回数を重ねる度に増える応募作品
インクジェットプリントによる写真作品のコンテスト、エプソンフォトグランプリ。全国から多くの力作、秀作が一同に集まり、そのグランプリを決定する。今回3年目を迎えるフォトグランプリ2008は、前回の応募数を上回る、総数16,898作品。名実ともにデジタルフォトの頂点を決めるにふさわしいコンテストに成長を遂げた。
2009年1月某日、新年の幕開けにコンテストの審査会は開催された。会場となったのは東京・新宿にあるエプソン販売の会議室であった。今回審査に臨んだのは、写真家 田沼武能氏と、水中写真を中心に作家活動を展開している写真家 中村征夫氏の2名。中村氏はこれまでエプソンカラーイメージングコンテスト2005などでファミリースナップアワードの審査を担当。今回のエプソンフォトグランプリでの審査は初となった。
作品の内容と正面から向き合う審査
審査は一次審査、二次審査を経て、最終審査で各賞を決定するという流れで進行した。一次審査は、両審査員の座る机の前に作品が一点ずつ置かれ、審査されてゆく。「毎回審査する度に思うことではあるんだけど、今年は特に力作が揃ってるね。」(田沼氏)「思ったよりもバリエーションに富んだ作品が多いですね。」(中村氏)。審査会場は、写真を見て思わず笑ったり驚いたりする声が聞こえる和やかな雰囲気で進行していった。
二次審査になると、先程までとは様相が一新。会場いっぱいに作品が並べられ、最終審査に残る作品が選考されてゆく。この時になると、審査員の目つきが一変し、会場内は張り詰めた空気になっていた。「組写真の応募でも、ちゃんと組んでいるものもあれば、ただ選ばずに数だけ増やしてる作品もあるね。それでは組んでるとはいえない」(中村氏)。作品と真正面から向かい合う中で、作者を激励するようなコメントも飛び出していた。プリントの技術だけではなく、作品のテーマ、表現のねらいが問われるハイレベルな審査は、作品が選ばれてゆくにしたがって白熱を極めていった。
賞の数が少なく感じるほど充実した内容
二次審査を通過した作品は各部門ともわずか60作品弱だった。ここから最終審査である。両氏の間で真剣な議論が繰り広げられ、上位の賞より作品が選ばれていった。最終的にグランプリに選ばれたのは、ネイチャー部門では波を題材に静と動を表現した小原功嗣さんの「波躍」。ヒューマンライフ部門は、結婚式のワンシーンから人間の普遍的な幸せを捉えた麻川尚良さんの「花婿ルンルン」。エントリー部門では、子供と写真を愛する姿勢が滲み出た渡部朱美さん「渡部兄弟の夏2008」。どれも最優秀作品にふさわしい、バラエティーの富んだ作品だった。賞が決まった会議室は再び和やかな雰囲気になってゆく。午前中から始まった審査会も、この頃にはすっかり日が落ち、外は暗くなっていた。
審査を終えた両氏は「これだけの内容の物を一度に見る機会はめったにありません。」(中村氏)「どの作品も拮抗してますね。賞の数が少ないと感じたのは初めてですよ。一体このコンテストはどこまですごくなるんでしょうね。」(田沼氏)と審査を振り返る。その目は早くも次の作品との出会いに胸を膨らませているようであった。








田沼 武能
たくさんの作品を拝見して思ったことは、デジタルの作品づくりが年々うまくなってきているなということです。撮影、プリントといった技術的な面の差は、もうほとんどないんじゃないでしょうか?それだけに、今回は作品が何を伝えているか、表現内容に重点をおき審査にあたりました。
ネイチャー部門で気がついたことは、いわゆる風景写真が減ってきたということです。風景写真で個性を出すのは、これまでたくさんの人に撮られてきているだけに案外難しいんです。テーマ作りから考えていかないとなかなかうまくいきません。もっと分り易く言うと、自分は何を表現するのかを見据えて、作品を撮っている人が増えたといえるでしょう。そうした結果が今回の充実した応募作品につながっているのだと思いました。
中村 征夫
今回のエプソンフォトグランプリの応募作品はクオリティの高い作品が実に多かったです。高レベルで作品が切磋琢磨している感じでした。レベルが高いというのは、出力プリントの状態が美しいというだけではなく、自分が何を撮りたかったのか、何に感動したのかといったメッセージが明確に伝わるということ。デジタルプリントではプリントの質そのものも問われがちになりますが、このコンテストでは作品に込められた作者たちの情熱がひしひしと感じることができて有意義でした。
エントリー部門に関しては、見ていると思わずこちらも微笑んでしまうような、ストレートに表現されているものを選ぶようにしました。写真をはじめてその魅力を実感しはじめた人が、これを機に写真の魅力をもっと味わってもらえれば・・・そういう期待を込めて選考に臨んだ結果が、受賞作品につながったと思っています。