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2009年コンテスト結果

2009年受賞作品審査風景動画審査員コメント受賞者インタビュー

審査員コメント

スピーディな時代変化がうみおとす特有の感覚は、感性というアンテナを通して、従来の概念を超越する新しい表現をみちびきだしています。本コンテストは、デジタルの特性を活かしながら、新たな表現を生み出し、多様な可能性をみちびきだすための支援を、16年に亘り続けてきました。デジタルプリントのグローバルな祭典にふさわしく、国内外より、2,358名という多くの方々から応募をいただきました。
一次審査を通過した350作品が一堂に会する中、厳正な最終審査が行われました。審査会場では予想や理解の範疇を超える、思いがけない発想があふれていました。独自のイメージが淡々と蓄積された作品、意外性に満ちたプリントメディアの選択、プレゼンテーション手法に代表されるクリエイティブの冒険が、不思議なほど気負いなく、随所で提示されていたのです。日常に溶け込んだデジタル表現が、心理的アイディアを成立させる要因となり、個々のアウトプットを活性させている現状を端的に浮かび上がらせた、大変興味深いコンテストとなりました。

審査総評

(敬称略・順不同)

審査風景 佐藤 ここに出品されてくる作品は、意図がわからないものが多いんだけれど、魅力的な作品が多い。そのわからないところの魅力に、ある意味で支えられているようなところがあると思います。
デザイナーという立場からも見ると、ここでは、デザインが見えてしまうときに、なんとなく弱々しく感じられる。なぜなんだろうなということを、今考えさせられています。デザイン性をできるだけ見せずに、コンテンツが非常に力強く表に出ているもののほうが、作品としては強いのだということをあらためて認識したんです。プレゼンテーションの上で、演出をし過ぎて逆効果になってしまっているものがかなり見受けられました。客観的に、自分の作品がどうしたら力強く伝わるのか。非常に難しいことですが、ぜひ、よく考えてほしいと思います。
表現には、ありとあらゆる手法がありますから、もっともっと多様であるべきだろうなと思います。自由な方向からアプローチできるのも、このコンテストのとてもユニークなところなので、そういう作品にここでもっと出会いたいですね。

藤原 10年くらい審査をずっとやっていて思うのですが、純正紙を使う人がどんどん少なくなっていますね。自分独自のメディアを見つけることが、作品作りの一つのスタートラインになっているところがある。これも、インクジェットプリントの利点の一つということですが。少しうがった見方をすれば、若い人たちの中にどこにも属さない、属したくないという意識が芽生えていて、それが純正紙を使わないという形で現れてきているのかも知れません。属することから外れようとする作品作りと企業名を介したコンテストというものとの乖離が妙なかたちで見えたのが今年だと思うのですね。エプソンという企業を冠する枠組から、突き抜けてしまったことで、いい意味で、一人前のコンテストになったのかなという感じがします。

勝井 今年から、写真部門とグラフィック部門が一緒になりました。吾々が予想した以上に、映像による多面的な表象が、バラエティ豊かに行われていたと思います。精査された面白さが、いろいろな形でメディアとして浮上させるような試みが見られました。それらは、まだ、発想の段階で形になっていないけれど、確実に進化している。この点は、まさにエプソンのコンテストの特色であり、非常に強いメッセージとして世の中に発信できる と思います。ここでそういう潮流を創り出しているのだという感じがします。
とくに若い世代の表現に、歴史的背景や風土特有の感覚や郷愁を自分の中で、融合させようとする作品が見受けられました。さらに、コピーや絵を加えることで、複合的な表現が可能になっていく。個人の軌跡や功績を作品にこめていくことが、メジャーに対するアンチテーゼとなり、デジタルメディアの可能性への幅広い模索と結びついています。
たとえば、これまでに撮ったデジタル写真を全部取り出し、箱に入れ、絵や文字を載せて一つのパッケージとしてまとめた作品などは、時間の記憶の集積のようなもので、従来の個人史とは異なり、生きてきた証であり生きる糧になってきているというような思いを表現している人が多かったですよね。連続的な行為そのものが創作行為と直結している。その意味でも新しいメディアを生み出しつつある痕跡を、非常に強く感じました。

佐内 今回は写真とグラフィックが一緒になったので、写真だけを見ようというのではなくて。いつも選ぶときに思うのは、撮影する以外のことが出ているとあまりどうかなって。
なぜ撮影するのか。単純なことだと思うのですけど。撮影して出力しただけのものだけで、いいんじゃないかと。それだけでいいと思う。

森山 全体的に今年とくに感じたことは、表現性のありようや、モノを創るこだわりへのアプローチの仕方が、かなり過剰になってきているな、ということです。どんなジャンルであっても、モノを創ろうとする人にはどうあれ過剰なところがないと成り立たないわけで、言いかえればどこか病の部分が必要で、今回そうした傾向が総じて感じられたので面白かった。つまり、創る、あるいは作ることへの欲望のパワーが、見るぼくの方に伝わってきました。
写真に関していえば、応募者それぞれが、けっこう相当な質と量を伴っていて、表現の根拠も見えてきて、あなどれなかった。

審査風景 大竹 今回は真空状態みたいな、静寂感みたいなものを感じた。しらけているとかテンションが落ちているというのでもないし、審査会場の天井が高かったせいもあるのかもしれないけど、なんかこう静かな感じ。
クオリティが落ちたということじゃなくて、なんか一巡したというか。たとえば去年だと、(グランプリの櫻井さんのように)編み込み状にしたりだとか、いろいろな表現方法を考え出そうとしていたのですが、今年はさらっとやっている。
印象に残っているのが、俺なんかが子供のころに使った、アルバムの写真の「コーナー」で、角にとめてそれで貼るみたいな。そのあとの時代というのは、アルバムのビニールをべろっとめくって被せるようになって、あれだと何年か経つと写真の裏が取れちゃう。たくさんどんどん撮って出力したものを、写真の「コーナー」を使って貼るというのが何冊かあったが、とても面白かった。デジタルを活かして、いろいろな紙に出力したり、色調を調節したり、そういうことがもう古い感じというか。貼るのでもなく、工夫を凝らして出力するのでもなく、オリジナリティを追求するのでもなく、普通にそこにあるといった印象を受けた。

藤原 だんだん作品離れしてきているというか、非常にスリリングな展開になってきたね。君たちどういうふうに生きているの、どういうふうに社会、世界と折り合い付けているの、そういう問いかけに反応してくるエネルギーがすごい。どうも作品ではなくて生き方を見せようとしている。こういうダイレクトなものが作品なのか何か別ものであるのか。非常に奇妙な感じがして、昔のアンデパンダン展を彷彿とさせた。当時は、反体制というのが一つの軸としてあったわけだけど、現代では、声高には主張しない。しかし、もう少し沈静したところで動きがあるというそういう何かがある。


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