますが、エプソンのIMUは他社製のものとは異なり、磁場によるノイズの影響を受けないクォーツを応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)になっています。
したがって、他社製のものに比べて微小な揺れを把握でき、装着者の姿勢や縦横の細かい動作や向きが検知可能です。
また、IMUはスマートフォンにつけてポケットに入れたりするとその性能が発揮できません。MOVERIO ProではIMUがヘッドセット内にあり、頭部に固定されます。人は頭部を無意識に水平に保つため、身体のなかで最も安定しています。そこにIMUがあることで、正確な情報が取得できることも大きな特長です。

-スマートヘッドセットにIMUが加わることで、どんなことが実現できるのでしょうか。

津田MOVERIO Proの映像による情報提供や2つのカメラによる映像記録とIMUによる姿勢や向きなどの情報取得の組合せは、大きな可能性を持っていると考えています。
これまで難しかった屋内での動作軌跡の把握や行動検知ができるので、例えば広い工場や倉庫で機器や物の位置を自律的にナビゲーションしたり、作業者が長時間動かない、倒れたといった異常を発見することにも応用できます。
また、作業者の行動記録が詳細に取得できることで、カイゼン活動や業務効率向上をより精緻に実施するための基盤づくりができるのではないかと考えています。例えば、製造ラインの配置検討などは、配置そのものは専用ソフトウェアで行えますが、実施した後の確認作業は、人の実際の動きをストップウォッチで計測しているなどという話も聞きます。MOVERIO Proを使えば、こうした人の動きをはかる場合の手間を減らしながら精度を高められます。また、製造過程のミスを減らすために工程ごとに記録を残し、問題があればすぐに記録映像で確認するといった品質管理にも応用できるでしょう。
カイゼン活動はやれることはやりつくしているという状況があるので、MOVERIO Proが次のカイゼンにつながるブレイクスルーになればいいと考えています。

IMUで計測した位置情報イメージ作業員の軌跡を細かく計測できるため業務効率向上につなげるログ情報を取ることができる。

さらには特定の作業に対する熟練者の動きと新人の動きを、頭部の動きや移動距離、スピードで比較し習熟度の確認を行うことも可能になります。また、2つのカメラによって熟練者の行動を記録し技術の継承をサポートすることも可能だと思います。

-セイコーエプソンの社内ではどのように活用されているのでしょうか。

津田私たちセイコーエプソンも社内で活用テストを実施しており、例えば同じ製造装置を使っている離れた工場の間で、トラブルが発生した時の修理ノウハウをMOVERIO Proを使って遠隔共有を検討しています。
また、大判プリンターの故障対応に活用できると考え、現在テストしています。お客様から故障というご連絡をいただいて、サービス担当者が出張して確認してみると実は故障ではないというケースがあるのですが、MOVERIO Proがあれば、お客様に設定変更などの作業をわかりやすくお伝えしながら、迅速にサポートできると思っています。

こうした取り組みは、それぞれの企業の現場のアイデアで実現するものですから、どこまでアイデアを出せるのかということが大事になります。私たちもあらゆる可能性を考えながら、新たな活用法を見いだし、業務の効率化につなげたいと考えています。

BT-100にIMUを搭載した試作機。実験を何度も行い精度を上げていった。

BT-2000に搭載されたエプソン独自技術である高精度のIMUで、作業員の姿勢や動きを検知し測定。さらに、頭部の向きや動きを検知する「ヘッドトラッキング」でより正確なデータの取得が可能になり、データに基づいた業務効率化のヒントが得られる。

-多種多様な業務があり、現場がありますが、ニーズの把握やアプリ開発はどのようになるのでしょうか。

津田現在、業界単位でニーズを調査しています。製造、フィールドサービス、運輸などを始めとして活用できる領域を幅広く把握するように努めています。
可能性が広い分、応用領域に合わせたアプリ開発をセイコーエプソン、エプソン販売で引き受けることは難しいため、アプリを開発されるパートナー会社様、大手企業グループの情報システム会社様などに、開発支援のための情報やAPIの提供を行う形になります。

-今後、MOVERIO Proはどのような方向に向けて、進化していくのでしょうか。

津田社内にはMOVERIO Proに搭載したIMUを始めとして、ランナー向けの高機能GPS Sports Monitor「WristableGPS」や、脈拍計測機能付きの活動量計「PULSENSE」など、多くの先進的な製品があり、これらにはインプットを担う高精度のセンサーが搭載されています。
MOVERIO Proは両眼シースルーによる映像表示というアウトプットと、IMUという高精度のインプットを組み合わせることで、これまでにない新しい領域を開拓し、ブレイクスルーを起こそうとしています。
今後は、社内の高度なセンサーをインプットデバイスとして搭載し、ビジュアルプロダクツ事業部が持つ映像技術をアウトプットデバイスとして組み合わせることで、エプソンの技術力の源泉である「省・小・精」を活かしたこれまでにないまったく新しい製品を様々な業界業種に、かつ、全世界に向けて提供できるようになるのではないでしょうか。それらの製品は、これから訪れるIoT(Internet of Things)の世界で、きっと見たこともないブレイクスルーを起こし、仕事や生活を大きく変えることになると考えています。

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