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2007年審査結果

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審査をふりかえって

(敬称略・順不同)

審査風景佐藤卓:ここ数年このコンテストでは、総合力とかアートディレクション力とか、写真部門においてすら本の装丁や塊感が上手であるとか、いわゆるバランスの優れたものが、評価されてきたと思うんですけど、今は、エネルギーが炸裂するようなものが求められている気がします。写真でも絵でも、総合的なディレクションをいっさい考えないでとにかくやってみるという方向もあるように思えるんです。こういう場では普段できないことをやれるのですから、こういうやり方があったのかと思わせる(驚かせてくれる)ものを期待しているわけだし新種に出会いたいわけです。今年はグランプリが該当なしということが象徴的ですが、ある種価値観の転換期という局面に来ているのかもしれないなという気がしました。

大竹伸朗:もうちょっと無茶苦茶で破壊力のある作品を期待したんだけど、グラフィック部門と写真部門の差が感じられないというか、本形式に集中していてアートブックコンテストみたいに感じられました。プレゼンがうまい一方で、壊す勢いを求めていたのに逆の方向でおとなしくまとまってきているという印象が残ったんですよね、全体的に。

審査風景佐内正史:出す人の目的がどこにあるのかな? みんなどうしたいんだろうな? って、考えちゃいました。アイディアとかがあれば、そちらに向かって行けるけど、アイディアもあまり伝わってこないし。今年はそういうかんじかもしれない。夏も暑かったし(笑)。自分でもそういうかんじはちょっとあって生まれて初めて調子悪いかな、なんか面白いことないなっていう気がした、今は全然ハッピーなんだけど。そういう時代の気分みたいなものが全部含まれてるのかも。面白くなかったかんじ、そんなかんじですね。

どういう態度でやっているのかが見たい、それが写真だと思うし。何に向かって、何に納得してるのか。それを知りたいですね。

審査風景森山大道:写真部門もグラフィック部門も、作品それぞれ、皆いい水準までいっているのですが、審査する僕を感電させるような突出した作品に出会えませんでした。センスも良く、それを支える技術もうまいのですが、全体的に等質な感性が流れていて、異質なインパクトを発光する作品が見当たらなかったということです。コンテストに応募する意味やその方法を、もう一度考え直す時期にきているような気がします。

藤原新也:僕はここ半年くらい日本で地方を旅しながら写真を撮っているのだけど、2、3年前に比べると歴然と撮るものがすくなくなってきている。街が整理整頓されてしまったというか呼吸感がないというか。写真というのは対象がなきゃ撮れないわけだし現実に向かい合う媒体だから、その意味で、写真がどんどんどんどん追いつめられていると感じています。現実から揺らぎが失われていくと撮ったものにも揺らぎがなくなる、その一方で、プリンタとかカメラなど道具の解像度が日ごとによくなっていく。解像度が無茶苦茶よくても何もない世界が相手では、ほとんど何も生み出せないんだよね。それを補うために、モノクロの小さい作品にするとか解像度を落として制作するとか、ないものをあるように見せていくテクニックやアイディアが求められているとしたら、非常にさみしいことだし、そこに写真自体の行き詰まり感がある。ここを今後どう克服していくかという、ものすごく難しい問題が提起されている。絵の場合は何もないところから創れるから、その点では、絵のほうがある意味楽でもある。グラフィック部門の掘さん(準グランプリ)の作品みたいな写真はありえないでしょう。現実にないから。今後は揺らぎが消え対象が喪失する方に向かっている世界をどう表現していくかということが、今からの若い人にとってものすごく大きな課題になると思う。これを打ち破る答えがどこにあるのかは、僕にもわからない。

若い人がこういうコンテストでバーンと壁を破ってくれるといいなといつも思っているんだけどね。今回壁は破られなかったな。

審査風景勝井三雄:一次審査から応募作品の全貌を見てきて、小さくまとまった作品が非常に多かったと感じました。写真部門の準グランプリの作品も、狙いはすごくいいけれどもとても小さい。要するに手の中で勝負している様子が強く感じられて、物理的にも大きく迫力をそなえており、かつ、肉体を感じさせたり、あるいは匂いや音など五感で感応し共有できたりといったことが、たいへん希薄だったと思います。小さくてめくるスタイルの究極に向かっているような作品が数多くて、自分のマインドを素直に表出したり積極的にコミュニケートする、見せるというよりも、自己完結することを考えて構築していこうとする流れが一層強まってきている。


選考の過程では意見が分かれたし、ずいぶん迷いました。グランプリが該当者なしというところが非常に象徴的現象でしたね。

それからもう一つ感じたのは、中国、台湾、香港など、周辺諸国の作品のレベルがすごく上がってきていたこと。量質ともに日本を凌駕するようなものが見られた。そういったあたりが今年はとても顕著に出たという感じがしますね。

審査風景 大竹伸朗:グランプリについては、圧倒的な力が必要だと思う。完成度がなくても、「想い」は伝えられると思うんですよ。今回は全体にこじんまりまとまっちゃっていた印象がすごく強いし、なぜこのコンテストに応募するのかをつきつめていくとなんか就職活動みたいな感じがしちゃうんだよね。大人が作ったものなんて台無しにしてやるみたいな、無謀さがほしかったなという気がしました。

佐藤卓:何に問題意識を持っているのか。怒りとか不満とか。問題意識がなくて、何となくやりたいけど何やっていいのかわかりませんという人には無理がありますよね。無理にやっても人の心に届くものはできないと思います。先がわからないことや不透明感に対する不安もエネルギーに変えていくことができる気がするんです。自分と社会を深く問いつめてパワーを掘り起こすことが必要だと思います。

藤原新也:難しい時代をどう生き抜くかというテーマが今とくに若い人に与えられている。例えば地球温暖化というと言葉は優しいけど、どんどん終末に向かっていって最後に地獄を迎えるのは明らかなんだよね。そういう時代を敏感なセンサーでとらえている若者たちは、暗さをどうしのいでいくかということにアップアップしていると思う。それで、神経ブロックをかけて急に明るい世界を表現したり、まともに暗くなっちゃったり、二者択一しかない状況に陥っているというか。こういう時代に心地よさや喜びをどうすれば表現できるかというのはなかなか難しい命題だと思う。若い人だけじゃなくて、誰もが抱えている問題なんだけど。でも、やっぱり希望がないといけないよね。表現を通して希望を生み出すことは今の時代、至難の技だが、芸術というのはそれを乗り越えて闇に明かりを灯す役割を背負っていると思うからね。

審査風景

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