田沼武能
足を失った人々を支援するボランティアの活動を捉えたドキュメンタリー作品ですが、印象的なのは暗さを感じないというところです。こういう被写体は深刻になりがちですが、この作者はそうした状況をさらりと見せています。そこに作者のうまさを感じました。地雷で足がなくなってしまったということをいつまでも悲しんでいるわけにはいかない、その人達が前向きに生きていく未来に焦点を当てたところにこの作品の素晴らしさがあると思います。
三好和義
現実としてはかなり悲惨なことではあるんですが、それを周辺の淡い水色の壁だったり、その場所を照らす明るい日差しだったりを組み合わせて、今まで見てきていたドキュメンタリーとは少し違うなと思わされる作品です。被写体も必ずしも、微笑むわけではないのですが、その表情、仕草についつい惹かれます。きっと作者と被写体との人間関係がここには出ているのでしょう。見ていて非常に新鮮でした。
-この度はヒューマンライフ部門のグランプリ受賞おめでとうございます。「エプソンフォトグランプリ2010」へはどういった経緯で応募されたのですか?
僕は現在通信社で写真編集の仕事をしながら自分の写真を撮っています。それ以前はアメリカの大学で写真を勉強しまして、小さな新聞社で7~8年報道カメラマンとして働いていました。日本で活動するようになってまだ5年ほどです。
コンテストへの応募は日本でははじめての挑戦でした。きっかけは田沼武能先生。日本のフォトジャーナリズムの本などを読んでいる時に名前を知り、この人に一度写真を見て貰いたいと思って応募しました。
−それがいきなりグランプリというのはすごいですね。
ありがとうございます。ドキュメンタリーの組写真でこのような賞をとれるとは正直思ってもいませんでした。受賞の電話を受けた時は、興奮して大声で叫んでしまいました。あんなに興奮したことは今までありませんでした(笑)。
−今回の作品はアフガニスタンですか?
そうです。ここは日本に戻ってきてからずっと行きたいと思っていた場所のひとつでした。それは生きている間に戦争が起きている場所を自分の目で見ておきたいと思っていたからです。今回取材したのは、そうした紛争地域であるアフガンで義足を提供する活動をしているNPO法人の活動です。このNPO法人は、日本全国から壊れたり不要になった義足を集めて、それをボランティアの人が修理し、アフガンの足のない人に提供するということを年に2−3回行っています。僕は2010年の11月に同行して撮らせていただきました。
この時は首都カブールに滞在したのですが、本当に明るくていい街でした。「この世の地獄のような場所」という先入観を持って行ったのですが、実際はまったくそういった雰囲気はありません。そこに住む人も特別なものは何ひとつなく、気さくな人が多かったです。もちろん完全に安全ということはありません。滞在中も近くで自爆テロがあったりしました。ですが、そういうのを除けば生き生きとした活気のある街ですし、カメラを持って歩けば、「俺を撮ってくれ!」と声をかけてきてくれました。この時非常に残念だったのは、プリンターを持って行かなかったことです。撮らせて貰った後に「写真はいつくれるんだ?」って聞かれると、答えに詰まってしまいました。
−そうした街の雰囲気も作品にだいぶ反映されているんでしょうね。
そうですね。先入観のまま作品をつくれば、いかにも凄まじい場所で生きているというような作品にもなるんでしょうけど・・・でも実際はそういう雰囲気ではありませんでしたし、そこで先入観を押しつけるのはおかしいですからね。ですからあるがまま、自然の明るい光で自分が感じたことだけを正面から写真にしていきました。その点を今回評価していただけたということは本当にうれしいです。自信にもなりますし、次の作品へのモチベーションもあがります。これを機にまた次の撮影を開始したいと思います。