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2006審査結果
審査概況・概要ごあいさつ審査をふりかえって受賞者座談会
 
受賞者座談会 (敬称略)
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聞き手:藤原新也
聞き手:藤原新也
藤原:これは審査のときも話題になったんだけど、谷口くんの作品は、ペインターソフトとかPhotoShopを使ってこういうイメージというか雰囲気を出したのか、それとも自分の手でやっていったのか、それはどっちなの?

谷口:両方ですね。一枚一枚まったく方法が違うんです。撮った写真にレイヤーを重ねて描いたものもあるし、プリントアウトしてから描いてその後またスキャンしたものもある。イメージごとにまったく違います。方法を選ぶ基準は楽しいか楽しくないかです。主観が入りやすいんですよね。ここはちょっと気にいらないとか、ちょっとキレイにしたいとか、そういうところから入っていく。

藤原:写真をいじった作品というのは今まで賞の対象にはなりにくかった。素材をいかようにもできるから、どんどんいじくっているうちに何だかわからなくなるというね、写真をいじるときにどこで止めるか、その止めどころがわかっていない作品が多い。

谷口:それは描きたい物がないからだと思います。本質がちゃんとしていれば、ここで完成の域ということがちゃんとわかりますから。

藤原:谷口くんの場合は相当いじっているんだけど、表現したいイメージが伝わってくる。今までもこういう作品が俎上に上ってきたことは何度もあるんだけど、賞を穫ったのは初めてで、こういう手法の可能性を感じた。もう一つは、表現とは単に作品だけじゃなくて、いかにプレゼンするかという課題を含んでいるということ。いかに作品をアピールしてプレゼンしていくか。そのプレゼンがいい人というのはだいたい中身もいい。中身は悪くてプレゼンがすごくいいとか、プレゼンが悪くて中身がいいとかっていうのは案外少ない。だからいわゆる本づくりの発想も、今みたいな時代にはすごく大事。その意味で谷口くんの提示の仕方はすごくいいんだけど、ちょっとサイズが小さかったかな。

谷口:理想は91×91くらいでやりたかったんですけど、そんなお金がなかったんです(笑)。

藤原:金の問題か(笑)。じゃあこの白い縁取りしようと思ったのはどういう意図で?

谷口:最初は裁ち落としてみたんですけど、目に痛くなってきたんで、余白をつけたほうがいいかなと思って。余白がなくていいものにはつけてないです。

藤原:そういう変化があったほうがいいね、世界がさらに広がる。プレゼンというのはやっぱり表現なんだよね。サイズというのは作品のイメージをまったく変えてしまう。大きさをちゃんと捉えているかどうか、そこをおろそかにするとまずいね。つめてつめて、絶対この大きさということで決めないと。谷口くんの場合はわかってたけどできなかったということだね。  

パクくんは、去年の受賞作が新宿、今回は上野だけど、去年と撮っているスタンスとか意識に変化はある?

パク:あまり変わらないです。

藤原:本当は変わったほうがいいんだな。20代、30代半ばまではどんどん幅を広げたほうがいい。去年撮ったものを否定するくらいの勢いで変化していくという年齢だからね。パクくんの写真は森山さんもほめていて、自然体ですごくいいんだけど、自分の文体を見つけたときが一番危ないんだ。一つの文体を見つけてしまうと、それを踏襲していけば作品がどんどんできてしまって、そこに安住していくという傾向が出てくる。それはそれでいいんだろうけど、僕なんかから見るとちょっと物足りないんだ。去年と今年でこんなに違うものを撮っている、それくらいの大胆な変化を見たい。壊すことで広がっていくからね。今の表現者はある一定の評価を受けるとその一定の色でずーっとつくっていく人が多いけど、思わぬ花がバーっと開くというダイナミックさがほしい。パクくんも、去年と今年の世界との関わり方とか自分の意識とか、写真の撮影方法だとか、本のつくり方だとか、やっぱり20代半ばだから、どんどん変化してほしいね。 次に撮りたいテーマとかはあるの?

パク:具体的なことではなく、見て泣きそうになるという「悲しい」「寂しい」という気持ちをテーマにした写真集をつくりたいなと思っています。スナップを撮るというのは、そこにあるものを撮るわけですが、そこから何かを作りたいんです。それから、ちょっと海外に行ってスナップを撮りたいですね。

藤原:そういうふうにある方法を講じて、それによって変化していくというのもいいよね。自分の心が変化する場合と、器が変化したときに心が変化する場合と両方あるから。例えば着ているものによって変化するとかね、撮るイメージを変化させるということも良いかもしれないね。面白いものを期待します。

藤原:田中さん。これね、(本のリングを指して)ピアスか何かに見えたよ。これもやっぱりプレゼンなんだよね。今日会ってみたら案の定という感じのファッションだ(笑)。リングのついているところとついていないところがあって、普通だったらいいかげんと言われかねないけど、これもプレゼンで、外側のプレゼンの仕方と絵が妙に合っているんだよね。この子はけっこう恐い子かな(笑)。かわいい絵なんだけどけっこう恐い。恐いけどわざとらしくならないっていうのは、どっかに影みたいなそういうものが彼女の気持ちの中にあるからだと思う。そこが微妙なとこ。

田中:最近になってテーマというか、自分が描きたいものが見えてきた感じです。

藤原:実際あなたは恐い人なの?自分としては(笑)。

田中:いや、普通です(笑)。でもやっぱり反抗的なところはありますね。

藤原:ないと単なる偽物になるもんな。こういう神経を20代、30代でももち続けていくわけにいかないから、そこが難しい。ただ、ここまで壊れていると後はやりやすいんじゃないかな(笑)。最初から固まっていると積み重なってしまうけど、今ここにすごくいろんな可能性があって、さて今後どうなるかなという面白さを感じるね。壊さない人が多い中で、君はある意味で壊れているよね。

田中:そうですね(笑)。

藤原:そこに僕は可能性を感じた。デジタル、スキャナとかPhotoShopとかいろんなものを玩具みたいに思うままに使えているというのは世代の特徴だよな。こういうしっちゃかめっちゃかな感じというのは、10代だからできたものなのか。これを20代、30代でもずっと続けられればあなたは本当にすごいよ。どこにも固まらないで。

田中:それは私も考えますね。何年か経ってまたこの絵が描けるかな、とか。

藤原:なんでこういう絵になっちゃうの? こういう危ない絵に。

田中:素が出ているっていうのはあるかなと……。

藤原:自分の生活のひずみだとか痛さとかによってこういう表現ができることにはすごくリアリティがあるんだけど、逆に言えば自分の心の中にひずみをつくってしまうという弱さにもつながる。だからそれを持続するのはすごく大変だ。表現者になったときにはごく普通の人間でありながらリアリティに近づけるという芸をしなきゃならない。一度わかってしまったら後は芸ごとになる。こういう芸をずっとできるかどうか、そこだよな。

グランプリ
西元 哲太郎


準グランプリ
高木 こずえ


優秀賞写真部門
和田 裕也


優秀賞グラフィック部門
田淵 正敏


勝井三雄賞
谷口 浩


森山大道賞

(パク・チェギョン)


藤原新也賞
田中 真理
   
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