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2008年コンテスト結果

2008年受賞作品審査風景動画審査員コメント受賞者インタビュー Winners' comments

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審査を終えて。受賞の朗報を手にした方々にお集りいただき、審査員・代表である藤原新也氏を聴き手に、作品づくりにまつわるお話をうかがいました。

(大竹伸朗賞のHeymi Leeさん・Young Eun Sohnさん[韓国在住]、勝井三雄賞の齊藤彩さんには後日インタビューを行いました)


櫻井裕子  [グランプリ グラフィック部門]

─ 上のほうは取れちゃったんですか。

剥がれてしまって。運んでいる最中に全部取れてしまっていて、直しました。

今は軽くホチキスで止めています。最初は両面テープで全部貼付けた状態だったのですが。編んでいる時からもう既に全体的にたわみ始めました。まっすぐ編んでいるつもりでも、編んでいるうちにどんどんよれてしまうんです。 

─ こういう作品を作ろうと思ったもともとの動機を話してください。

母に対しての思いがすごくあったというのが、最初の発端です。今それを実感をもって話せるかどうかわからないのですが、人と重なり合いたいというか、その人のことを完全に理解して一体化してしまいたいというような願望が自分の中にあります。実際にそうなったらすごく気持ちが悪いかもしれないけれども。でもやはりそんなことはできなくて、ずっと敗れてきた。それが一番の動機になっています。

重ねて編み合わせるというのは、後から気がついたのですけれども、ちょっと気持ち悪い行為かもしれません。編み合わせることで無理やり一体にする、でもやっぱり一体化はできない、そういった感じを表現したいということがありました。自分の悩んできたことの根本的な部分を表現したいと思ったのです。

─ それで最終的に自分がなくなっちゃって、ものすごくストレスが溜まり爆発して、渋谷センター街で座るとか、どこかへ行っちゃうとか、拒食症になっちゃうとか。最近は男性も母と密着している人が多くて、この前の秋葉原の事件の人もそうでした。そういう意味では今の空気みたいなものがどこか吸収されている。しかし今いろいろ聞くまでは、そういう感じは一切わからなかった。編みこむ人体というか、ある意味でデジタル時代の1と0だけで世界ができあがっていくような感覚、人体がドットピクセルに解体していくような風景……そんな風に見えて、逆の意味で今の時代の空気がすごく出ていると感じていたのです。

ピクセルのような感じにしたいとか、できあがったものを見てそういう感じだなという印象は、自分でも持っていました。そのあたりを現代的な感覚と受け止めてくださって本当にありがとうございます。

─ 女性固有の「編む」という行為の中に、自分を忘れていく幸福感のようなものがありますね。かなりスケールの大きい作品ですが、ある意味女性の生理みたいなものを感じます。

私は小さいころから編物がすごく好きなんです。すごく強くあったものが解放されていくという感覚。といってもこの場合の「解放」は明るい意味ではなく、忘れていくという方向に近いかもしれないと思います。

─ はみだして垂れ下がっているのは、意識的ですか?

いつも残ってしまうんです。いろいろなバージョンがあって、影が残ったり、実体として写っている像が残ったり。残るのは縦糸の部分であったり横糸の部分であったり、いろいろありました。ただ、どうしてもきれいに仕上がらないので、それが一つのジレンマです。

─ 織物の場合には縦糸と横糸のあいだになんらかの主従関係ができる。

受賞者は語る 写真そういった主従関係については、今年に入って考えるようになりました。この作品では縦糸が私です、自分の写真。横糸は、大学にみえるヌードモデルさんで、双方を編み合わせました。本当は親しい友人などと編み合わせたかったのですが。なぜかヌードモデルさんの像がはっきり見えています。自分を隠したかったのかもしれません。この作品では、はみ出ているほうが縦糸です。私の体よりもヌードモデルさんの物体としての体のほうが小さかったから、彼女の輪郭で編みが終わっている。ある部分までくると、ここからは絶対に編まないという、たとえば、空気の部分は編まないようにしているので、その結果、小さいほうの人の体が残ってしまったのだと思います。写真は、ほぼ等身大です。

どちらを縦糸にするべきかというのは解決できないテーマです。主従関係で言えば縦糸が主だと私は思っていますので。自分を縦糸にするというのは普通すぎるのかもしれないし、主を他者にしたほうが逆におもしろいかもしれません。

─ インドに「ヨガ」という言葉があるでしょう。ヨガには縦糸という意味もある。一番の基本は、天と地で、横糸は地平線、いわゆる人間の生きている世界です。縦糸横糸の関係性を作りながら意識していったというのはなかなか面白い話です。

全体にちょっと歪んでいますが、これは敢えて曲がらせたのですか?

扇子みたいに開いている形のことですか。初めは四角形で、周りを完全にテープで留めてしまっている状態をさらにアクリルの板で挟んでいたのですが、あとで、せっかく編んだのになぜまた平らなものに閉じ込めるのか、とか、不定形なほうが面白いのに、という意見がありました。そう言われてみれば、囚われていたような気がしました。それで好きな形にしようと思ったのです。なぜか扇子型になってしまうのですが。いつも、好きなように、その時の気分で形が作られていくのです。無意識です。

ほんとうは、編み込んだ作品をそのままダンボールにくるんで送りたかったのですが、きっと到着したときに、絶対に見ていただける状態になっていないだろうと思って白いパネルを発注したのです。ほんとうは、パネルはなくて、編み込みのまま、壁に直接括りつけたいと思っていました。

─ 審査員の間で、編み込みという手法が過去発表されていたかどうかということが話題になりました。こういう作風を見た記憶のある者がいなかったので、後日リサーチをして、最終的に世の中にほとんど出ていないということがわかった。本人の話を聞きたかったので、櫻井君にも電話しました。率直に、有名作家ではないが風景を編み込んだ作品を見たことはあると言っていましたね。

現物を見たことはなく写真だけですが。ただ、確実に自信を持って言えるのは、これは自分で考えたということです。


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