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展覧会情報

展覧会連動企画レポート

Tomoki IMAI artist talk 2012年2月、今井智己写真展「Mapping TAIPEI」の開催にあわせトークショーが催されました。その模様をお伝えします。
トークゲスト: 今井智己(写真家)
進行: 本尾久子(キュレーター)

-今回の展覧会の作品は台湾での撮り下ろしによるものですが、この作品制作にあたって、今井智己さんはデジタルのプロセスを初体験されました。カメラはシグマのデジタル一眼レフ「SD1」を使い、プリントはエプサイトのプライベートラボにてインクジェットプリンターで出力しています。
 初めて訪れる場所、初めて使う道具。どのように展覧会はつくられていったのでしょうか。

本尾:まず、今井さんが写真を志すきっかけからお伺いしたいのですが。

今井:大学のころに映像をやりたいと思い、そのころ、写真も始めたんですね。でも、映像は集団行動じゃないですか、それよりも一人でできる写真のほうが自分に合っているなと思って。

本尾:特に尊敬している写真家さんはいらっしゃいますか?

今井:高橋恭司さんですね。高橋さんの本をよく見ていて、自分も8×10や4×5といった大判の写真をやりたいと思いました。でもいきなり大きなカメラは買えないので、最初は35ミリを買い、お金ができたら6×7を買って、次に4×5を買って、というふうに。

本尾:大判でお撮りになる理由とは何ですか?

今井:一番好きなカメラですし、三脚を立ててじっくり撮るというのが、自分に合っていると思います。

本尾:今回はデジタル一眼レフカメラ「SD1」をシグマさんにお借りして、1月の半ばに台北に撮影に行っていただきましたが、どんな印象でしたか?

今井:台北にはもともと興味があったんです。同じアジアの都市ですから当然かもしれませんが、ちょっと東京に似ているところがある。すごく東京っぽいというか、自分にとって見慣れている感じがする街です。
 これまでも自分が撮った写真を人に見せたときに、「これどこですか?」とよく場所を聞かれるんですけど、見る人はどこからその場所を読み取っているのか、“写真と場所”っておもしろいなと思っていました。だから、台北っぽい写真ではなく、台北なのか東京なのかわからないような写真を撮ってみたいと思いました。それと、台北・上海・ソウルなどの都市の写真をシャッフルしてみたいと考えていて、その第一弾として台北はおもしろいと思ったんです。

本尾:私は今回の写真を拝見して、その街にいるような気分に自然になっていったのが不思議でした。シンパシーが感じられるというか。撮影はどんなふうにしたのですか?

今井:4日間という短い時間の中でどう撮影しようかと悩んで、知らない人を尾行してみようと思い立ったんです。知らない人について行くと、こちらの意図しない場所に連れて行ってくれるので。あちこち連れ回されて、本当に台北の人たちが通っている道を通り、写真を撮りました。尾行しているので人物は後ろ向きが多くなります。それらの写真にあわせてほかの写真も撮りました。どこでもない・なんでもない瞬間を撮りました。光がきれいな瞬間というのもあります。

本尾:デジタルカメラで光を取り込むことや、プリントで表すことについて、RAW現像からプリントに至るプロセスで、フォトグラファーの戸澤裕司さんからたくさんアドバイスをいただきましたね。

今井:そうですね。色や光の出し方について、経験豊富な戸澤さんに相談しました。暗部をうまく出すにはコツが必要なんですね。ネガのように、つぶれているようだけれど少し見える、というくらいの感じにしたくて。
 SD1の色って、ネガっぽいというか若干渋い感じになるんですが、それが自分にフィットしました。

本尾:今後はどのようにしようとお考えですか?

今井:基本的にフィルムでの撮影は続けていきます。ですが、デジタルって意外とおもしろかったんですよ。“写真の手離れがいい”といいますか、思い入れをのせなくてもいい、ちょっと他人事みたいな写真が撮れるのがおもしろい。ゆっくりしたペースで撮る大判とは全然違う撮り方ですよね。ポロッと撮れちゃった、というような写真を大きく伸ばせたり、自由度が広くて解放された感じがありました。もう少し自分なりに取り込んでいけたら、これまでとはまったく異なる作品ができるんじゃないかと思います。

本尾:この作品は今回で完結ではなく、どんどん続けて、増やしていってはどうでしょうか?

今井:台北だけでなく「Mapping SEOUL」とか、いろいろやってみたらおもしろいでしょうね。「尾行シリーズ」「尾行写真家」とか(笑)。

-イベントの最後には、会場からの質問に今井さんが答えるシーンも。

会場:今回は縦位置の写真が多いように思いますが?

今井:横位置は広く見えて視線が流れてしまいます。どこに焦点や気持ちがあるのかがわからない。それがいい場合もあるんですけど、今回は誰かを追っている感じを出したいので、視線が中心に集まる縦位置を多く使っています。

会場:最初に描いていたイメージと実際に現場で感じたイメージとの間にギャップがあった場合、テーマが変わってくることもあるのでしょうか?

今井:今回についてはもともと、予想外のことを意識して撮影していたので、困ることもありませんでした。でも、“ここは撮れると思っていたけれど撮れなかった”という事態は日常茶飯事です。そういう場合は、軌道修正して新たな対象に気持ちを持っていったりします。ちょっと余談ですけど、4×5での撮影ってそういうことばかりなんですね。予想していたものは撮れなかったけど、全然違う方向でおもしろい世界が撮れてしまったり。当初のイメージとの間を行ったり来たりしながら進むという感じで、それはそれですごくおもしろいんです。

-作家の生の声が聞ける貴重な機会に、ほかにもたくさんの質問が寄せられました。
このシリーズが次なる展開につながることを期待しつつ、トークショーは拍手で締めくくられました。