田沼武能
水中の写真を4点でまとめた作品ですが、一目見て相当なベテランがつくった作品だろうと感じました。一枚一枚の完成度が非常に高いです。それぞれはまったく異なったシチュエーションで、異なった被写体を撮っており、色彩のバラエティーに富んでいます。おそらく構成の段階で相当な数の写真の中から絞り込んだ4枚でしょう。撮影テクニックから仕上げまで、申し分ない作品です。
三好和義
4枚に絞った力量が素晴らしいなと思いました。一枚ずつ見ても、被写体によってライティングまで変化させている気の配りようもいいです。水中でライティングを工夫するのは難しいことですが、ハイレベルなことをよくこなしているなと関心いたしました。また、鱗の質感などの表現も非常にリアルです。さらにこの作品では写真をスクエア(正方形)にトリミングをしていますが、ここにもセンスの良さを感じました。
-ネイチャー部門グランプリ受賞おめでとうございます。受賞作『光景』についてですが、そもそも大角さんは水中写真をどれくらい撮られているのですか?
ありがとうございます。水中写真歴は10年です。ちょうど節目の年に受賞ができてうれしく思っています。
写真は山岳会に入り、カメラを手にしたのが始まりです。その後15年ほど、山岳写真やスナップ写真を撮っていました。しかし、仕事の都合上、趣味としての写真を続けるのが難しくなり、少し離れるようにしていました。そして、写真の代わりにできた趣味が熱帯魚やスキューバダイビングでした。はじめの十数年、海は潜って散歩を楽しむだけで、写真は撮りませんでした。撮りはじめたのはちょうど10年前、ダイビングショップで知り合った知人にハウジングという水中写真を撮るための機材を譲ってもらったのがきっかけです。以前の趣味に再び呼び戻されたような形になりました。
-ただでさえ露出の難しいポジフィルムで撮影され、さらにライティングも工夫されていますよね?
ライティングは感覚的でした。結構長く撮っているせいか「こういう被写体はこう当てればこうなる」というのをなんとなく把握しているのかもしれませんが、おおよそレンズの長さと狙っている被写体で決定します。一度決めたら微調整などはあまりせず、特に広角レンズで撮るときは、ライトセットを一定にしていました。フィルム1本に1作品を撮ることを目指していましたが、結構うまくいかないことが多かったです。
私が潜っていた場所は地元静岡県の大瀬崎というところで、沖縄などと比べると少し光量的に暗いものですから、影を消すためのストロボワークは難しかったです(笑)。近くで撮影すると影が強く出てしまいましたからね。
-撮影は35mmですが作品では画面を正方形にしていますね?
35mmをそのままプリントすると、縦横比が2:3になりますよね?そうするとどうしても図鑑のような生体を見せる写真になってしまったのです。もちろんそれはそれでいいのですが、この作品では「自分がここを見たんだ」とか「見せたいんだ」という意思を表現したかったものですから、いわゆる生体写真ではなく、それよりもワンテンポずれているような、本来ならボツショットに近い、少し曖昧なシーンを選びました。
-仕上げについてですが
撮影はポジフィルムでしたので、現像後フィルムスキャンを行い、プリント出力で仕上げました。
デジタル上での処理はシンプルで、色はあくまで原版の色に忠実に仕上げるように心がけました。エプソン基準色(sRGB)に設定し、ストレートにプリントしただけです。強いて言うならテストサンプルを打ち出して、色のバランスを確認したことくらいでしょうか?サンプル紙を見て、少し赤が強かったので抑えるようにしました。これはプリンターの設定画面で調整できる簡単な作業です。
また、PhotoShopでの処理は、トリミングと水中撮影でどうしても写り込む塵などを消す作業くらいでした。
-撮影は現在も続いているのですか?
いえ。体調のこともあって、ここ一年くらいは潜れていません。ダイビングは何かあってしまうと他の人に大きな迷惑をかけてしまいますからね。
最近は陸の方で撮る写真に移っています。コンパクトデジタルカメラを持って街を徘徊しながらスナップを撮るスタイルです。スナップ写真は年々撮影が難しい方向になってきていますが、いつかヒューマンライフ部門にエントリーできるようにまとめてみたいと考えています。
作品を出すときには欠かせないテストサンプル。何枚か出して色のバランスを微調整する。